■連載/ヒット商品開発秘話
平成に一斉を風靡したヒット玩具が令和に蘇り、再びヒットしている。タカラトミーが2025年12月下旬に発売した『マイクロペット』のことで、第1弾の国内累計出荷数が10万個を突破。この7月に第2弾のGEN2が発売された。
α世代(2010年以降に生まれた世代)を中心としたデジタルネイティブ世代に向け、 “デジタルKAWAII”をコンセプトに開発された『マイクロペット』は、50種以上の多彩な機能を搭載した手のひらサイズの小さなペットロボット。おしゃべりしたり歌を歌ったりするほか、ちょこちょこ動き回ったりなどする。2台以上集めると『マイクロペット』同士でレースをしたり一緒にダンスをしたりすることができる。
開発はオーストラリアの玩具メーカー、Moose Toys社と共同で実施。日本のほか、海外でも販売されている。
もう一度市場に送り出す価値のあるブランド
初代の『マイクロペット』が発売されたのは2002年7月。その後2009年7月に、2代目に当たる『マイクロペット-i(アイ)』が誕生した。現在発売されている『マイクロペット』は3代目に当たる。
『マイクロペット』が復活することになった背景の1つに、共同開発することになったMoose Toys社が長年評価してくれていたいことがあった。Hitsビジネス本部ファッションエンターテインメント事業部企画開発課 上級主任の西山桐さんは次のように話す。
「共同開発することになったMoose Toys社が過去に開発した『マイクロペット』について、当時の最先端技術を搭載していたこと、コンセプトがユニークだったこと、手頃な価格でありながら価値の高い遊びができることを長年評価していただいており、もう一度市場に送り出す価値のあるブランドと認識してくれていました」
開発が企画されプロジェクトが立ち上がったのは2023年頃。当時、ペットロボットは大型のものが中心だったことから、手のひらサイズの小型ペットロボットは空白地帯であった。この空白地帯に最新技術を詰め込みつつ価格を抑えた小型ペットロボットを投入し、最新トレンドとして打ち出すことにした。
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独自の「マイクロペット語」で意思表示
デザインやコンセプト、ラインアップ構成は両社が持ち寄ったアイデアを元に検討を重ねて決定。タカラトミーは主に原型制作、全体の基本設計、LEDによる表情のバリエーション検討、Moose Toys社は主に細部のデザイン調整、仕上げ、パッケージやディスプレイボックスなどのアートワーク制作を担当した。
第1弾でつくることにしたのは世界各地で人気があるキャット、パピー(犬)、バニーの3種。コンセプトとした”デジタルKAWAII”に合わせ、過去のシリーズと異なりカラーはワントーンで統一することにした。
過去の『マイクロペット』と復活した『マイクロペット』の機能面での最大の違いは、表情が変わるところ。LEDの点灯パターンを変えることで、まばたきしたり眠ったりしているところを視覚的に表せるようになっている。
額にはマークがあり、色で何をしてほしいかがわかる。赤なら「おしゃべり」、青なら「トイレ」、緑なら「パワーチャージ」という意味だ。
マークはレベルの確認にも用いられる。レベルとは『マイクロペット』の成長度合いを示すもので、「おしゃべり」「トイレ」「パワーチャージ」のリクエストに適切に応じていくと上がっていく。レベルはレベル1(黄色)、レベル2(紫)、レベル3(オレンジ)、レベル4(水色)、レベル5(虹色)と5段階あり、どのレベルにあるかは底面のボタンを押すことで確認できる。
表面のフェイスカバーの下に各パーツの形にくり抜かれたプレートがあり、その後ろからLEDの光を当てることでカバーに表情や額のマークが投影されるようになっているが、「目や頬、口の形状や配置、光の色や光り方、表情の動きの見せ方と細部にわたってこだわったので、何度も試作と検証を重ねました」と西山さんは明かす。限られたサイズに必要なパーツを収めつつ『マイクロペット』らしいかわいらしさや感情表現を実現することは、簡単ではなかった。
また、独自の「マイクロペット語」を話すようにしたことで、音声表現の幅が過去の『マイクロペット』より広がった。「マイクロペット語」は「TALKO!」「POO POO!」「CHARGO!」 など日本語とも英語ともつかない両者の中間のような言葉で、聞き慣れてくると何をしてほしいのかが理解できるようになるという。
「マイクロペット語」は、海外展開する上で必須だった。西山さんは次のように話す。
「ペットとしてのかわいらしさを持ちつつ、リクエストがより多くの人に伝わりやすいようにするためにつくったのが、マイクロペット語です。同じ仕様のものを世界各地で販売するため日本語と英語の中間に位置しそうな独自の言語をつくり話してもらうことにしました」
つくった動画ののべ再生数が6000万回を突破
