世界180ヵ国で放送・配信されているオーストラリア発のアニメ『ブルーイ』をご存じだろうか。好奇心旺盛な犬の女の子・ブルーイを主人公に、家族や友達との何気ない日常を描いた作品で、日本でもNHK Eテレで毎週放送され、Disney+でも配信されている。
そんな『ブルーイ』が、今後日本でもさらに身近な存在になりそうだ。博報堂はこのほど、BBC Studiosと『ブルーイ』の国内ライセンス事業におけるパートナーシップを締結。広告会社である博報堂が、海外アニメの国内ライセンス事業に直接携わるのは珍しい取り組みだ。玩具やアパレルに加え、ライフスタイル商品、食品、ライブイベントなど、幅広いカテゴリーでの展開を進めていく。
なぜ博報堂が『ブルーイ』のライセンス事業に乗り出したのか。世界中で愛される作品の魅力と、日本でどのようにファンを広げていくのかについて、担当者に話を聞いた。
世界中で愛される『ブルーイ』ってどんなアニメ?
『ブルーイ』は、オーストラリア・ブリスベンを舞台に、6歳のブルー・ヒーラー犬の女の子・ブルーイと、妹のビンゴ、パパのバンディット、ママのチリを中心としたブルーイ一家の日常を描くアニメ作品だ。
一見すると、未就学児をメインターゲットにした子ども向けアニメだが、その魅力は子どもだけに向けられたものではない。
今回話を聞いた博報堂の森雄一郎さんは、これまでも未就学児向けアニメの国内展開に携わってきた、いわばこのジャンルのベテラン。そんな森さん自身も『ブルーイ』を初めて見た際、「これは一般的な未就学児向け作品の枠には収まらない」と感じたという。
中でも、ブルーイの両親の描かれ方が印象的だと森さんは話す。

「パパもママも、決して完璧な親として描かれているわけではないんです。子どもたちと同じ目線になって思い切り遊ぶこともあれば、悩んだり、余裕がなかったり、時には子どもから『遊んで』と言われても携帯を触っていたりする。理想の親として参考になる部分はありながらも、彼ら自身も悩んだり、サボったり、夫婦でぶつかったりする。すごく等身大なんですよね」
こうした描写を見て、森さんは『ブルーイ』が子どもだけの作品にとどまらない可能性を感じたという。
「子どもが楽しめるのはもちろんですが、大人が見ても『こういうことってあるよね』と共感できる。親子で同じ作品を見ながら、それぞれ違うところに面白さを見つけられるんです。だからこそ、子どもだけではなく、大人も含めて幅広い世代にファンをつくることができる作品だと思いました」
なぜ世界180ヵ国で視聴される?国や文化を超える「家族の日常」


『ブルーイ』の人気は、数字にも表れている。調査会社ニールセンによると、2025年の米国におけるDisney+での年間視聴時間は452億分を記録。ドラマなどを含む全ストリーミング作品の中で、2024年に続いて2年連続で年間1位となっている。
オーストラリアの一家庭を描いた作品が、なぜ国や文化を超えて支持されているのだろうか。
「舞台はオーストラリアなので、自然や文化など日本と異なる部分もあります。ただ、子どもの成長を喜んだり、親として悩んだり、家族で過ごす時間を大切にしたりする気持ちは、日本でも共通するものだと思うんです。『ブルーイ』は、そうした家族のコミュニケーションのコアにあるものを大切に描いている。それが多くの人に愛されている理由のひとつだと思います」
「生活者発想」をフィロソフィーに、生活者の意識や行動と向き合ってきた博報堂だからこそ、そうした『ブルーイ』の普遍性に大きな可能性を感じているという。
「生活する国や環境が違えば、表面的な行動や価値観には違いがあります。ただ、私たちがさまざまな生活者を見てきた中でも、その奥にある人間の本能的な部分や純粋な思いには、共通するものがあると感じています。『ブルーイ』は、まさにそうした生活者の根底にある感情に訴えかける作品です。だからこそ、日本でも多くの人に共感してもらえる可能性があると考えています」
大人にも見てほしい『ブルーイ』おすすめエピソード
では、『ブルーイ』をまだ見たことがない大人が、その魅力を知るにはどのエピソードから見ればいいのだろうか。森さんにおすすめを聞くと、まず挙げたのが「じてんしゃにのろう」(シーズン1・11話)というエピソードだ。

