企業における定年延長や継続雇用などを背景に、シニアのパフォーマンスやモチベーションをいかに維持・向上させるかは、人材活用の重要な課題となっている。
パーソル総合研究所はこのほど、ライン管理職(部下を持つ課長相当以上)を退任し、現在も同じ企業で働く50~64歳の「元管理職」男女を対象に、管理職退任の実態や退任後の役割・働き方、職場への適応状況に関する実態調査を実施し、その結果を発表した。
1. 管理職の3人に1人が「想定外」の理由で退任、4人に1人は想定より早く
管理職の35.3%が想定外の理由で退任している。退任理由別にみると、組織改編による退任者は81.0%が想定外と回答。制度に基づく退任は想定できるはずだが、役職定年、定年・再雇用では約15%、任期満了では36%が想定外との回答であり、留任・再任を予想していた人と思われる。
退任の時期は『想定通り』が47.8%である一方、25.1%は想定より早く退任している。60歳での退任を希望・想定する人が4割前後と多数を占めるが、実際には54歳以下での退任が35.9%を占め、50代後半、60歳、61歳以上での退任よりも多い。
なお、退任年齢と退任理由の間に極めて強い関連がある。50代後半での退任は役職定年が59.7%、60歳以上では定年・再雇用が60.6%を占める。一方、55歳未満では組織改編による退任が最も多く、4分の1以上を占める。自己都合による退任も50代前半が13.3%、50歳未満が20.4%と目立つ。
企業による退任告知については、退任の説明(内示)が「説明なし」または「1か月以内」の合計が39.1%を占める。組織改編による退任では「1か月以内」(29.5%)、「説明なし」(26.7%)で計56.2%と、突然の退任が特に多い。
2. 管理職退任後のキャリアは長期化、「元課長」は平均53.9歳で退任
50~64歳の正社員・再雇用者の管理職経験率は43.6%を占め、60代前半では47.3%に達する。60代前半では現管理職が減る一方、元管理職が31.6%と大きな人材層になる。
元管理職の活用はシニア人材活用の重要課題である。元管理職の約7割は元課長相当であり、施策の主対象はミドルマネジメント層である。
最高到達職位は課長相当が67.5%を占める。課長経験者の平均退任年齢は53.9歳で、65歳まで勤務する場合、退任後の就業年数は11.1年におよぶ(管理職としての経験年数も平均11.1年)。部長経験者は57.1歳で退任し退任後7.9年、事業部長・執行役員経験者は57.3歳で7.7年。上位職ほど退任後の期間は短い。
3. 退任後の役割は「プレーヤー」が47.2%で最多、約4人に1人は未経験職種へ
退任後の主たる役割を「関与の仕方」と「貢献の方向」の2軸で4タイプに分類したところ、自ら成果を創出する「プレーヤー」が47.2%と最多。「サポーター」(19.7%)、「コーディネーター」(18.7%)と続き、後進指導・育成を担う「メンター」は13.5%にとどまる。
退任後は経験職種に配置される場合が多いが、全体の26.7%が未経験職種へ異動。サポーターは職種転換率が42.6%と最も高く、メンターが17.2%と最も低い。職種転換では、いずれの役割4タイプも営業・技術から営業系ミドルバック、コーポレートへの異動が多い。特にサポーターはコーポレートへ集中している。
4. 退任後の業務適応は「高適応」が36.1%、「低適応」が34.6%と二極化
元管理職は退任後の役割に対し、「高パフォーマンス×高役割納得」が36.1%、「低パフォーマンス×低役割納得」が34.6%と、高適応群と低適応群にほぼ二分される。一方、現管理職は「高×高」が55.4%、「低×低」が21.8%。元管理職は高適応群が19.3pt少なく、低適応群が12.8pt多い。
5. 管理職時代にプレーヤー業務をどれだけやっていたかは、退任後の業務適応度と関連せず
管理職在任中のプレイング比率別にみると、高適応群は「マネジメント中心」(41.2%)から「プレイング中心」(32.7%)までで、低適応側も含め有意な差はなかった。役割4タイプ別にみても傾向は一貫せず、在任中にプレイングをどの程度担っていたかは、退任後の適応をほとんど左右しない。ただし、サポーターについては、プレイング比率が低いほど高適応となる有意な傾向が見られた。
6. 退任後の仕事内容・役割への「事前理解」が高い人は高適応50.8%、低い人は21.4%
事前理解「高」群は高適応群が50.8%を占めるのに対し、「低」群は21.4%にとどまり、逆に低適応群が52.1%と過半数に達した(「高」群は20.1%)。事前理解度は退任後の適応度と強く関連する。
