「ソーシャルジェットラグ」は、2006年にドイツの時間生物学者ローエンバーグらが提唱した、平日の社会的な時間と休日の生物学的な時間(体内時計)の間に生じるズレを指す言葉だ。
平日と休日の「睡眠中央時刻」の差から算出され、体内時計の乱れによる健康被害が懸念されている。
西川(nishikawa)は、「日本睡眠科学研究所」監修のもと、1万人の睡眠実態を追った『nishikawa 睡眠白書 2026』を9月3日(木)の「秋の睡眠の日」にホームページで公開した。『nishikawa 睡眠白書』は2018年より毎年発表し、今年で9年目となる。
本年度は、10代~20代のZ世代を中心に広がる「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」の最新動向や、厚生労働省ガイドラインに対する小~高校生の睡眠時間の未達成状況、ビジネスパーソンの睡眠負債の影響による業務ミス(ヒューマンエラー)の実態、さらに急上昇する「リカバリーウェア」等の睡眠投資トレンドを多角的に掘り下げた。
Z世代(10~20代)で社会的時差ボケが顕著に、高校生は平均71.9分、20代は77.3分のズレ
成人においては20代のズレが最も大きく平均77.3分。子どもでも小学校中学年以降、学年が上がるにつれて増加し、高校生では平均71.9分のズレが確認された。
また、全体的に「睡眠の長さ」に満足していない人ほどこのズレが大きい傾向にあり、休日の寝だめが体内時計のリズムの乱れを招いている実態が判明。
[ソーシャルジェットラグ:睡眠負債の代償による「時差ボケ」実態]
高校生の約7割が平日に睡眠不足、成長期の睡眠習慣に懸念
厚生労働省「健康づくりの睡眠ガイド2023」(※1)では、ライフステージごと(成人、こども、高齢者)に適正な睡眠時間の確保が推奨され、高齢者は床上時間が8時間以上にならないこと、成人は6~8時間、小学生で9~12時間、中学・高校生で8~10時間を適正な睡眠時間の目安としている。
今回の調査では、平日と休日・祝日の睡眠時間を聴取し、ライフステージ別に比較した。
平日では、高校生が7割弱と突出し、中学生は45.6%、小学生は43.2%で睡眠不足が懸念される。成長期の睡眠不足は体調不良や集中力低下を招く恐れがあり、日頃から適切な睡眠習慣を整えることが大切だ。
※小学生から高校生は親から見た子どもの睡眠時間
[適正な睡眠時間外の人の割合]

(※2)高齢者の推奨睡眠時間は5~7時間とする(Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community,2018)
ビジネスパーソンの睡眠実態と業務上のミス
睡眠評価において広く使われる「アテネ不眠尺度」に則った10,000人に調査結果では、52.3%が「不眠症の可能性あり」と診断された。
全体の過半数で不眠傾向が見られる中、ビジネスパーソンの48.1%が「睡眠不足が原因で業務上のミスをしたことがある」と回答。睡眠不足は個人の健康問題にとどまらず、企業の生産性にも影響を与えていると考えられる。
また、昼寝・仮眠(パワーナップ)に関する質問では、「会社に昼寝制度があれば利用したい」と答えた人は41.8%に達し、個人のケアだけでなく企業の仮眠環境整備を通じた健康経営・生産性向上の重要性が高まっているようだ。
[アテネ不眠尺度の調査]
[睡眠不足による仕事のミス TOP5]
1. やるべきことを忘れる(18.1%)
2. 作業や操作ミス(15.9%)
3. 入力ミスや書き間違い(14.6%)
4. 仕事中の居眠り(13.9%)
5. 聞き間違い(9.3%)
[質問:あなたは、もし会社に昼寝制度があれば利用したいですか。]
都道府県別睡眠時間ランキング
平日・休日ともに、平均睡眠時間が最も長かったのは「青森県(平日:7時間44分/休日:8時間29分)」、最も短かったのは「鳥取県(平日:6時間31分/休日:7時間12分)」となった。
