スクウェア·エニックス·ホールディングスの業績回復が鮮明になってきました。
量から質への転換、大量のモバイルゲームのサービス終了、マルチプラットフォーム化など2024年ごろから始めた構造改革が奏功しているように見えます。
そして、スクエニの成長モデルは業績絶好調のカプコンに似てきました。
営業利益率は22%超
スクエニは2026年4月~6月が3割の増収、営業利益は9割近く増加しました。
転機になったのが220億円ものコンテンツ等廃棄損を計上した2024年3月期。これ以降、プロジェクトの見直しや、PlayStationへの依存度が高かった体制を改めてマルチプラットフォーム化を目指すことなどが示されました。
2024年はアナウンスされているものだけで9タイトルものモバイルゲームから撤退しています。「鋼の錬金術師 MOBILE」や「ドラゴンクエスト チャンピオンズ」など、リリースから2年経過しない比較的若いタイトルから手を引きました。
2025年は11年5カ月運営した「スクールガールストライカーズ2」、約10年の「星のドラゴンクエスト」「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS」などの長期タイトルからも撤退しています。
モバイルゲームの相次ぐサービス終了の影響もあり、2期連続の減収でした。2027年3月期は前期比0.1%の増収という横ばいの予想を出しているものの、第1四半期は大幅な増収。通期予想に対する進捗率は26%を超えています。
スクエニで特に注目したいのが本業で稼ぐ力を見る営業利益率の推移。売上のピークだった2022年3月期は16%ですが、2026年3月期は18%まで高まりました。今期第1四半期は22%近くまで上昇しています。
選択と集中·マルチプラットフォーム化がもたらした成果
スクエニのモバイルゲームは、大量の新作を投入する傾向が強いものでした。これにより、マーケティング費用をかけても十分なユーザーを獲得できずに収益性も悪化。その遅れを取り戻すために新たな新作を投入するという悪循環に陥りやすくなります。
量から質へと転換したことで、開発や運営ノウハウを1つのタイトルに集中的に投下することができます。ヒット確率が上がり、長期運営体制を築いて収益性が上がるという好循環を描き始めているのです。
2026年4月リリースの「ドラゴンクエストスマッシュグロウ」は累計500万ダウンロード、3月の「DISSIDIA DUELLUM FINAL FANTASY」は配信後数日で50万ダウンロード突破のアナウンスがなされています。
スクエニのモバイルゲームなどを内包するスマートデバイス·PCブラウザ等事業は、2026年4月~6月の売上高が前年同期間比で36%近く増加しました。
何よりスクエニの変化を物語っているのは主力タイトルの開発·販売をするHDゲーム事業。2026年4月~6月の売上高は前年同期間の約2倍、営業利益が6倍に跳ね上がっているのです。
HD事業は「ファイナルファンタジー」などの主力作の新作販売と、そのヒット動向に業績が大きく左右されていました。また、大型タイトルを発売した年に大きな山を作り、その後谷をつくるという課題も抱えていました。
今期は「冒険家エリオットの千年物語」を発売していますが、これは中型タイトル。業績の安定化に寄与したのは過去資産の活用です。
カプコンはなぜ稼ぐ力が強い会社なのか?
スクエニは2026年に「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」などの複数タイトルのNintendo Switch2版を発売しています。ゲームの販売本数は前年同期間の401万本から738万本へと増えました。マルチプラットフォーム戦略が奏功したと見るべきでしょう。
ポイントはマルチプラットフォーム化の効力が一過性のものに留まらない可能性が高いことです。スクエニには「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」の過去作だけでも数多くの作品群がありますが、それ以外にも「キングダムハーツ」「クロノトリガー」「聖剣伝説」「ロマンシング サ·ガ」「フロントミッション」などの優れたシリーズを大量に抱えています。
様々なプラットフォームに最適化させることにより、セール等で価格を下げ、大量販売につなげることができるのです。特にシリーズの新作発表のタイミングは世間の注目度が高まり、過去作品が売れる傾向が強まります。マルチプラットフォーム化しているタイトルほど売りやすいのです。
このビジネスモデルを上手く活用しているのがカプコン。2017年に発売した「バイオハザード7」は2026年3月期だけでも260万本を売っています。セール等を巧みに活用して1タイトルの長期収益化に成功しているのです。
カプコンの主要IPは基本的にリアルタイム3Dゲームであり、マルチプラットフォーム化しやすく、ゲーム機が進化してもグラフィックの高解像度化やフレームレートの改善で品質を維持しやすいという特徴がありました。これが長期化に耐えうる要因の一つになっています。
一方、「ファイナルファンタジー」などスクエニのシリーズは技術基盤がバラバラなものばかり。それによって過去作品は大幅な作り直しが必要になります。つまり、スクエニの資産活用は高コスト体質なのです。今、その体制を見直す段階に入りました。
この視点を新規開発に持ち込むと、長期的なセールスを見越してプロジェクトを進めると言うことができそう。これはスクエニの大きな変化と見ることができます。
ドラクエ最新作の作り直しは構造改革も影響した?
スクエニはクリエイターなどの作り手と、顧客などの市場を結び付ける力が弱かった可能性があります。2024年5月に新中期経営計画を発表していますが、その中でクリエイターを起点とする「プロダクトアウト」と、顧客を起点とする「マーケットイン」のバランスを取る必要があると明記しました。
一方、カプコンは顧客重視の姿勢を貫いています。スクエニがゲームの作り方そのものを修正しようとしている背景に、プロダクトアウトの視点が強すぎた反省があるでしょう。
それが悪い形で出てしまった印象的な出来事が「ドラゴンクエストXII」の開発体制とコンセプトの見直しの発表。5年を経てまさかの作り直しを宣言したのです。
コンセプトはダークな世界観から明るくワクワクするものへと転換することが明かされました。
フロム·ソフトウェアの「DARK SOULS」や「ELDEN RING」などのヒットを見ると、ダークファンタジーへと傾斜する気持ちはわかります。ゲームはコアファン·大人向けのコンテンツに人気が偏り始めているのです。
しかし、「ドラゴンクエスト」の醍醐味が明るい冒険活劇であることは間違いありません。多くのファンもそれを求めているでしょう。
タイトルを長期視点で販売するという計画を立てた場合、シリーズに芯を通す必要が出てきます。カプコンの人気作もシリーズのコアは貫かれており、それが支持される要因にもなっています。
スクエニが試されているのは、本質的な改革ができるかどうかなのではないでしょうか。
文/不破聡




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