創業1年以内なら最大250万円。新設の「小規模事業者持続化補助金〈創業型〉」をはじめ、国の創業支援はかつてない規模に膨らんでいる。一方で、もらえるはずのお金に振り回され、資金繰りを悪化させる経営者も後を絶たないという。補助金を本当に「お得」に使う条件とは何か。2000社超の資金繰りを支援してきた経営コンサルタント・高橋健一朗氏と、宮子智子氏に聞いた。
初めての起業なら、まず「持続化補助金」
今は起業の好機なのか。高橋氏の答えは明快だ。
「リーマンショックやコロナ禍のような有事の緊急対応を除けば、今の支援策は平時として過去10年で最も手厚い水準。過去の経済危機でばら撒かれた補助金やゼロゼロ融資の多くは、倒産を防ぐためのいわば『止血』でした。一方で現在は、新しく事業を立ち上げる人や、時代に合わせて事業をつくり替える人を国が積極的に後押しする、前向きな予算がかつてない規模で組まれているのです」
では、何を狙えばいいのか。高橋氏が挙げる狙い目は3つだ。
「筆頭は、『持続化補助金〈創業型〉』。ホームページ制作やネット広告、チラシ、店舗の改装といった『売上を伸ばすための販促費』の3分の2を補助してくれます。次いで、クラウド会計ソフトや予約システム、POSレジなどの導入費を補助する『デジタル化・AI導入補助金』。
上限は枠によって最大450万円ほどで、国に認定された支援事業者が二人三脚で手続きを進めてくれる。高性能な機械の導入や独自システムの開発など、設備投資で勝負したい人には上限750万円超の『ものづくり補助金』もあります。ただし数値目標が厳格に審査されるため、難易度は高めです」
最大の罠は「後払い」と「補助金が主語になる」こと
ただし、この追い風にも重大な落とし穴がある。補助金は原則「後払い」なのだ。
「機材代も広告費も、まずは手元の現金で払わなければなりません。国からの入金は、事業を終えて報告が承認された数か月後。この『出ていってから戻ってくるまで』の間に現金が尽き、事業は回っているのに倒産する……という、補助金待ちの間の『黒字倒産』に陥る経営者が後を絶たないのです」(高橋氏)
中小企業の現場を見てきた宮子氏は、もう一つの罠を指摘する。
「補助金が『手段』ではなく『目的』になってしまうことです。自己資金なら絶対にやらない事業を、取れるからという理由でやってしまう。補助金が主語になった時点で、事業の本質がぶれるんです。私が見てきた中で印象に残っているのが、とあるソロキャンプ用品店。補助金で店舗を構え、3店舗まで伸びました。しかし、『どうせまた補助金が出る』『補助金で作った事業だし』という意識が社員に植え付けられて経営が甘くなり、いまは1店舗まで縮小してしまったそうです」
では、補助金を使いこなす人と振り回される人は、どこで分かれるのか。高橋氏は、申請前にたった一つの自問をすすめる。
「『もしこの審査に落ちても、自分は同じお金を払ってその機材を買うか』と自問してください。答えがイエスなら、堂々と申請しましょう。どのみち払うはずだった経費が後から戻ってくるのですから、手元の現金を温存する最強の防衛策になります。答えがノーなら、それは身の丈を超えた不要な出費です。『半額戻ってくるからお得』と考えた時点で、補助金に振り回される側に立っています」
宮子氏がすすめるのは、そもそも補助金を待たずに動くことだ。
「補助金は申請時期が決まっていて、必ず通るわけでもありません。採択率は全体で3~4割ほどで、落ちれば翌年まで待つことになる。その間に事業を止めてしまうロスのほうが、よほどもったいないんです。融資なら、計画があれば1か月ほどで実行できます。
まずは融資で事業を始めて、その過程で補助金の対象になるものがタイミングよくあれば申請する。『受給できたらラッキー』くらいに考え、事業拡大や新たな展開に活用するのがよいと思います。むしろ、補助金がなくても成長できるくらいの会社のほうが、案外採択されやすいものです」
補助金が事業成長につながった会社
この流れに乗り、”申請代行業者”も急増しているというが、ここにも罠がある。
「申請を通りやすくするためだけに、やりたい事業と無関係な計画を作る業者も存在します。採択後に成功報酬だけ請求して連絡が取れなくなる、”申請までが仕事”の業者もいるため、実行できない事業計画だけが手元に残り、あとから『こんな事業やれない』と嘆く会社も多い。会社も会社で、『これなら通ると言われて出した。中身はよくわかっていない』なんて平気で言うので困ったものです」
成功報酬は採択額の15%、高いところでは30%を取る業者もあったそうだ。また高橋氏によれば、相場は着手金10万~20万円、成功報酬は採択額の10~15%程度。「着手金ゼロ・完全成功報酬」を過剰にうたう業者は、採択後の事務を手伝ってくれないトラブルも多いという。
「入金される最後の瞬間まで、実績報告に伴走してくれるか。そして『先に出ていくお金で資金ショートしませんか』と、あなたの会社の現金を本気で心配してくれるか。申請を煽ってくる業者ではなく、会社の生き残りを一緒に考えてくれる人を選んでください」(高橋氏)
最後に、補助金が本当に力になった例も宮子氏が教えてくれた。コロナ禍で、イベント業が一切できなくなった会社の話だ。
「『環境に左右されない仕事をしたい』と練りに練って、イベントで培った講座・研修のノウハウを活かした塾のような事業に転換したんです。補助金を使ったのは、オンラインでもオフラインでも提供できる仕組みのシステム投資でした。いまはイベントも塾も伸びています。目的が明確な会社ほど、補助金も通るし、事業も伸びるんです」
補助金で何をするかではなく、やりたいことに補助金をどう効かせるかが大切だ。
【取材協力】
高橋健一朗氏
経営コンサルタント。株式会社アイ・コーポレーション代表取締役。17年間で倒産・借金・資金繰りに悩む経営者2000社超を支援してきた。
宮子智子氏
経営コンサルタント。株式会社LM&C代表取締役。中小企業の経営・資金繰り支援に携わる。
文/桜井カズキ
宅配ボックスの補助金、予算の9割が余っていた!?実は戸建ての住民が見逃している神制度
宅配ボックスを買うと、自治体から補助金が出る。マンションのように共用の宅配ボックスがない戸建てにとっては、見逃せない制度だ。設けている市区町村は全国で70を超え…
実用性が高く経済的なモビリティーを補助金が後押し!ハイコスパEVに予約が殺到する大ヒットに
現在、発売中のDIME9/10合併号では上半期のヒット商品を大特集。物価高が続く一方で、AIは日常に浸透し、SNS発のトレンドはますます細分化。スポーツやエンタ…




DIME MAGAZINE
















