
「騙されたと思ってやってみろ」という言葉が、日本語には存在する。
本当に騙されたつもりでそれをやってみたら、まるで得をしなかったということもあるし、逆に大きな利益を手にしたということもある。今回は後者、つまり「得をした話」をここでしたい。
筆者は数年前、今となってはうろ覚えの記憶であるが、「ポモドーロテクニック」という仕事管理術についての記事を執筆した。それは25分間働いて5分休むインターバルを繰り返すもので、あの当時は「そういう仕事術があり、筆者が実際にやってみた」という程度の内容で記事を書いたはずだ。
2026年8月のある日、筆者はふとそれを思い出し、久しぶりにポモドーロテクニックをやってみた。すると……。
トマト型キッチンタイマーを使うテクニック
1980年代、イタリア人のフランチェスコ・シリロという人物が開発した仕事管理術ポモドーロテクニック。
「ポモドーロ」とはイタリア語で、トマトを意味する。なぜ、トマトなのか。シリロ氏はこの仕事管理術を実践する上で、トマトをかたどったキッチンタイマーを使ったからだ。キッチンタイマーは多くの場合、最大でも30分ほどしか計測できない。が、それがポモドーロテクニックにはちょうどよかった。シリロ氏は25分でベルが鳴る設定をタイマーに施し、その間は仕事のみに集中するという発想で机上の作業に臨んだのだ。25分間集中した後は、5分間の休憩。このサイクルは「1ポモドーロ」と称される。
仕事に集中している25分間は、電話に出ない。というより、電話がかかってきたらそこで25分の計測を打ち切る。電話が終われば、またポモドーロを最初からやり直す。それを4ポモドーロ分やり遂げたら、大休止に入る。
これを2026年の現代に適合させた場合、集中時間はメールやメッセージアプリの閲覧・返答はしない。ただひたすら、予め決めた一つのタスクに意識を傾ける。つまり、タスクの進行を阻害する邪魔な要素を一切断ち切ってしまうというわけだ。
このポモドーロテクニックは、台湾のデジタル担当政務委員を務めた「天才プログラマー」オードリー・タン氏が取り入れていることでも有名である。タン氏の場合はタイマーまで原典に倣ってポモドーロ型だったりするが、25分と5分の計測ができ、なおかつ時間終了の音が鳴りさえすればタイマーの外形は何でもいい。
筆者はたまたま、数年前にとあるメーカーからもらったキューブ型タイマーを持っていた。
だいぶ長い時間、箱から出していなかった代物だ。が、あるきっかけで筆者はこれを引っ張り出し、ポモドーロタイマーとして使ってみることにしたのだ。
この時、筆者はスランプに陥っていたのだ。
スタックを乗り越える!
物書きとは、肉体労働である。取材に行かなければならないという意味もあるが、記事執筆の時は脳を酷使する必要がある。
これは、実際にそのような仕事に携わっている人でないと苦労が分からないだろう。
物書きは「一球入魂」の仕事で、一文一文を捻り出すためにいちいちスタミナを要してしまう。その上で、記事執筆には「スタック」という現象も頻繁に発生する。たった一言を書くために、酷い時には数時間をロスすることも。
そうしたスタックを、最近では生成AIプラットフォームで簡単に改称しようとするライターもいるらしい。が、筆者はそうした手段を絶対に認めない。スタックを超えた先に、AIが捻り出せない表現が存在すると信じているからだ。
障壁を自力で解消するしかない以上、そこには多大な集中力を注ぎ込まなければならない。でなければ、まるで底なし沼のようにどんどん深みにハマっていく。なぜこんな仕事を生業にしてしまったのだろう……と今更嘆いても始まらない。ともかく、これをポモドーロテクニックで何とかならないかと思い立った次第である。
結論を言えば、大成功だ。
「25分間で極力仕事を先に進める」ということが唯一の目標となり、また時間が進む毎にある種の焦りが発生し、嫌でも踵が上がってくる。そうなると、スタックは半分乗り越えたも同然だ。
仕事全体にメリハリがついて、冗長な間が一切なくなる。そして、気がつけばあれだけ難儀していた厄介な記事が書き上がっている!!
1記事4ポモドーロ!?
ポモドーロテクニックを本格的に取り入れてみて分かったのは、自分の記事が大体何ポモドーロで完成するかという具体的なペースである。
画像添付や自己添削を抜きにすれば、どんなに小難しい内容の記事でも4ポモドーロで書けてしまうことにようやく気がついたのだ。4ポモドーロとは、小休止も入れると2時間。専門性を要する3,000字ほどの記事を2時間で書けるという事実を知り、仕事に対するかなりの自信が出てきたのは確かだ。
なお、ポモドーロテクニックを用いない旧来のやり方では、正直に白状してしまうが1記事仕上げるのに4時間はかかっていた。メール確認だのスケジュールチェックだのという余計な作業を合間にこなしていた上、それにスタミナと集中力を持っていかれて頭が回らなくなっていたのだ。
ちなみに、この記事を書いている今もタイマーを動かしている。ここまで要した時間は1.5ポモドーロほど。いや、これは本当に「働き方」が大きく変わるテクニックと評価するべきだ!
もちろん、職種の中にはポモドーロテクニックが全く適合しないものもあるだろう。が、デスクワークの人は筆者に騙されたと思って、一度この仕事管理術を取り入れてみることをお勧めする。人生、変わるかもしれませんよ!?
文/澤田真一
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