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社長が嫌われている会社ほどオフィスが片づいている?オフィス環境と組織力の意外な相関関係

2026.08.21

日本の職場において、「アットホームで社員から慕われている社長の会社は、オフィスも綺麗に整っているはずだ」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。日頃からコミュニケーションが活発で、一見すると風通しの良い組織ほど、チームワークが片付けにも良い影響を与えていると考えがちです。しかし、企業のオフィス環境と組織の関係を見ていくと、この思い込みとは真逆の、非常に興味深い現実が浮かび上がってきます。

実は、「好かれている社長」の会社ほど、なぜかオフィスの片付けが進まないというケースが少なくないのです。本来、業務効率や情報共有のバロメーターとなるべきオフィスの美化が、経営者と社員の「距離の近さ」ゆえの甘えによって遮られているとすれば、それは組織にとって大きな損失を生む「壁」になっていると言えます。

私は「オンライン片付け」の専門家として、数多くの企業のオフィス環境整理に携わってきました。この経験から、オフィスの「モノの散らかり具合」という身近なテーマを通じて、組織のコミュニケーションや団結力を紐解く、上司が知っておくべき意外な新常識を解説します。

なぜ「好かれている社長」の会社では片付けが進まないのか?

「社員から慕われている、アットホームな会社」と聞くと、オフィスも綺麗に整っているイメージがありませんか?しかし実際には、「好かれている社長」の会社ほど、なぜか片付けが進まない、というケースがすごく多いのです。 その心理的な背景には、社長と社員の「近すぎる距離感」があります。こうした会社は、同じオフィスに20~30名くらいで働いている規模のことが多く、日頃から社長と顔を合わせる機会が多いのが特徴です。好かれている社長は、いつも社員とコミュニケーションを取ろうとしていて、嫌われないように気を遣っています。すると社員側も、社長の人柄をよくわかっているからこそ、社長の気持ちを尊重しすぎてしまう傾向があるのです。

たとえば、オフィスに仕事とは関係のない社長の私物がいっぱい置いてあって、少し邪魔だな、という時。社員は「また増えたな」と思っても、「まあいいか」と温かく見守ってしまい、直接言えなかったりします。その結果、社長のモノをどかすのを遠慮してしまい、書類をベストな場所にしまえなくなる……なんてことが実際に起きているのです。

また、優しい社長は「明確な注意や指示」を無意識に避けてしまうこともあります。「この部屋、こんな風に使いたいんだよね~」と希望のスタイルで伝えてしまうため、社長は指示したつもりでも、社員側は「指示された」と認識していないことが多いのです。

こうして社長が乱雑さを注意できない環境が続くと、社員の基準も「片付いていなくて良いんだ」「これくらいでいいや」と下がってしまいます。お客様からどう見えるか、自分たちの業務効率はどうなのか、といった視点まで低くなってしまうのは、少しもったいないですよね。

「社長に聞けばいい」という甘えが自走する組織を阻害する

社長と社員の仲が良いのは素敵なことですが、それが時には「甘え」に変わってしまうこともあります。社員が社長に気を遣うあまり、本来自分たちで決めるべきことまで、「これ、どうしましょうか?」と社長に伺いを立てるようになってしまうのです。 片付けの最適解よりも「社長のお気持ち」を優先してしまい、社長が判断しなくても良いことまで社長を頼ってしまいます。こうなると、当然ながら片付けのスピードはガクッと落ちてしまいます。

何でも社長に聞いて解決できる環境は、裏を返せば「社長への依存度が高く、自分の頭で考えることを放棄している状態」とも言えます。現場のことや書類の動きを一番わかっているのは社員はずなのに、社長の判断が常に正しいとは言えない状況でも、判断を仰ぐようになってしまうのです。

しかも、これって社長にとっても大きなマイナスになります。本来なら、会社の未来のことや社外の問題解決に時間を使いたいのに、社員の質問に答える時間に忙殺されてしまうからです。社長が関わらなくてもいい「情報の片付け」にまで時間を使ってしまうのは、会社全体にとっても損失ですよね。

さらに、情報がルール化されず社長の記憶に頼っていると、毎回「忙しい社長の回答待ち」というタイムロスが生まれます。決断が遅れれば、結果として会社が動くスピードも遅くなってしまいます。 ここから抜け出して、自分たちで考えて動く「自走する組織」になるための第一歩は、ずばり「片付けの社内責任者を決める」ことです。そして、社長がその責任者に口出しせず、本当に「任せる」ことが大切です。片付け会議の場でも、社長は担当者の決定に口を出さず従うスタンスが必要です。社長の思いつきで、せっかくのプランを乱されることもよく起こりますからね。