内容別にみると、特に仕事内容の事前理解が役割納得感に効き、影響度は他項目の2倍以上。部署・勤務地の理解はパフォーマンスに、上司の理解は役割納得感に、それぞれ弱いながら有意な影響がみられる。
退任に向けた事前準備では、「備えとして行っていたことは特にない」が37.2%と最多。さらに「役職退任後については極力考えないようにしていた」も20.9%にのぼり、退任に向き合わないまま迎えた層が少なくない。
準備の内容は「仕事に対する考え方を変えた」(33.9%)、「専門性を広げる努力」(31.9%)など内面の切り替えが上位。一方で退任後のキャリアプラン23.6%や具体的業務の計画22.8%などは低く、意識の変化が具体的な備えに結びついていない。
50代・元管理職の退任に向けた事前準備は、2017年調査比でほぼ全ての準備行動が増加していた。「専門性を広げる努力」(35.2%)、「仕事のやり方見直し」(32.2%)、「キャリアプラン計画」(24.5%)など、いずれも8~12pt上昇。一方で「備えとして行っていたことは特にない」も36.1%と、依然として3人に1人が無準備のまま退任していた。
7.退任後の役割に「希望なし」の人は、半数超が低適応
希望した役割に配置された割合は元管理職全体で55.4%となった一方、3割が希望と異なる役割に就いていた。役割別ではプレーヤーが85.4%と突出して高い一方、メンターは40.9%にとどまる。
希望する役割と実際の役割が一致する層では高適応群が41.9%で、不一致層の31.6%を上回る。「希望なし」層は低適応群が54.2%と過半を占め、不一致層より約20pt多い。役割4タイプ別では、統計的に有意な差がみられたのはプレーヤーのみで、不一致だと高適応群が15.0pt下がり、低適応群は4割近くに達する。他の3タイプでは有意な差はみられない。
8. 役割・目標・評価を明確にするほど高適応、役割期待の明示が高い人では63.7%
役割期待の明示や役割に関する対話の実施有無は、適応度と顕著な関連がみられる。期待役割明示の高群では高適応群が63.7%(対話67.0%)に達する一方、低群では低適応群が56.1%(同52.1%)と半数を超え、高適応群は2割を下回る。退任後の役割をきちんと説明し対話する場があるかどうかが、適応を大きく左右している。
職場での役割期待や承認に関する評価は、比較可能な10項目すべてで元管理職が現管理職を5.0~12.6pt下回った。特に「評価への納得」(34.8%)、「適切なフィードバック」(34.6%)、「仕事への周囲の関心」(37.0%)が低く、退任後は役割説明、評価・対話・承認の機会が不足していた。 ただし現管理職も4~5割台にとどまり、決して高いとは言えない。
なお元管理職では、「元の役職にかかわらず気兼ねなくやり取りできる」58.8%に対し、「他のメンバーと同様に仕事が割りふられる」は45.2%と低い。
現在の役割における目標設定の明確さや評価・フィードバックの納得性は、適応度と顕著な関連がみられる。
目標の明確さ高群では高適応群が67.9%(評価73.0%)に達する一方、低群では低適応群が53.5%(同50.1%)と約半数を占め、高適応群は2割を下回る。退任後も目標を明確に設定し、納得できる評価とフィードバックを返すことが、適応の分かれ目になっている。
調査結果からの提言
日本企業では、役職定年、定年・再雇用、組織改編等を契機として、多くの管理職が一定年齢以降に役職を離れる。しかし、管理職退任後もそのまま同じ企業で就業を継続する期間は長く、元管理職がどのような役割を担い、どのような適応状況にあるかは、企業における中高齢人材活用の重要な論点である。
退任後の役割はプレーヤー、コーディネーター、メンター、サポーターの4タイプに分かれ、その適応状況は高適応群(36.1%)と低適応群(34.6%)に二極化している。適応状況は、退任理由や管理職経験年数などの属性・制度要因では説明できず、役割4タイプ別の適応度の差も統計的に有意ではない。
適応を左右しているのは、(1)退任前の理解と準備、(2)役割の設計と本人希望との一致、(3)経験・スキルの活用度、(4)退任後の職場運営(役割の説明・対話・目標設定・評価・承認)である。特に(4)は、役割期待の明示の有無で高適応群比率が約4倍(63.7%対17.2%)に開くなど最も強い関連を示しながら、企業の施策としては手薄である。
当調査では、元管理職の退任後の適応度向上施策として、「事前・配置・運用」の3層・8提言を示す。
<調査概要>
出典元:パーソル総合研究所
構成/こじへい




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