今年7月、青森県で行われた「あおもり推し土産総選挙」。その「お菓子」部門でグランプリに輝いたのが、“SNSでたびたびバズるお菓子“として知られる「民芸菓子処 しんぼり」のチョコQ助だ。
スーパーなどで見かけたことがある人も多いはず。ちなみに東北在住の筆者は近所のスーパーや道の駅でよく見かける。そしてすぐ手が伸びる。秒で無くなる。そんな禁断のお菓子だ。
青森県八戸市生まれの「チョコQ助」は割れた南部せんべいにチョコレートをかけた素朴なシンプルお菓子。つい最近も、アーティストの矢野顕子さんがSNSで商品を紹介し話題になった。青森のご当地お菓子だが、あまりの売れ行きに購入制限がかかることもあるという。
そんなチョコQ助、実はコロナ禍の大きな危機を救った偉大なお菓子でもあった。
今回、チョコQ助の誕生秘話から美味しさの秘密、知られざるエピソードについて、有限会社しんぼりの田屋さんに話を聞いた。
――チョコQ助誕生の経緯を教えてください
「きっかけは「南部せんべいをもっと気軽に楽しんでほしい」という思いでした。昔から親しまれてきた素朴なお菓子ですが、若い世代には“少し渋い”イメージがあるみたいで…。そこで、南部せんべいの香ばしさとチョコレートの甘さを組み合わせることで、新しい楽しみ方を提案できるのではないかと考えました」
若者にも南部せんべいを味わって欲しい。そんな想いを胸に試作品作りを始めたところ、口にした社員全員が『これは、おいしい!』と絶賛した。
南部せんべいのしょっぱさとチョコの甘さが織りなす味わいはかつてない衝撃。すぐに商品化が決まった。
発売されたのは2021年。徐々に認知度が高まり、その美味しさは全国へと広まっていく。ヒットのきっかけはSNSだった。
「SNSでの口コミ拡散では、「意外な組み合わせなのに美味しい」「止まらなくなる」といった投稿が広がり、県外からの注文が急増しました。さらに、旅行系インフルエンサーの紹介や青森出身の方の帰省土産としての投稿など、複数の小さな波が重なり全国的な認知につながったと思います。また、工場脇に設置した煎餅専用自販機に行列ができたことをメディアに取り上げていただいたのも大きかったです」
実際に食べた人なら分かると思うが、確かに止まらなくなるほど美味しい。なぜこんなに美味しいのか?
「南部せんべいの塩味とチョコの甘さのバランスにこだわっているからだと思います。チョコの量を増やしすぎず、南部せんべいの塩味とごまの香ばしさがしっかり残るように調整して作っています」
「また、食べた瞬間の「パリッ」とした食感を出すために従来の南部せんべいよりも配合を変えて厚さも半分に。手に取りやすいサイズ感と値ごろ感も人気の秘密かもしれません。シンプルなお菓子だからこそ、細部のバランスにこだわって作っています」
ところで、一つ気になったのは「チョコQ助」というネーミング。
なぜこんな名前に?
「もともと、せんべい業界では欠けたり割れたりしたせんべいをまとめてお徳用で販売する商品のことを「久助」と呼ぶのですが、そんなせんべいにチョコをかけているので「チョコ久助」。ただ、漢字だとちょっと堅いので「Q助」と弊社社長が名付けました」
昔ながらの南部せんべいはまだまだ進化する
今や大人気のチョコQ助だが、発売当初は南部せんべいにチョコレートをかけるところから袋詰めまですべて手作業で行っていたという。
ところが、個数制限がかかるほどの人気となり、工場を2棟増設。せんべいにチョコレートをかける機械も導入し、新たな製造ラインを組んで想像以上の売れ行きに対応した。
売れに売れまくったチョコQ助だが、実はコロナ禍で窮地に追い込まれていた会社を救った偉大な存在でもある。
2019年、コロナの流行に伴う緊急事態宣言で青森を訪れる観光客が激減。「しんぼり」のお土産部門は観光客向けの商品開発・販売を担っていたため、売上がゼロに近い状態が続いていたという。
そんな時期に開発を進めていたのがチョコQ助だった。試行錯誤の末に誕生した新商品が、どん底状態だったお土産部門の救世主に。
コロナ禍によりターゲット層を観光客から「地元の人」に変えたこと、意外な組み合わせに果敢に取り組んだことも、ヒットの要因かもしれない。
多くの人に愛され、たびたび話題になる理由について、「しんぼり」の田屋さんはこう分析する。
「昔ながらの南部せんべいをベースにした青森・八戸らしさのあるローカル感、そしてSNS時代に相性の良い“意外性”にあるかと思います」
さらに、崖っぷちの状況で生まれたお菓子は新たな可能性も見出してくれた。
「ヒットのおかげで地元以外からの注文も増加し、特に南部せんべいの可能性を再認識できたことは大きな変化でした。それに伴い、創作南部せんべいの専門店【BEILAB】もオープンし好評をいただいております」
ちなみに、「しんぼり」にはチョコQ助以外にも美味しいお菓子がいっぱいある。南部せんべいアレンジシリーズとして、バター風味の南部煎餅に濃厚なホワイトチョコをかけた「白いチョコQ助」も美味しい。
また、しっとり食感の南部せんべいにさきいかをたっぷりまぶした「いかまみれ」やラー油味、わさび味など大人向けおつまみタイプのせんべいも揃っている。
長年、素朴なお菓子を作り続ける中で一番大切にしていることがあるという。
「素朴さの中にちょっとした楽しさを大切にしています。南部せんべいの良さを壊さず、しかし新しい世代にも楽しんでもらえるように素材の味・食感・サイズ感など細部を丁寧に作り込んでいます」
そして、いかなる苦難も乗り越え、長年愛される企業として存在している理由とは?
「いくつかあると思いますが、地域の食文化を大切にしてきたこと、派手さより「誠実なものづくり」を続けてきたこと、地元の方々に支えていただいてきたこと、時代に合わせて少しずつ進化してきたことでしょうか」
「今後も、しんぼりのお菓子作りの根幹でもある昔ながらのいいものを残しつつ、新しい可能性を広げる商品開発に挑戦していきたいと考えています」
取材協力
民芸菓子処 しんぼり
しんぼり公式X @sinbori5439
文/太田ポーシャ
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