全国平均は平日7時間8分、休日7時間47分となっており、休日と平日の差は約39分。主要都市部(東京都、大阪府、愛知県)も全国平均と同程度の水準に位置している。
睡眠投資トレンド:睡眠の質向上のためのアイテム
睡眠の質向上のために実際に取り入れて改善効果があったアイテムや習慣を調査したところ、「枕」が35.2%と最も高く、次いで「マットレス」が23.8%、「運動習慣の見直し」が11.7%で続いた。
また、今後購入・取り入れたいアイテムでは、「オーダーメイド枕(27.8%)」が首位となり、「リカバリーパジャマ(22.7%)」が前年6位から3位へと大幅にランクアップ。着るだけで疲労回復や睡眠環境を整えるリカバリーウェアへの注目が急伸長している。
[直近2~3年で、睡眠の質の改善に効果があったアイテム・習慣]
[睡眠の質を高めるために今後購入・取り入れたいアイテム]
※1.既製品 ※2.冷感性、吸湿発熱性などの機能素材を使った寝具 ※3.アロマミスト・アロマオイルなど ※4.入浴剤・バスソルトなど ※5.ホットアイマスク・湯たんぽ・靴下など ※6.GABA・クロセチン・テアニン・ぐっすりんなど ※7.GABAフォースリープなど ※8.食事のタイミング・栄養素など
日本睡眠科学研究所の総評
当研究所では2018年から毎年、「日本人の睡眠実態」について幅広い年代・職種の方1万人を対象に大規模な調査・分析を行い、「秋の睡眠の日」(9月3日)に合わせて結果を発表しています。
今回の調査結果を踏まえ、現代日本が直面する睡眠課題と今後の展望について、当研究所として以下の3点を提言いたします。
1. 「週末の寝だめ」が生むソーシャルジェットラグと、成長期の睡眠危機
10~20代を中心に顕著に見られる体内時計のズレは、生体リズムの観点から非常に懸念すべき状態です。
「平日の睡眠不足を休日に補う」行動は、時差ボケと同様の負荷を脳と身体にかけ、週初めのパフォーマンス低下やメンタル不調の引き金となります。
小中学生の約4割、高校生の約7割が推奨睡眠時間を確保できていない実態に対しては、記憶の定着や成長ホルモン分泌が不可欠な発育期の観点からも、教育・公衆衛生の両面から早急な対策が求められます。
2. 睡眠負債による「脳機能低下」がもたらすビジネスリスク
過半数(52.3%)が不眠傾向を抱え、働く人の約半数が誤操作や失念などの業務ミスを実感しているという結果は、睡眠負債が注意力や判断力などの認知機能を直接的に損なっている実態を裏付けています。
昼寝・仮眠制度を希望する声が4割を超えることからも、企業には「個人の努力」に頼るだけでなく、パワーナップ(戦略的仮眠)の導入をはじめとする健康経営・リスクマネジメント視点での環境整備が強く求められます。
3. 「消極的な休息」から「積極的な睡眠投資」へのパラダイムシフト
今回の調査では、リカバリーウェアの需要急伸や20代男性の投資意欲の向上など、睡眠を「削るもの」から「コンディション向上のための資本」と捉え直す前向きな変化が確認されました。
睡眠の質向上には、自分に合った寝具(枕・マットレス)や機能性パジャマなどの「寝環境の最適化」とともに、「正しい生体リズムの維持」を両輪で進めていくことが重要です。
調査概要
日本人の睡眠に関する意識・満足度調査
調査手法:WEBパネル調査
調査時期:2026年7月10日(金)~7月15日(水)
調査対象者:全国の18歳~79歳の男女
回収サンプル数:
基本調査対象10,000人 ※居住地別・性年代別人口構成比に合わせて聴取
本調査対象 3,000人 ※基本調査1万人のうち、性年代別人口構成比に合わせて聴取
調査会社:株式会社クロス・マーケティング
出典:「nishikawa 睡眠白書 2026 ~日本人の睡眠調査~」
関連情報
https://www.nishikawa1566.com/
構成/Ara




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