2026年夏、深夜発・翌朝到着の行程をとる「夜行列車」が各社から続々と発表されました。JR東海による「東海道ルミエールエクスプレス」やJR東日本の新型夜行特急「ルナ・アズール」など、縮小傾向にあった夜行列車がなぜ突然増加の動きを見せているのか。2026〜2027年の最新動向を解説します。
寝台がすべてじゃない、夜行列車のいま
夜行列車と聞くと、寝台に横になって眠る昔の「ブルートレイン」のようなイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。しかし2026年現在、様相は大きく変わりつつあります。
寝台を使わず、座席や個室のまま夜を明かす新しいスタイルの夜行列車が、JR各社から相次いで登場しているのです。
【最新動向】進化する夜行列車、各社の動き
JR東海「東海道ルミエールエクスプレス」──東海道新幹線初の夜行列車
JR東海は、東海道新幹線で初となる“夜出発・翌朝到着”の特別列車「東海道ルミエールエクスプレス」を、2026年8月8日(土)夜から翌9日(日)朝にかけて運行すると発表しました。乗車駅は東京・品川・新横浜、降車駅は京都・新大阪です。行程は以下の通りです。
| 日程 | 駅 | 時刻 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 8月8日(土) | 東京 | 22:00発 | 乗車駅 |
| 8月8日(土) | 品川 | 22:07発 | 乗車駅(降車不可) |
| 8月8日(土) | 新横浜 | 22:18発 | 乗車駅(降車不可) |
| 8月9日(日) | 岐阜羽島 | 0:00頃着 | 約6時間停車、到着時に30分程度ドア開放 |
| 8月9日(日) | 岐阜羽島 | 6:00頃発 | 発車前に30分程度ドア開放 |
| 8月9日(日) | 京都 | 6:44着 | 降車駅(乗車不可) |
| 8月9日(日) | 新大阪 | 6:59着 | 降車駅 |
旅行代金は、東京発・新大阪着の普通車指定席を大人1名で利用する場合で1万5000円(税込)です。専用旅行商品として、2026年7月3日(金)14時からJR東海ツアーズの申込みサイトで販売が開始されました。
座席は全席窓側という設計で、車内の照明は防犯上の理由から常時点灯となります。デッキやトイレを含め車内は全面禁煙で、グリーン車でも「東海道新幹線モバイルオーダーサービス」は利用できないなど、通常の新幹線とは異なる運用ルールが設けられています。
岐阜羽島駅での停車中は前後30分ずつドアが開放され、改札内の自動販売機と喫煙所のみ利用できますが、売店や車内販売は営業しないため、飲み物などは乗車前に準備しておくと安心です。
なお、列車名の「ルミエール」はフランス語で“光”を意味する言葉です。翌朝から目的地での時間を有効に使えるという特別列車の特徴を、「朝の光」や「新しい一日の始まり」をイメージさせる言葉で表現したといいます。
KS
それが、「24時から6時までの間は駅に停車する」という逆転の発想で夜行運転が可能になったのです。
一ファンとして楽しみに感じると同時に、この企画は「そうまでして夜行運転の可能性を探っている」ことの裏付けだとも感じます。
OTや宿不足といった問題を解決する一助となるかもしれません。
JR西日本「WEST EXPRESS 銀河」──高いデザイン性で人気の列車
JR西日本ではすでに座席タイプが主体の夜行列車「WEST EXPRESS 銀河」が運行中です。京都と山陰・山陽方面を結び、切符も寝台ではなく“座席”扱いのため、比較的リーズナブルな価格で夜行列車の旅を楽しめます。
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「気軽に鉄道の旅を楽しめる列車」を目指して作られており、そのため切符の価格設定も寝台ではなくお手頃な普通車/グリーン車となっています。
車両は1編成のみで時期によって運行される地域も変わるため、定期運行される輸送手段というよりは観光列車として楽しむものだといえます。
JR東日本「ルナ・アズール」──2027年度デビュー予定のグリーン個室夜行
JR東日本は2026年6月9日、夜行運転に対応する新たな特急列車の名称を「ルナ・アズール(Luna Azul)」に決定したと発表しました(※)。スペイン語で“青い月”を意味する名称です。常磐線特急で使われるE657系を改造した車両で、2027年度初めに運行を開始する予定です。
座席は全席グリーン車の個室タイプで、1〜4名用の個室はフルフラットにでき、横になって過ごせます。春〜秋は品川~青森間を夜行で(週2往復)、冬は品川~長野原草津口間を昼行で(週6往復)運行する計画です。
KS
行程も15時間程度と長く、本格的な夜行列車の旅を楽しむのに最適でしょう。
【鉄道好き編集部員の見解】なぜ「寝台」ではなく「座席・個室」なのか
かつて夜行列車の主役だった寝台列車で、現在定期運行されているのはサンライズ瀬戸・出雲のみとなっています。寝台は座席よりも広いスペースと設備投資を必要とし、車両は昼間ほとんど稼働しないため、運行コストが重くのしかかります。
これに対し座席タイプは、既存の特急車両を転用しやすく、初期投資を抑えられるのが強みです。実際、東海道ルミエールエクスプレスの価格は、繁忙期の指定席特急料金にわずか80円程度を上乗せした水準に収まっています。1泊分の宿泊費が浮くと考えれば、破格な設定ともいえるでしょう。
夜行列車が増えている背景
ここ1〜2年で発表された夜行列車関連の取り組みは、例年と比べても明らかに数が多くなっています。宿泊費の高騰、インバウンド観光客の増加、そして「移動そのものを楽しむ」という価値観の広がりが、各社を夜行列車の再検討へと向かわせていると考えられます。
KS
