コロナ禍で広がったガーデニング需要は、その後やや落ち着きを見せたとされる。そうした中で注目を集めるのが、リサール酵産の土壌改良資材「カルスNC-R」だ。2026年4月29日には、同社が幕張メッセで開催された「花友フェスタ」で「8時間に販売した土壌改良資材の最多数」のギネス世界記録™を達成した。
同社の説明では、カルスNC-Rを使うと使い古した土を夏場なら最短1週間、通常でも2~3週間ほどで再利用できるという。なぜガーデニング愛好家はこの”土壌改善の素”にハマるのか。同社代表取締役社長の飯川隼斗氏に聞いた。
挫折の原因は「2年目の土」にあった
ガーデニングは、ホームセンターで新しい培養土を買ってくるところから始まる。培養土は腐葉土や肥料をあらかじめ配合し、袋から出せばすぐ植えられるようにした土だ。栄養も入っているので、1年目は誰でもそれなりに育つ。問題は2年目である。
「新品の培養土なら調子がよかったのに、翌年その土を使い回すとうまく育たない。ここが最初のつまずきポイントです。かといって従来のやり方で土を再生しようとすると、ふるいにかけて残った植物の根っこを取り除き、太陽熱で消毒し、市販の再生材を混ぜて……と、完了まで1か月ほどかかります。特に夏場は重労働。1年目は調子がよくても、2年目でつまずいて辞めてしまう人は多いと思います」
1年使った土は、配合されていた肥料分が植物に吸われて減る一方、前の植物の根や枯れ葉は残ったまま。栄養を足すだけでは元には戻らない。
では、古い土を捨てて買い直せばいいかというと、そう単純でもない。土は自治体によって処分ルールが異なり、家庭ごみとして回収しない自治体も少なくない。その場合、有料での処分やホームセンターの引き取りに頼ることになる。行き場を失った土が庭の隅に積み上がり、公園などへの不法投棄がニュースやSNSで取り上げられたこともある。育てるのは楽しいのに、土の後始末で行き詰まる——。多くの愛好家が突き当たる壁だ。
足りないのは栄養ではなく微生物
この壁を崩すのが「微生物資材」と呼ばれるジャンルだ。園芸売り場に並ぶ資材は大きく2つに分けられる。植物に栄養を与える「肥料」と、堆肥や石灰のように土そのものの状態を良くする「土壌改良資材」。微生物資材は後者の一種で、土の中の微生物の働きに的を絞った、ややニッチな存在にあたる。
カルスNC-Rは、創業50年を迎えたリサール酵産で創業者である飯川氏の祖父が開発した、もともとプロ農家向けのロングセラーだ。それがコロナ禍、飯川氏がYouTubeなどで「古い土の再生方法」として発信したところ大きな反響を呼び、ガーデニング層に一気に広がった。
「市販の培養土には、病原菌や雑草の種を殺すために殺菌・加熱処理されるものもあります。栄養は入っているし、水はけや水持ちといった土のフカフカ感もある。でも、微生物までいなくなってしまう。微生物こそが土を作り、根っこに栄養を効率よく運んでくれます。カルスNC-Rは病原菌を殺菌するわけではなく、いい菌を増やしてバランスを整えることで、病気にかかりにくい土にするというアプローチです」
使い方も従来の常識とは逆をいく。古い土に残った根や枯れ葉をふるいで取り除くのではなく、カルスNC-Rと一緒にそのまま混ぜ込む。微生物が分解を進め、残っていた根や葉を次の植物が吸える栄養に変えていくからだ。
「これまでの農業の常識は、完全に発酵が終わった堆肥を畑にまくことでした。カルスは有機物が明らかに混ざったままの、分解途中の状態で植え付けてしまう。プロの農家さんからも『本当にこれで植えていいの?』と心配されるくらい、今までの常識と真逆の発想なんです」
分解途中の有機物を土に入れると腐敗臭が気になりそうだが、分解が滞りなく進むぶん、嫌なにおいは出にくいという。うまく発酵した土は「森の土のような、いい発酵臭」になる。
1か月の土作業が最短1週間に。トマトを10アール24トン穫る農家も
ふるい分け、太陽熱消毒、再生材……と約1か月がかりだった土の再生は、カルスNC-Rなら「混ぜて待つだけ」で最短1週間に縮まる。畑では土が柔らかくなり、夏の除草作業が楽になったという声も届くそうだ。では、収穫量はどうか。
「大玉トマトなら、10アール(約1000平方メートル)当たり10トン穫れれば上出来といわれるところ、カルスを使っている農家さんには24トン穫る方もいらっしゃいました。キュウリなら1株100本で職人級といわれますが、200本という方もいる。家庭菜園でも、お客様のお子さんが夏休みの自由研究で、新品の培養土とカルスで再生した土を育ち比べたら、再生した土のほうがよく穫れておいしかった、という感想をいただきました」
一方で、弱点も率直に語ってくれた。数百円で買える肥料や堆肥に対し、微生物資材は数千円と5~10倍ほど高い。カルスNC-Rはその中でもさらに高価な部類だという。「それなら新しい培養土が買える、という声もいただきます」と飯川氏。それでも同社の売り上げは伸び続け、ユーザーは毎年右肩上がりで増えているそうだ。
ファンと共に達成したギネス世界記録
その熱量を象徴するのが、今年4月29日にギネス世界記録™として認定された「8時間に販売した土壌改良資材の最多数」だ。幕張メッセで開催されたガーデニングイベント「第8回花友フェスタ」でこの記録に挑戦。約1万2000人が来場したイベントで、同社のブースには約2000人が詰めかけた。
「カルスの愛用者は『カルサー』と呼ばれていて、ファンの熱量が本当にすごいんです。ギネスに挑戦するなんて、人生で一度あるかないかの特別な体験じゃないですか。それをお客様と一緒にやりたくて、半年前に挑戦を宣言しました。授与式では認定員の方から認定証をいただいて、社員や当日手伝ってくれたスタッフと壇上で記念写真を撮って。感動的な瞬間でした」
秋は植え替えのシーズン。夏の花や野菜を片づけたプランターの土を、今年は捨てずに生まれ変わらせてみてはどうだろう。
飯川隼斗/リサール酵産株式会社 代表取締役社長
1993年埼玉県生まれ。大学卒業後、金融機関で融資業務に従事し、2018年に家業のリサール酵産へ入社。YouTubeなどSNS発信を軸に、微生物土壌改良資材「カルスNC-R」を全国へ広めた。2025年8月、創業約50年の同社三代目として社長に就任。「土づくりは未来づくり」を掲げる
文/桜井カズキ
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