中東情勢の緊迫化が食品パッケージを一変させました。カルビーは「ポテトチップス」などのパッケージを白黒の2色に変更。カゴメはケチャップの外装パッケージを透明デザインに変更しています。
ナフサ由来の印刷インク·溶剤の不足が懸念されるなか、食品メーカーは流通量が滞らないよう知恵を絞りました。今回の出来事は企業の業績にどのような影響を与えたのでしょうか。その結果からは、熾烈な価格競争が起こる未来も予見させます。
国内の影響は想定を下回ったカルビー
カルビーが白黒パッケージに切り替えた主な狙いは、安定供給に努めるというものでした。印刷に必要なインクはナフサ由来の原材料を多く使うため、パッケージを簡素化することにより、調達量を安定させることができるのです。
ポテトチップスの国内における2026年4月~6月の売上高は、前年同期間比で2%の増加でした。数量も0.5%増加しています。カルビーが白黒パッケージへと切り替えたのが5月でした。パッケージの簡素化の業績への影響は軽微だったと言えるでしょう。
またカルビーは、中東情勢の緊迫化が2027年3月期通期において30億円程度の下押し要因になるとの見通しを出していました。通期営業利益は前期比0.1%増の横ばいを予想しています。
しかし、2026年4月~6月の営業利益は前年同期間比で24.4%増加しました。国内事業の営業利益は26.4%増加しています。
決算説明会では、中東情勢の国内の影響は想定を下回ったことを明らかにしました。
従って、カルビーは白黒パッケージに切り替えたことにより、狙い通り安定的な供給を実現。簡素化したことで、過度な買い控えが起こった兆候もなく増益へと向かうことができたと言えそうです。
ただし、今年7月からは段階的にカラーパッケージへと戻しはじめています。
包装を簡素化しても増収だったカゴメ
カゴメは、「カゴメトマトケチャップ」に使用している特殊な白インクが調達難に陥ったことを背景に、2026年5月から一部デザインを変更しました。カゴメの狙いもカルビーと同じく、安定的に供給する体制を維持するためというものでした。
パッケージを変えたことによる影響はこちらも限定的でした。カゴメの国内における2026年1月~6月の、ケチャップを含む食品他は1.8%の増収。4月~6月も1.2%の増収でした。
カゴメは下期の売上収益も21億円程度前年を上回る計画を立てています。
ここで疑問に感じるのが、パッケージを簡素化しても顧客への影響が少ないのではないかということ。物価高が鮮明になるなかで、インク代などの包装コストを下げて消費者に還元するという姿勢が、消費者に受け入れられる可能性があります。
素早く反応したのが「ドン·キホーテ」を運営するパン·パシフィック·インターナショナルホールディングス(PPIH)でした。今年6月に生活必需品に特化したPB「EveryDay Real Price」の展開を開始したのです。
パッケージを白黒にするなど、包装を極限まで簡素化してミネラルウォーターやお茶、納豆、ラーメンなどを圧倒的な低価格で販売しています。
このブランドは6月から開始のため、影響は軽微であるものの、PPIHの2026年6月期のPB売り上げ比率は26.2%で、前期から2.2ポイント上昇しました。2035年6月期には35.0%まで引き上げる計画です。
「EveryDay Real Price」が通期でいかなる貢献をするのか。小売業界注目の一年となるでしょう。
トップバリュはどう動く?
PPIHとは路線が異なるものの、イオンのトップバリュも簡易包装の取り組みを進めてきました。ただし、これは環境への配慮を強化したもので、もやしの袋のサイズのコンパクト化、豚肉の発泡トレーの取り止めなどを行なっています。
しかし、トップバリュは物価高の買い控え対策として、食料品約3500品目の価格を今年8月末まで据え置いています。そうした取り組みにおいて、土谷美津子社長は無駄を徹底的に排除していることを強調しました。
PBは安かろう·悪かろうのイメージが醸成されることを避けなければなりません。また、強力なブランド力を持つナショナルブランドに打ち勝つためにも、パッケージによる訴求力は重要です。売場での一体感を醸成するためにもデザイン性の高い包装は重要でしょう。
しかし、足元で多くの消費者が物価高に苦しめられていることは事実。企業努力でコストカットをし、安く商品を提供することが消費者の理解や高評価を得られやすい土壌が整っています。中身のクオリティを維持したまま、包装を簡易化したことで値段を下げることができたという姿勢は、企業のブランドメッセージとなる可能性があるのです。PPIHの「EveryDay Real Price」は正にそれに当てはまるでしょう。慢性的なインフレと、原油高という状況における新ブランドの立ち上げは、完璧なタイミングだったと言えます。
イオン系列でこの動きが加速すれば、PBの拡大は高まる可能性もあります。ナフサ不足という危機が、小売に新たな風を吹き込んだようにも見えます。
文/不破聡




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