これは鉄道各社がかつてない熱量で夜行列車の可能性をさぐっていることの証左でしょう。
しかし、現在のところ毎日夜行運転を行っている列車はやはり「サンライズ」のみであり、発表されている臨時便もほとんどは催行日が1,2日に絞られています。
本当の意味で夜行列車が「復活」するかは、これから運行される各列車の盛り上がり次第だといえそうです。
【一覧表】話題の寝台・夜行列車まとめ
最後に、現在運行中・話題の寝台列車と夜行列車を一覧で整理します。
現在運行中・話題の夜行列車を一覧で整理します。広義の夜行列車として、TWILIGHT EXPRESS 瑞風やTRAIN SUITE 四季島、ななつ星in九州といった豪華クルーズトレイン(寝台個室タイプ)も含めています。
※2026年7月現在
| 列車名 | 運行区間 | タイプ | 料金目安 | 運行状況 |
|---|---|---|---|---|
| サンライズ瀬戸・出雲 | 東京~高松/出雲市 | 寝台 | 16,150円~29,600円 | 定期運行(唯一の定期寝台特急) |
| WEST EXPRESS 銀河 | 京都~山陰・山陽方面 | 座席主体(一部個室) | 8,670円(京都~新宮) | 週4日運行(26年夏、昼行と夜行の2日ずつ) |
| 東海道ルミエールエクスプレス | 東京・品川・新横浜~京都・新大阪 | 座席(全席窓側) | 15,000円(普通車指定席) | 2026年8月8日限定運行 |
| ルナ・アズール | 品川~青森(夜/週2往復)・品川~長野原草津口(冬季昼/週6往復) | グリーン個室(フルフラット可) | 新幹線グリーン車+α想定 | 2027年度初運行開始予定 |
| 地方私鉄の企画夜行(津軽鉄道など) | 各路線内で夜通し往復 | 座席(旧型客車) | ツアー価格 | 期間限定企画 |
| TWILIGHT EXPRESS 瑞風 | 京阪神~山陰・山陽エリア(周遊) | クルーズトレイン(寝台個室) | 1名あたり数十万円台〜 | 定期運行 |
| TRAIN SUITE 四季島 | 上野発着・東日本エリア(周遊) | クルーズトレイン(寝台個室) | 1名あたり32万円台〜 | 定期運行(季節ごとに募集) |
| ななつ星 in 九州 | 博多発着・九州各地(周遊) | クルーズトレイン(寝台個室) | 1名あたり70万円台〜 | 定期運行(抽選制) |
KS
個人的には「新幹線で夜を明かす」という他にない経験をしてみたいため、今回は完売となっていますがまた機会があれば「ルミエールエクスプレス」には乗車してみたいですね。
乗る前に知っておきたい!夜行列車を乗り切る持ち物やポイント
睡眠グッズは必須装備
照明が常時点灯する列車もあるため、アイマスクは必需品です。保線作業の音などが気になる場合は耳栓も用意しておきましょう。
また、長時間同じ靴で過ごすと蒸れやすくなります。使い捨てスリッパなどを持参すると快適に過ごせます。
車内で買えるとは限らない──飲食物は事前準備を
列車によっては車内販売がなく、停車駅の売店も深夜は営業していない場合があります。飲み物や軽食は乗車前に用意しておきましょう。
充電・キャッシュレス周りも要チェック
長時間の乗車ではスマホの充電環境も気になるところです。新幹線のコンセント事情については別記事「東海道新幹線 コンセント」も参考にしてください。また、きっぷの購入や決済まわりでは、クレジットカードでの支払いに対応しているかも事前に確認しておきましょう。
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予約・キャンセルのタイミングに注意
話題性の高い列車ほど発売直後に予約が埋まりやすくなります。販売開始日時とキャンセル規定は事前に確認しておくと安心です。
関連記事:新幹線のネット予約なら発車直前でも払い戻し手数料が安いって知ってた?
夜行列車のリアルな乗車事情
移動と宿泊を一度に済ませられるためコストパフォーマンスが高く、翌朝には目的地に到着しているため旅行先での滞在時間を最大限に活用でき、そして何よりも非日常感のある体験そのものが大きな魅力になる夜行列車。
しかしそうはいってもリクライニングが効こうが寝台として横になろうが、列車は列車です。走行中は鉄路からの振動や音を感じますし、カーブに差し掛かれば車体は揺れます。
このあたりをどう感じるかは夜行バスと同じく各人に依るところだとは思いますが、確実に睡眠を取りたい場合はやはり宿泊施設を利用すべきでしょう。
「夜行列車に乗る」ことへ重きを置ききれるTPOを作り上げることが何よりの必需品だともいえるかもしれません。
KS
こう書くと当たり前のことのように感じますが、実際に利用した友人・知人の声としてこういった意見は少なくありません。
良くも悪くも「夜行列車に乗る」という割り切りが夜行列車を楽しむ第一歩だと私は考えます。
そして最もよく聞く夜行列車の落とし穴が「楽しみすぎて眠れなかった」というものです。
かくいう私も初めての乗車時は夜中の3時頃まで眠りにつけず、シングルツインの上段から星空を眺めて過ごしていました。68分も遅延してくれたおかげでひとまとまりの睡眠をとることはできましたが、初めて乗る方は翌日以降に予定を詰め込みすぎない方が無難でしょう。
夜行列車はどう進化するか
寝台からコストを抑えた座席・個室スタイルへ──夜行列車は今、大きな転換期を迎えているのかもしれません。
今回のルミエールエクスプレスやルナ・アズールのような取り組みが定着すれば、JR各社が独自のアレンジで夜行列車企画を打ち出す流れが加速するかもしれません。移動そのものを楽しむ新しい旅のスタイルとして、夜行列車の今後の広がりに注目したいところです。
文/轡田緒早




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