「私はI型なので雑談が苦手です」「F型なので数字より感情を優先したいです」。MBTI診断の結果を理由に、任された業務や役割から距離を置こうとする部下に、頭を悩ませていませんか。性格特性と、役割として求められる結果は本来別のものです。しかし現場では、診断結果が”評価から逃げる言い訳”にすり替わるケースが後を絶ちません。管理職が取るべき対応を、識学の視点から解説します。
職場に広がる「MBTI言い訳」
近年、MBTI診断は特に20代・30代の若手世代を中心に、自己紹介や日常会話の中で当たり前に使われるツールとなりました。「私はINFPだから」「ENTJタイプなので」といった会話は、もはや特別なものではなく、共通言語として定着しています。
しかし、職場ではこの診断結果が思わぬ形で使われ始めています。「私はI型(内向型)なので、雑談や飲み会が苦手です」「F型(感情型)なので、数字よりも人の気持ちを大切にしたいです」といった発言が、本来取り組むべき業務や役割を回避するための”正当な理由”として使われるケースが増えているのです。
管理職からすれば、これは非常に対応が難しい問題です。性格の話を持ち出されると、「それを否定するのはハラスメントになるのでは」「多様性を尊重すべきでは」という迷いが生まれ、結果として指導や指摘をためらってしまいます。この”言い訳”を放置し続けることが、組織にどのような影響を及ぼすのかを、次章から見ていきましょう。
なぜ診断結果が言い訳に使われるのか
そもそもなぜ、性格診断の結果が「できない理由」として使われやすいのでしょうか。理由は大きく2つ考えられます。
第一に、MBTIという診断結果は、あくまで本人の”傾向”や”好み”を表すものであり、能力や成果を保証するものでも制限するものでもありません。しかし、多くの人はこの診断結果を”生まれ持った変えられない特性”として捉えてしまい、「タイプ的に無理」という結論に飛びついてしまいます。
第二に、性格や個性の話は、指摘する側にとって心理的なハードルが高いという事情があります。業務の進め方やスキル不足を指摘するのとは異なり、「あなたの性格が原因で仕事ができていない」という指摘は、人格否定と受け取られかねないという恐れから、上司が踏み込みにくくなるのです。
この結果、部下は「性格を理由にすれば指摘されずに済む」という学習をしてしまい、同じような回避行動を繰り返すようになります。これは本人の成長機会を奪うだけでなく、組織全体の評価基準を曖昧にしてしまう深刻なリスクです。
識学の視点:特性と役割は別物
識学では、組織における個人の”性格”や”特性”と、役割として求められる”結果”を明確に切り離して考えます。
雑談が得意か苦手かというのは、あくまでその人が持つ傾向の一つに過ぎません。一方で、「顧客との関係構築のために必要なコミュニケーションを取る」ことは、営業職として求められる”結果”であり、性格の好き嫌いとは本来別の話です。同様に、「人の気持ちを大切にしたい」という価値観を持っていることと、業務上は数字に基づいて意思決定を行うことは、矛盾するものではありません。感情を大切にする姿勢を保ちながらも、判断の場面では数字という共通の基準に基づいて動く。それは性格の否定ではなく、役割上の行動の話です。
重要なのは、上司が部下の性格そのものを変えようとするのではなく、役割として何を達成すべきかという”結果”を明確に伝え、その達成状況で評価するという姿勢です。性格を理由にした説明を受け入れてしまうと、評価基準が人によって曖昧になり、「言ったもの勝ち」の状態が組織に蔓延してしまいます。
管理職が性格の話に踏み込む必要はありません。求められているのは、あくまで「役割としてどのような結果を出すべきか」を明確にし、それができているかどうかで評価するという、シンプルかつ一貫した姿勢です。
上司がとるべき結果本位の対応
では、実際に「MBTI的に向いてないので」という発言が出てきたとき、上司はどう対応すべきでしょうか。
まず大切なのは、性格の是非について議論しないことです。「I型だから雑談が苦手」という話に対して、「そんなことはない」「気にしすぎだ」と性格そのものを否定したり慰めたりする必要はありません。上司がすべきは、性格の話とは切り離して、「役割としてどのような結果を求めているか」を淡々と再提示することです。
例えば、「雑談が苦手かどうかは関係なく、顧客との信頼関係構築のために必要な行動を、いつまでにどの程度行うか」を具体的に伝え、その達成度で評価する。このように、性格を評価の免罪符にしない仕組みを、日頃から明確にしておくことが重要です。
また、こうした発言が出てくる背景には、そもそも役割や評価基準が曖昧なままになっているケースも少なくありません。「何をもって仕事ができていると判断するのか」があいまいなままだと、部下は性格を理由にした自己弁護に走りやすくなります。役割と結果責任を明確に設定することこそが、こうした言い訳を未然に防ぐ最も効果的な手段です。
まとめ
MBTI診断は、自己理解を深めるための一つのツールとして有効な側面を持っています。しかし、それが職場において「評価から逃れるための言い訳」として使われ始めると、組織の評価基準そのものが揺らぎ、正当に努力し結果を出している他のメンバーとの不公平感にもつながりかねません。
管理職が意識すべきは、部下の性格そのものに口を出すことではなく、役割として何を達成すべきかという”結果”を明確に示し、その達成状況で一貫して評価することです。性格の話に巻き込まれず、常に「役割」と「結果」を軸に部下と向き合う姿勢こそが、組織の評価基準を守り、部下自身の成長機会を守ることにつながります。
まずは自チームにおいて、役割と評価基準が明確になっているかどうかを、今一度見直してみてはいかがでしょうか。
文/識学コンサルタント 富山恵




DIME MAGAZINE













