今や世界中から注目されている台湾のウイスキー「カバラン」。普通なら100年はかかりそうな発展をわずか10年ほどで成し遂げ、ここ数年、台湾を訪れ、そのおいしさに目覚めたという人も多い。
最近、日本でも見かける機会が増えてきたが、この夏、ドン・キホーテのPPIHと組んで日本だけの限定商品を発売し、話題を呼んでいる。このカバラン蒸留所を擁する金車グループの会長に、現地で話を聞いた。
●李玉鼎(アルバート・リー)さん
1965年、台湾・台北市生まれ。日本に留学し、明治大商学部を卒業。帰国後、父親が経営する飲食料品メーカー・金車グループに入社。2005年、ウイスキー事業に参入。2014年に総経理(社長)に就任、現在、同グループ会長・CEO。
名水の地、宜蘭の員山で新規事業をスタート
「カバラン」ウイスキーは2005年に蒸留所が設立されたので、まだ20年ほどの歴史だ。
このウイスキー事業を運営する金車グループは、元々1950年代からの生活用品メーカー。1970年代から飲料品を、1992年以降はインスタント麺やレトルト食品なども手掛けるようになった。
1980年代から缶コーヒーも発売する『Mr. Brown Coffee』は台湾では知らない人はいないほど。最近ではビールの『Buckskin』も発売し、エビなどを養殖する水産事業にも進出している。
同グループ会長の李玉鼎(アルバート・リー)さんは、こう語る。
「このカバランウイスキー蒸留所がある宜蘭(イーラン)県の員山(インサン)は、父方の祖母の出身地でした。
たまたま縁があって、この土地を購入しましたが、当初はウイスキー事業を始めるつもりはなかった。名水の地なのでビール工場を考えたりしましたが、まずは水の工場をつくることにしました。
台湾における酒造は、昔は国営事業のみに制限されていましたが、2002年から民営でも製造・販売ができるようになりました。現在、名誉会長である私の父は18歳のころからビジネスに関わっており、チャレンジ精神が非常に旺盛な人です。
家族経営の企業として、私も新規事業を考えた結果、ちょうどその頃、ブームの兆しが見え始めていたウイスキーに注目したのです。当時、台湾ではブレンデッドウイスキーが飲まれていましたが、台湾には2300万人のマーケットがあります。
独自のウイスキーを造れば、必ず売れると思いました。缶コーヒーで輸出のビジネスもしていたので、できあがったウイスキーは海外へ輸出することもできる。新たな柱になる事業として、ウイスキーに投資することにしたのです。それが2005年のことです」
誰からも否定された台湾でのウイスキー造り
ウイスキー造りは初めてのことで、当初は数々の困難に見舞われたという。
「台湾のような温かい国でウイスキーを造るなんてできるはずない、と誰もが言っていました。できたとしても飲めるわけがないと。確かに弊社はウイスキーでは後発企業です。
しかし100年企業を目指していて、5年後、10年後のことを、そして若い人たちの変化や世界でのニーズなどを常に考えています。我々のモットーは、“突破と創造”です。
他国の真似をするのではなく、オリジナリティを出すことに腐心しました。ウイスキーのDIY体験やテースティングルームなども独自につくりました。
もちろん品質の追求にも妥協はありません。雪山山脈からの名水を活かし、蒸し暑い台湾の気候を上手く利用できるように考えたのです」
長年、輸出ビジネスに携わっていたこともあり、ヨーロッパなどから上質な樽を次々と入手。徹底した樽の管理が行なわれた。また、亜熱帯の台湾は気温や湿度が高い気候だが、その分、ウイスキーの熟成は早い。スコットランドなど冷涼な土地に比べると、3~4倍も早いという。
「〝エンジェルシェア〟といって、熟成により樽内のウイスキーは自然と蒸発して減るのですが、その量はスコットランドなどに比べると多い。その代わりに熟成は早く進む。
熟成した原酒をブレンドする経験を多く重ねることができ、ブレンド技術も高まりました。
ウイスキー造りに関わるスタッフみんなのチームワークのおかげでもありますが、留学した日本で学んだ細やかな精神も影響しているかもしれません」
こうした努力のかいもあり、トロピカルフルーツの香りが際立ち、リッチで余韻の長い味わいのウイスキーができあがる。2008年、最初のウイスキー「カバラン クラシック シングルモルト ウイスキー」が発売され、開業からそう長い年月を経ずに評判が一気に世界へと広まっていった。
世界で1000個の金メダルを受賞
「食事の際にウイスキーのサンプルを持って行って、料理との相性を色々と試しました。中華料理はもちろんのこと、日本料理やフランス料理などすべてに合います。ストレートやロックはもちろん、ハイボールもいけます」
その後も次々と新しいウイスキーの新商品を開発し発売。海外への輸出も広がり、18年の間にインターナショナル・ウイスキー・コンペティション(IWC)など世界の権威あるコンペティションで、カバランウイスキーは金メダルを1000個も受賞するに至った。
8月5日に日本国内のドン・キホーテで、このカバランウイスキーの新製品が発売された。日本向けに造られた、日本限定のウイスキーだという。
「ドン・キホーテは日本では大きなマーケットを有する巨大企業です。
渋谷のドン・キホーテは観光名所にもなっているようですが、日本の方も外国からの観光客も足を運び、消費をする場所になっているのでしょう。
1月にドン・キホーテの社長とお会いしてコラボが決まり、5月から試作品の試飲を重ね、7月には商品化とスピーディに進めました」
この日本向け新商品「Kavalan Blender’s Reserve Series」の開発担当のひとり、シニアブレンダーの楊順清(ZEROSE YANG)さんにも話を聞いた。
「日本向けのユニークなウイスキーを造るために、新たにブレンディングしました。
『NO.1』はバーボン樽を主体にラム樽、ポート樽、STRポート樽の原酒を使用。ふんわりと柔らかな香りがして、ハイボールに向いています。
『NO.2』はブランデー樽を主体にヴィーニョワイン樽、STRアメリカンオーク樽の原酒を使用。コニャックのような香りもしてリッチな味わいです」
李さんは、こう振り返る。
「最初の10年はチャレンジでした。その次の10年は発展する期間。今はそれを終えて、さらに次の10年、30年目に向けて邁進しています。
100年以上、200年続く蒸留所にならなくてはいけないのですから。日本や中国にも次々と蒸留所が誕生していて、今後ライバルになるかもしれません。
我々はまだ成功してはいないのです。意志を強く持って、品質を第一に追求していきます」
台湾を代表する企業、金車グループのあくなき品質追求。日本向けに開発された限定商品を試して、その意気を感じていただきたい。
取材・文/インディ藤田
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