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食品メーカーの役員がそば屋、営業マンがパン屋に!リスクを抑えて社長になる「個人M&A」成功の秘密

2026.07.31

個人が買い手となって事業を継承する〝個人M&A〟がトレンドだ。会社員が副業から始めて脱サラし、経営者となるケースも少なくない。ビジネスパーソンのキャリアへの考え方が大きく変化している中、副業や脱サラなどの選択肢のひとつとして個人M&Aが注目されている。

しかし、安定した道ばかりとは限らない。実際、脱サラ前提となればリスクが大きく、不安が大きいだろう。今回は、個人M&A+脱サラ成功者3名に、リスク対応の方法や成功の秘訣を伺った。

個人M&Aがトレンドにあがるワケ

従来、M&Aといえば企業間で行われるものだったが、昨今は個人が中小規模の事業を引き継ぐケースも生まれている。また会社員を続けながら副業としてM&Aによって事業を継承し、経営に携わるといった形態も珍しくなくなってきた。

その背景には、中小企業の経営者の高齢化によって深刻化する後継者不在がある。

個人M&A案件を取り扱う事業承継・M&A マッチングプラットフォームも人気を博しており、個人をサポートする動きが目立ってきた。例えば「TRANBI(トランビ)」や「BATONZ(バトンズ)」などがある。

TRANBIは最近、後継者不在の解決と、事業承継を通じた新たな挑戦を後押しする事業承継実践プログラム「継キャリQUEST」を開催している。

審査を経て選出された挑戦者が、案件探索から交渉、成約までメンターの伴走を受けながら事業承継に挑める。最終ピッチイベントでは、承継予定の事業の成長構想をプレゼンテーション。最終審査で選出されれば、総額500万円の承継支援金が提供される予定だ。

今後はさらに個人の動きが活発化すると考えられる。そうなれば、事業承継に関するメンタリングがより重要になってきそうだ。

またバトンズは、2026年6月より、ゼロからM&Aを学び専門家が伴走する「BATONZ M&Aコーチング」を開設した。経験ゼロから経営者を目指すことが可能だ。

現状の実態について、脱サラして個人M&Aに挑んだ3名の体験談から探ってみたい。

ケース1)建材メーカー営業マンがパン屋を継承

かつて建材メーカーで営業に従事していた小尾 豪氏は、2020年12月末に小さなパン屋の事業継承に踏み切った。会社だけに依存する働き方は難しくなることを見越し、個人M&Aに挑戦。

「ゼロイチで起業するよりも、自分が楽しめそうなことで、すでに経営が回っている事業をバリューアップしていくほうが自分に向いている」と考えたという。

「自分に覚悟をすえた上で案件を探したほうが、より広い範囲で自分に合ったいい案件を探すことができる」と判断し、成約前に会社を辞めて法人を設立した上で進めた。

●リスク対策と工夫したこと

「脱サラによる個人M&Aは確かに大きな挑戦でしたが、〝リスクがあるからやらない〟のではなく、〝どうすればリスクを減らせるか〟を考えました。

財務面だけでなく、顧客や従業員、地域での評判までできる限り確認し、自分が改善できる余地がありそうな事業を選びました。

勢いだけではなく準備こそが最大のリスク対策。〝やらなかった後悔〟こそ、一生引きずってしまうと思い、決心しました」

●脱サラから個人M&Aで成功するための秘訣

「個人M&Aで失敗しないために大切なのは〝買うこと〟を目的にしないこと。事業を引き継いだ後に、自分ならどのように価値を高められるかを具体的にいくつ描けるかが重要です。自分の強みを生かせる案件を見極めることが大切だと思います」(小尾氏)

ケース2)ベンチャー企業の経営コンサルタントがゲストハウスを継承

ベンチャー企業で新規事業開発や経営戦略のコンサルタントとして働いていたA氏。地元の長野に帰省するたびに後継者不足で閉業していく光景を目の当たりにし、「M&Aで後継者不足に悩む事業を引き継ぐ」ことを選択した。

地元仲間と、複数のM&Aプラットフォームで長野県内の譲渡案件を探した後、長野駅から徒歩5分のゲストハウスに出会う。現在は「Local Knot Backpackers」として、仲間とともに運営中だ。

●リスク対策と工夫したこと

「〝地元が静かに失われていくのを傍観するだけの人間にはなりたくない〟という想いが一番大きい原動力でした。地域の事業を作り、運営する側に回ると決意。リスクを減らすために工夫したことは大きく3つです」

1.1人ではなく幼馴染とともに承継した
2.約1年かけて焦らずに案件を探した
3.前オーナーから学び切ることを大切にした

「宿泊業は未経験でしたので、承継の前後は自分たちで徹底的に調べ、疑問点を前オーナーに相談しながら、運営のノウハウやお客様との関係を丁寧に引き継ぎました」

●脱サラから個人M&Aで成功するための秘訣

1.〝未経験だから無理だ〟と諦めない

「前オーナーは宿泊業経験者への譲渡を望んでいましたが、『地域のためにやりたい』という熱意が伝わったのだと思います」(A氏)

2.焦らず、でも動きながら探すこと

「実際に問い合わせ、人に会い続けること。小さな行動から目利きの力がつき、迷わず動けるようになります」(A氏)

3.事業を「買う」のではなく「引き継ぎ、より良い形で未来に繋げる」という姿勢

「前オーナーが育ててきたお客様との関係や地域とのつながりを尊重して引き継ぐ姿勢があれば、前オーナーも地域の方々も味方になってくれます」(A氏)

ケース3)食品メーカー役員がそば屋を継承

食品メーカーに約40年勤め、最終的には本社役員を務めた髙橋氏。長年、取引先の問屋や飲食店と接する中、「いつかは自分の店でエンドユーザーに直接サービスを届けたい」という思いがあった。

知人が脱サラして開いたそば屋が繁盛店になっていく様子を目の当たりにし、感極まって知人に修行を申し込んだ。1年弱修行した後、M&Aプラットフォームで千葉県成田市のそば屋「芭蕉庵」と出会い、事業を譲り受けて「なごみ奈」として開店した。

●リスク対策と工夫したこと

「会社員という安定した立場を手放す決断なので、当然、迷いはありました。ただそば屋は山奥などの辺鄙な立地でも行列店ができることがあり、美味しいそばを提供できれば繁盛店にできると考えていました。

リスクを抑えるために、ゼロからの独立ではなくM&Aを選んだことは大きいです。また厨房は全面改装しつつ、建物や駐車場など活かせる部分は極力そのまま利用し、初期投資を必要な範囲に抑えました」(髙橋氏)

●脱サラから個人M&Aで成功するための秘訣

「成功の秘訣はいくつかありますが、M&Aの強みを最大限活かすことが大きいと思います。当店も、開店当初は来店客の半数が前店の常連様で、広告費ゼロでも開店直後から客足が絶えませんでした。

立地や顧客基盤を引き継げるのはM&Aならではの大きなアドバンテージです。店名や看板は前オーナー様の助言もあり、思い切って刷新しました。過去にとらわれず、自分らしい店づくりをする覚悟も大切だと思います」(髙橋氏)

3者の事例はいずれも当人の熱意や決意が強固であることが共通していた。また事業継承ならではの既存客などを活用できることを強みとして、前に進んでいくことが重要だと学べた。

【取材協力】
TRANBI
BATONZ

取材・文/石原亜香利

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Web業界からライターに転身し独立。メディアのコラム記事執筆や、Webの知識を活かしたSEOライティングを通じ、IT、ビジネスからライフスタイル、グルメまでわかりやすく面白く役立つ情報を読者視点で伝えることを心がけている。

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