大学新卒の就職活動では、公務員志望の学生が民間企業も含めて進路を比較検討する動きが広がっているという。これまでの公務員志望者は、早い段階で公務員か民間かを決めて、公務員試験対策を中心に就職活動を進めるケースも少なくなかったが、最近は民間企業の採用早期化やインターンシップが定着して、国や自治体でも採用制度や働き方の見直しが進んでいる。就職支援サービスなどを展開するワンキャリアの調査によれば、公務員志望者で民間企業も併願している割合は約95%と高い数字だったという。学生にとっては、公務員と民間企業を別々の選択肢として考えるのではなく、さまざまな項目を比較検討して進路を選ぶようになっているようだ。
国・自治体では採用や働き方の見直しが進行中
公務員の採用は、民間企業との人材獲得競争が激しくなっており、国や自治体の制度や運用の見直しが進んでいるという。人事院が2026年6月に公表した最新の『令和7年度人事院白書(年次報告書)』によれば、人材確保と定着に向けて、試験回数の拡大や内容のスリム化、在級期間の廃止と初任給引き上げ、自営兼業の承認基準新設とアルムナイ再採用、転勤の負担軽減と地元志向への対応、地方自治体の採用などの見直しを進めているという。
試験回数は、令和8年から専門試験を課さない総合職・教養区分の試験を春秋の年2回実施に拡大することで、大学2年生(試験年度の4月1日に19歳を迎えている人)から卒業までに最大6回の受験ができるようになり、合格の有効期間も7年間へ延長された。一般職試験も専門試験のない教養区分が新設されて、大学3年生からの受験が可能となり、暗記型から時事・情報中心へ試険内容も変更された。これらによって民間併願者の受験がしやすくなったという。さらに能カ・実績に基づく人事管理を推進するために「在級期間に係る制度」を廃止し、給与面でもさまざまな見直しを実施して初任給を含み改善されている。人材獲得では、一度離職した民間経験者(アルムナイ人材)を柔軟に再採用できる制度の運用も令和8年度から開始されている。
自治体の採用関連の具体例としては、神奈川県相模原市/小田原市では、オンラインを活用したアプローチが行われている。相模原市は、3D空間で庁舎見学や職員チャットができるメタバース・オフィスを開設し、小田原市もメタバース空間を使ったオープンカンパニー(インターン)を開催するなど仮想空間を利用した仕事理解の促進に取り組んでいる。愛知県豊田市は、試験対策の負担を減らして民間併願者を取り込むために、一部の採用枠で「公務員試験もSPI検査も実施しない」新しい採用方式を導入して、部活動や地域活動、民間での実績をダイレクトに評価する仕組みになっている。
官民併願の広がりは学生にとっては負担?
公務員採用の見直しで、併願しやすくなったが学生側の情報収集や選考管理は複雑化しているという。民間企業の就職活動は、インターンシップや早期選考、企業のクチコミ、OB・OG訪問など情報接点が多いが、公務員採用は試験制度や自治体ごとの選考方式、官庁訪問、配属や転勤の考え方など民間とは異なる情報を整理する必要がある。官民併願の学生は、民間企業の選考スケジュールと公務員試験の日程を並行して管理しなければならず、職務内容や働き方の比較だけでなく「時期に応じた準備内容」や「民間企業の内定と公務員試験の両立」などの課題もある。公務員志望者にとっては、民間企業との比較情報や併願を前提とした就職活動の進め方を模索する必要があり、就職の選択肢は広がるが負担としては大きくなっているようだ。就活生にとっては、悩ましい状況といえそうだ。
構成/KUMU




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