2018年より副業が解禁されてから、近年は副業や兼業を促進する動きがある。しかし「副業」と一口に言っても多様であり、一概にノウハウや成功法則が定着しているわけではない。
本業を抱えながら進めるため、迷うところもあるのではないだろうか。
またフリーや自営業で活動している人も、複数の仕事を持つ「復業」は決してめずらしくなくなってきた。新しい領域にチャレンジしたい人もいるだろう。
そんな中、特に自分のスキルや趣味を活かせる「講師業」は、副業・復業としても人気を博している。しかし、始め方に不安があるし、物価高騰を背景に、資金繰りが厳しいこともある。
そこで今回は、講師業を副業(復業)として始めるポイントを、専門家や実際の講師から参考になる意見を紹介する。
副業・復業としての「講師業」の失敗しないコツ
大手家電メーカーにフルタイムで勤務しながら「片付けパパ」やパラレルキャリア研究家として活動する大村信夫氏。自らも講師となることもある。また先日は書籍『副業の超基本』を監修するなど、副業に詳しい。
講師業のメリットや苦労する点、成功のポイントを聞いた。
大村信夫氏
国家資格キャリアコンサルタント/整理収納アドバイザー1級会社員をしながら「片付けパパ」として活動するパラレルキャリア(副業・複業)研究家。『今さら聞けない 副業の超基本』(朝日新聞出版)など著書・講演実績多数。
https://omuranobuo.net/
●講師業のメリット
「講師業の最大のメリットは、自分の経験やスキルが直接誰かの役に立ち、感謝されることです。
私自身、片付けやキャリア形成の知見を伝えることで、受講者の方の人生が前向きに変化する瞬間に立ち会えることに大きなやりがいを感じています。
在庫を持たず、自分の身ひとつで、PC1台あれば始められるため、初期費用や運用費用がほとんどかからず低リスクである点は、開業資金が限られている副業・復業として魅力的です」
●講師業で苦労する点
「一番苦労する点は『集客』だと感じます。どんなに良いコンテンツを持っていても、最初は誰も自分のことを知らないため、受講生が集まりません。
また事前の企画や資料作成、リハーサルなど、目に見えない準備に多くの時間がかかります。
会社員として本業がある中で、これらの時間を捻出するには、徹底したタイムマネジメントが求められます。最初は時給換算すると非常に低くなることにも覚悟が必要です」
●講師業を始める際に失敗しないコツ
講師業を始めるに当たって、大村氏はよくある失敗と、それを避けるコツとして次の点を挙げる。
「よくある失敗は『自分の話したいことだけを話してしまう』ケース。講師業は自己満足の発表会ではなく、受講者の課題解決の場です。ニーズを無視したひとりよがりなコンテンツはリピートにつながりません。
まずは『小さく試す(テストマーケティング)』ことが鉄則です。
いきなり会場を借りるのではなく、まずは友人や知人を相手に、無料またはワンコインでミニセミナーを開いてみてください。
そこで率直なフィードバックをもらい、コンテンツをブラッシュアップしていくのをおすすめします。
慣れてきたらスキルシェアサービスなども活用し、プラットフォームの集客力を借りて実績を積みます。自分の提供できる価値が『誰のどんな悩みを解決するのか』を明確に言語化していくことが第一歩です」
資金繰りはどうする?コツを伝授
物価高のご時世において、資金繰りについてはどうすればいいか。大村氏にコツを伝授してもらった。
「仕入れや在庫を持たない一方で、会場のレンタル費や印刷代などの経費は高騰しているため工夫は必要です。
対策として、会場費が不要なオンラインでの講座提供があります。配布するテキスト類はPDFなどのデジタルデータで提供すれば印刷代を抑えられます」
【実体験】フラワー講師の資材手配のワザ
DIYや工芸などの“ものづくり”系の講師は、材料費などの資材費もかかる。資金繰りはどうすべきか。参考例のひとつとして、40年以上の経験を持つフラワー講師、ミズノ・ヒロミ氏が行っている資材手配のワザを紹介する。
ミズノ・ヒロミ氏
18歳から花の世界で活動するフラワーデザイナー、フラワーサロンプロデューサー。草月流師範資格を取得し、これまでに1000人以上のフラワー指導者を育成。東京・神奈川で教室を開催し、海外でも幅広く活動。
https://hana-kago.info/
近年は材料費が高騰しており、生徒用の材料費や完成品の売価も上がってしまう課題に直面していた。その解決策とは?
「主にフラワーアレンジメントの作品を引き立てる装飾素材を探すためにTemu(テム)を利用しています。
例えば、バスケットやパール、貝殻などを作品のアクセントとして活用しています。
花材については専門の仕入れ先から購入する一方、装飾素材についてはECを利用し、作品のイメージに合うものを探しています」
Temuは、現在約90以上の国や地域で展開中のアメリカ発のECプラットフォーム。日本では2023年7月にサービスを開始した。
複数店舗が出店する日本で有名なECモールといえばAmazonや楽天市場だが、あえてTemuを利用している理由とは?
「近年、花材や制作に必要な材料の価格が上がっているため、生徒の皆さんが無理なく作品づくりを続けられるよう、材料の調達方法を工夫する必要があると感じていました。
そこで装飾素材について幅広い選択肢から探してみようと考え、種類豊富なTemuを利用するようになりました。
また手頃な価格のものが多いため、これまで試したことのなかった素材やデザインにも挑戦しやすくなりました。
新しい作品を試作するときにも、さまざまなアイテムを探しながらデザインを考えられるので、創作の幅を広げるきっかけにもなっています」
他にも、必要な用品をTemuで一括調達することで、月々の運営コストを約50%削減したシェアハウス運営事業者の例がある。Temuは個人レベルで事業を営むユーザーに幅広く愛用されているようだ。
●その他の材料費高騰対策
その他の材料費高騰の対策として、どんな工夫をしているのだろうか。
「材料費の高騰に対応するため、花材については東京堂や横浜ディスプレイミュージアムなど、専門の仕入れ先を利用して専門会社ならではの価格で手に入れ、コストパフォーマンスを上げるようにしています。
生徒の皆さんが無理なく参加できる価格で教室やワークショップを続けられるよう工夫しています」
講師業は自分の持ち前のスキルを活かせるなど魅力が多い一方で、集客や資材の手配に直面しやすい。経験者の意見をヒントに、十分な計画を立てた上で一歩を踏み出そう。
取材・文/石原亜香利
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