世界的に変化の激しい時代において、企業が生き残るためには合併や買収など積極的な手を打つことも必要だ。近年、日本のM&A市場は、取引件数・金額ともに過去最高水準といわれる。
しかしながら、M&Aそのものが取り上げられても、その後のシナジーについては注目される機会が少ない。
今回は、M&Aを果たした企業がその後どうなったのか、また今後どのような相乗効果が期待されるかについて3つの事例から探ってみた。
1)オリックス×DHC
2023年1月、オリックス株式会社(以下、オリックス)が、大手化粧品・健康食品メーカーの株式会社ディーエイチシー(以下、DHC)を子会社化した。
オリックスはリース業を起点にさまざまな企業のM&Aを重ね、多様な領域に乗り出してきた。DHCの投資については、同グループの国内事業投資におけるヘルスケア領域のネットワーク拡大につながると考えた。
オリックスグループの広報・渉外部の担当者は、M&Aの背景について次のように語る。
「化粧品および健康食品は、健やかな暮らしを支える分野であり、当時コロナ禍を経て高まっていた健康志向を背景に、安定した成長が見込まれると考えました。
DHCは多様な商品を幅広い販売網を通じて手頃な価格で提供し、高い認知度と顧客基盤を有する業界を代表する企業であることから、その基盤を活用したさらなる事業の広がりも期待できると判断しました」
●シナジー
現時点で、シナジーを生んだ取り組みについて、DHCの広報は次の3点を挙げる
・オリックス・バファローズのリーグ優勝や開幕戦に合わせたDHC商品のサンプリング施策や感謝セールの実施による新たな顧客接点の創出
・関西国際空港でプッシュカート広告の展開や免税店出店を実現
・上海におけるオリックスの現地社員の配置で、販路拡大+ブランド浸透の両面の事業成長を加速
「こうした取り組みに加え、事業構造の見直しなどを進めた結果、2024年には7年振りの増収増益を実現しました。加えて、経営管理手法などの面でも、オリックスの知見を取り入れながら経営基盤の高度化を進めています」(DHC広報)
●今後の展望
「今後は、オリックスグループのM&Aノウハウやリソースを最大限活用し、国内に留まらず海外企業や親和性のある業界へ積極的にアプローチを行なうことで、事業領域の拡大を目指してまいります」(DHC広報)
2)JR九州×フジバンビ
2023年6月、九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)は、熊本の老舗菓子メーカー株式会社フジバンビ(以下、フジバンビ)の全株式を取得して完全子会社化した。
もともとフジバンビは2018年、日本投資ファンドと資本業務提携を結び、地方銀行なども活用しながら事業承継と経営改革に挑んでいた。
その結果、コロナ禍の危機も乗り越えられた。こうしてバリューアップをはかったこともあり、JR九州という大企業の目に止まってグループ入りという成功につながった。
JR九州は、同社グループの流通・外食セグメントの更なる強化が期待できることに期待を寄せた。
フジバンビの商品ブランドと、同社グループの持つ顧客との接点を活かし、新商品の開発、販路の拡大、地域への送客等の取り組みを通じて、九州のにぎわいづくりに貢献することを公表している。
●シナジー
JR九州とフジバンビが結びついた結果、次のようなシナジーが生まれている。
・フジバンビとしては、設備や環境面などが改善し、生産効率がアップ。販路拡大により、売上が約1.5倍に増大した。
・JR九州としては、熊本銘菓の地域ブランドをグループに迎えることで、九州観光コンテンツのひとつとしてのブランディング向上につながった。
●今後の展望
「JR九州グループは、持続的な成長に向けて、M&Aの積極活用による事業領域の拡張とポートフォリオの拡充を推進します。変化に強いしなやかな事業構造を築くための『未来への種まき』に挑みます」(JR九州担当者)
3)オレンジ・アンド・パートナーズ×ジョージクリエイティブカンパニー
放送作家の小山薫堂氏が代表を務める企画会社、株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ(以下、オレンジ)が、2026年6月1日付で、子会社である株式会社ジョージ・クリエイティブ・カンパニー(以下、GCC)を吸収合併した。
GCCはクリエイティブ・プロデュース事業などを行なう会社。本吸収合併を通じ、オレンジは空間プロデュース事業を強化する意向だ。
オレンジの広報担当者は、背景として次のように語る。
「ホテル、商業施設、飲食施設などの不動産開発のプロセスにおいては、単なる機能性やデザイン性にとどまらず、体験や持続性の高い価値が求められます。
しかしプレイヤーの分断化やソフト面のコンテンツ不足という課題がありました。
そこでGCCと共に『場』を起点とした持続的なブランド体験を生み出す『Branded Placemaking(ブランデッド・プレイスメイキング)事業』を本格展開することにしました」
●シナジーと今後の展望
今後、生み出したいシナジーについて、オレンジの広報担当者は次のように話す。
「当社がこれまで培った『共感性と物語性の高いブランディング手法』とGCCの『空間デザイン力』を融合することにより、『場そのものをブランド化・メディア化』することを目指した空間プロデュース事業を加速化します。
コンセプト段階から伴走することで、その場を起点にお客様(エンドユーザー)のブランド体験をつくり出し、リアルな感動を伴う共感を伝播させ、持続的にブランドにファンを生み出していきます」
3つのM&Aからは、綿密な経営戦略を感じられた。そこから生まれるシナジーに、今後も期待したい。
取材・文/石原亜香利
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