「このエピソードでは、ブルーイが自転車に乗ることに挑戦するのですが、なかなかうまくいかない。パパのバンディットは答えを教えるのでもなく、ブルーイと一緒に公園で遊ぶほかの子どもたちがそれぞれの課題に挑戦する姿を見守ります。周りの子たちが頑張る姿を見て、ブルーイはまた自転車に乗ることに挑戦すると言うエピソードです。
親としては、子どもが何かできずに苦労していると、つい手を出したり、答えを教えたりしたくなる。でも、あえて何も言わずに見守ることって実はすごく難しいんですよね。僕自身も親なので、そういう部分にはすごく共感しました。
そして、このエピソードが面白いのは、自転車に乗れるようになることをゴールにしていないところです。ブルーイが『もう一回やってみよう』と思った、その心の変化で物語が終わる。何かができるようになったかどうかではなく、挑戦してみようと思えたことや、心が成長したことを大切にしている。『ブルーイ』がどんな作品なのか、大人にもすごくわかりやすいエピソードだと思います」
もうひとつ挙げてくれたのが「キャンプ」(シーズン1・43話)。ブルーイがキャンプ先で言語が異なる子どもと友だちになるエピソードだ。

「ブルーイはキャンプ場で、言語の違う子どもと出会います。言葉は通じなくても、ブルーイとその子は一緒に遊んで少しずつ仲良くなっていく。でも、きちんとお別れを言えないまま離れることになってしまう。その時、ママがブルーイに、人との出会いや一緒に過ごした時間について話すんです。
子どもからすると友達との出会いと別れの物語として楽しめると思います。でも大人が見ると、『自分は大切な人との時間をちゃんと大事にできているかな』と考えさせられる。日常の中でつい忘れてしまうようなことに気づかされるエピソードです。
子どもが見て感じることと、大人が見て感じることが少し違う。それでも親子で同じ物語を一緒に楽しめるところが、『ブルーイ』の面白さだと思います」
なぜ広告会社の博報堂が『ブルーイ』のライセンス事業を?
博報堂はこれまで、広告ビジネスを通じて幅広い企業とのネットワークを築くとともに、「生活者発想」を掲げ、一人ひとりの生活者の気持ちや暮らしに寄り添ってきた。今回のライセンス事業でも、そうした生活者に寄り添う姿勢と広告会社としての知見を生かしながら、国内のさまざまなパートナー企業と『ブルーイ』のブランドを育てていくという。
展開するカテゴリーも、玩具やアパレル、食品、ライブイベントまで幅広い。さらに、子どもだけでなく大人や家族も楽しめる展開を目指す。

「まずは子どもたちに『ブルーイ』を楽しんでもらうことを大切にしながら、大人や家族でも楽しめる商品やイベントなども広げていきたいと思っています。放送や配信だけではなく、親子で一緒に着られる商品など、日々の暮らしの中で家族が一緒に『ブルーイ』を楽しめる機会を増やしていきたいですね」
森さんは最後に、今後への思いをこう話した。
「僕たちをパートナーとして選んでもらった以上、博報堂だからできることをしっかりと出していきたいと思っています。生活者の気持ちをしっかりと汲み取りながら、楽しんでもらえること、喜んでもらえることを大切にして、『ブルーイ』の魅力を日本中に広げるための一翼を担っていきたいですね」
取材・文/DIME編集部 撮影/木村圭司




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