「嫌われ社長」が生む、現場の強い結束とマニュアル化

では逆に、「社長がちょっと煙たがられている」「嫌われ役になっている」会社はどうでしょうか。実は、そういうオフィスの方がきれいに整頓されやすい、という面白い心理メカニズムがあるのです。 社員と距離がある社長の場合、社員は「片付いていないとまた怒られる」という気持ちからスタートします。 そして、社長がちょうどいい「敵」のような存在になるため、「いちいち報告するとうるさいから、自分たちでさっさと終わらせて文句を言わせないようにしよう!」という現場の結束力が生まれるのです。

その結果、社長に聞くことも少なくなり、社員同士でどんどん片付けを進めて結果を出すことができます。社員が片付けのセオリーを理解した瞬間に、「社長から注意されたくない」という対抗意識も手伝って、社長の目が届かないうちに自分たちが思う片付けを実行し、みるみるうちにきれいになっていくわけです。

片付けをきっかけに、部署を越えた「聞きにくいこと」を会話する

「たかが片付け」と思うかもしれませんが、全社共通の「片付け」という課題を行う際の詰まりは、普段の仕事上でも同じように起こっているはずです。他部署が今どういう状況なのか、社長はどういうゴールを描いているのか、そういった「社内の風通しの悪さ」が、片付けには如実に表れてきます。 だからこそ、全社的な片付けは、部署間の壁を取り払ってコミュニケーションを活発にする「着火剤」になるのです。

片付けを進める中では、「これ、他部署のモノだけどどうする?」と、どうしても他部署に聞かないと解決できないことが出てきます。普段なら避けてしまうようなコミュニケーションも、片付けを理由に「仕方なく」聞くことで、会話のきっかけと経験が生まれます。これを経験すると、相手も尊重されたと感じるため、より良いコミュニケーションが生まれ、その後の仕事の話もずっとしやすくなるのです。

また、片付けの話題は仕事と違って利害関係があまり発生しません。片付けはあらゆる人にとっての共通テーマですし、「これ、どう片付けたいですか?」と相手の希望を聞く行為は、誰も責められることのない良い会話になります。だからこそ、「本当はこうしたいんですよね」という本音もポロリと出やすくなるわけです。

実際に、ある歯科医院さんでの成功事例があります。複数の診療ブースの片付けをテンプレート化したことで、歯科医師が治療の道具を探す行為がなくなり、治療時間の効率化やストレス軽減につながりました。さらに、一緒に片付け作業をした衛生士さんや事務の方とのつながりも強くなったそうです。片付けを通して責任範囲を明確に決めたことで、「誰かがやるでしょう」という甘えがなくなり、当事者意識がグッと上がったのです。

最後に

組織改善に悩むリーダーの皆さまへ。 「任せている」と言いつつ、実は細かく口出しをしてしまっていませんか?

片付けは、「指示」ではなく、誰でもできる「仕組み」を作ることがゴールです。片付けで失敗しても、会社に大きな損害が出ることはありません。だからこそ、この片付けでたくさんの失敗を経験してもらいながら、仕組み化を体感していただくのがおすすめです。そうすれば、自然と片付けを通して仕組み化のやり方が身につき、仕事にも活かせるようになるはずです。

私自身も、片付けスクールの運営は講師たちにほぼお任せしています。それは彼女たちが「片付けできる人」だからです。ゴールだけ伝えておけば、効率的な仕組みを自分で考え、「1」を伝えると「10」を作り出す作業を自然と実行してくれます。これこそ、リーダーが理想とする姿ではないでしょうか。 ぜひ、「片付け」をきっかけに、社員が自分たちで考えて動ける「自走する組織」への変革を目指してみてくださいね。

文/伊藤かすみ
オンライン片付け専門家。株式会社FlowOrganize代表取締役。広島県福山市出身で、現在は東京と広島のデュアルライフを送る。住宅会社で20年間インテリアコーディネーターとして勤務した後、資格取得をきっかけに片付けの仕事をスタート。セミナーやサポートの受講者数は延べ1千名。メールマガジンの読者は2万4千人を超える。片付け事業の売り上げは年商2億円。 著書に『一生散らからない!飾るだけ片付け術 』『自然と家族が整理しはじめる、魔法の片付け しつもん術』(ぱる出版)がある。
公式ホームページ:FlowOrganize

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