市場がグローバルなこともあり、認知拡大の一環で世界中にユーザーがいるオンラインゲーミングプラットフォームの『Roblox』を活用した。『マイクロペット』のバーチャル空間を『Roblox』内につくり、発売前の2025年12月中旬に公開。プレーヤーはアバターを操作し、ワールド内に隠れている40種以上のさまざまなデザインのマイクロペットを探し、見つけたものを連れて歩くことができる。
西山さんは『Roblox』活用の経緯を次のように明かす。
「対象ユーザーのα世代にとって身近なプラットフォームが『Roblox』でした。『マイクロペット』との相性が良さそうなこと、当社では以前から『ベイブレード』で活用しており知見があったことが活用の決め手になりました」
プロモーションではこのほか、ショート動画を20本近くつくってSNSにアップし、デジタル広告も配信。制作した関連動画の再生数はのべ6000万回を超えた。デジタルメディアの活用以外にもテレビCMの放映、ウェブ広告の出稿、店頭でのキャンペーン、雑誌とのタイアップ企画、体験会も実施しており、幅広い施策を組み合わせることでターゲット層の拡大と継続的な話題づくりを狙った。
「第1弾は多くのお客様に手に取っていただきたい、という思いがあったので、認知拡大のためデジタルメディアの施策には力を入れました」
このように明かすのは、Hitsビジネス本部ファッションエンターテインメント事業部マーケティング課 主任の中山日菜乃さん。これまでデジタルメディアを主軸にしてプロモーションを進めた時でも、つくったショート動画は7本程度。発売前の盛り上げにショート動画を積極的に活用した。
『マイクロペット』は対象年齢を4才以上としているが、購入者の年齢層が幅広いという。中山さんは次のように話す。
「一番多いのが7~12才で全体の約65%を占めていますが、30~50代が14%、60才以上が13%となっています。7~12才に一番購入してもらいたかったものの、大人にも手に取っていただきたくパッケージを洗練されたものにするなどしたので、子どもから大人まで幅広い層に購入していただけることができました」
かわいさと新しさで受け入れられる、と採用に至ったウーパールーパー
発売されたばかりの第2弾の開発は、第1弾の開発中から始まった。西山さんは「熱が冷め切らない2026年の夏商戦の前に発売したいと考えていました」と話す。
第2弾はバニーに代わりウーパールーパーとベア(熊)を追加。ベアはスペシャルエディションで、デザインや質感が異なる3パターン(キャンディ、テック、グラフィティ)を用意した。また、パピーは第1弾とは耳や顔のデザイン、カラーが異なっている。
ウーパールーパーは、Moose Toys社から強い要望があったもの。西山さんは最初、ウーパールーパーは「マイクロペットのラインアップとしてはどうなんだろう?」と疑問に思っていたが、実際に形にしてみたところ、カワイイものができたという。「モチーフの認知度とは関係なく、かわいさと新しさで受け入れられるのでは、という理由から採用に至りました」と明かす。
スペシャルエディションのベアは、第1弾の時にも検討されていた。ベアの形や表情が『マイクロペット』のデザインに合いそうだったこと、現実では大きすぎてペットにできないものを手のひらの上でかわいがることができることから採用された。
取材からわかった『マイクロペット』のヒット要因3
1.コンパクトなサイズに機能を凝視
手のひらの上に乗るコンパクトサイズでありながら、独自の言葉を話したり表情を変えたりするなど多機能。時代に合った洗練されたデザインを採用したことや、多機能でありながらメーカー希望小売価格2498円と価格を抑えたこともプラスに作用した。
2.お世話の疑似体験
おしゃべりやトイレなどのリクエストに応えていくが、これはペットを飼った時の世話やコミュニケーションと同じこと。ペットのお世話が疑似体験でき、動物好きの心を掴んだ。
3.幅広い層に認知された
発売前からショート動画を配信したりするなど認知拡大に積極に取り組んだ。デジタルメディアだけではなく多種多様なプロモーション活動を組み合わせたことで、子どもから大人まで幅広い層に認知してもらえた。
発売が発表された時、SNSでは「これ知ってる」「懐かしい」「今はこんなデザインなんだ」といった反応があったほか、社内で展示した時に西山さんが新入社員から「マイクロペット知ってます」と声をかけられたことがあった。「思っていたより覚えていてくれた人が多かった印象があります」と西山さんは明かす。
『マイクロペット』は子どもが楽しめるだけではなく、大人に癒しをもたらし懐かしさを呼び起こした。復活は今のところ、うまくいっている。
製品情報
https://www.takaratomy.co.jp/products/micropets/
取材・文/大沢裕司
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