2003年にサントリーから発売された清涼飲料水『燃焼系アミノ式』。「燃焼系、燃焼系、アミノ式〜♪」というフレーズを聞けば、女子高生のバク転やサラリーマンがポールを腕だけで登る姿を思い浮かべる人も多いだろう。放送から20年以上が経った今も、多くの人の記憶に残り続けるこのCMソング。実は作詞・作曲を手がけたのは、ミュージシャンではなく電通のCMプランナー・本間絹子さんだった。なぜ、この歌はこれほどまで人々の記憶に残ったのか。そして歌の力をいかした新たなキャラクターIPプロジェクトとは。本間さん本人に「歌」の力について聞いた。
歌の道は、突然ひらけた。数々のCMソングを生み出した理由
サントリー『燃焼系アミノ式』のCMソングを作詞・作曲したのは、広告会社・電通でCMプランナーを務める本間絹子さんだ。『燃焼系アミノ式』をはじめ、一度聞けば思わず口ずさんでしまう歌が特徴の数々のCMを生み出してきた。
「今でこそ多くのCMソングを作っていますが、音楽を専門的に学んだ経験はありません。大学では心理学を専攻していましたし、電通に入社する際も、CMプランナーは第一希望の職種ではありませんでした。
きっかけは、とあるサプリメントのCMです。肌荒れに悩む女性向けの商品だったのですが、商品の訴求ポイントを女性の日常の思いと絡めた歌にしてプレゼンしたところ、とても評判が良く、そのままCMソングとして採用されました。
当時から意識していたのは、インパクトがありながら、きちんと商品をブランディングできるCM作りでした。印象が強すぎるCMは話題にはなっても、場合によっては商品のイメージを壊してしまうことがあります。そんな中、歌は商品の特徴を短い時間で、楽しく、覚えやすく伝えられる。インパクトとブランディングを両立できる手法として、CMソングはとても効果的と感じました。
私自身、電通に入る前は、テレビCMにはあまり注目していませんでした。だからこそ、そんな人でも楽しめるようなCMを作りたい。その思いが、CMソングを作り続ける原点になっています」

『燃焼系アミノ式』CMの誕生秘話
本間さんがCMソングを制作する際に大切にしているのは、企業が商品に込めた思いを歌に乗せることだ。
「『燃焼系アミノ式』で感じたのは、『世の中の人の日々の健康を守りたい』という企業の思いでした。その思いが自然と伝わるような歌詞やリズムを考えました」
CMでは、女子高生がバク転をしたり、サラリーマンが腕だけでポールを登ったりと、日常の中で人々が超人的な運動を披露する。衝撃的なな映像演出だが、これらはCGではなく実際に撮影されたものだ。
「健康になれば、体を動かすことはもっと楽しくなる。そんな企業の思いを、日常の中に非日常的な運動を取り入れることで表現しました。
CMソングも、ただ耳に残ることを目指したわけではありません。思わず口ずさんで、自分自身を元気づけられるような”パーソナルソング”になればいいなと思っていました。私の歌はみな、商品の特性と人の共感との交差点を歌詞にする、人間応援歌になっています」
企業の思いを読み取り、企画だけでなく歌詞やメロディーにまで落とし込む。本来、CMプランナーが作詞・作曲まで担うケースは珍しい。本間さんならではの制作スタイルだからこそ『燃焼系アミノ式』をはじめとする数々のCMソングを生み出すことができたのだろう
キャラクターIP『クエスちょんまげ』という新たな挑戦
本間さんは現在、CMの枠を超えた新たな挑戦にも取り組んでいる。
「クリエイティブの力で社会課題を解決したい」という思いから立ち上げたのが、電通発のキャラクターIP『クエスちょんまげ』だ。
プロジェクトのテーマは、「日本の魅力を再発見すること」と「自分で問いを生み出す力を育むこと」。その第一弾として、各都道府県の「なぜ?」をクイズ形式で学べる書籍を出版した。

「今回の書籍では、単に都道府県のトリビアを紹介するのではなく、その裏側にある『なぜ?』まで考えられる内容にしています。例えば、『北海道では、なんでコタツがある家が日本一少ないの?』という問題も紹介しています。北海道に住む子どもたちにとっては当たり前の光景かもしれませんが、改めて問いにすることで、自分たちの暮らしや地域の特徴を見つめ直すきっかけになると思うんです。
答えは、ぜひ動画を見て確かめてください」
>>>動画はこちらのページからご覧ください
身近な日常を「当たり前」で終わらせず、問いに変えることで、地域の文化や暮らしへの理解を深めていく。そこには、知識を一方的に教えるのではなく、子どもたち自身に疑問を持ってもらいたいという狙いがある。
「私が得意としてきたのは、歌に乗せてメッセージを届けることです。『クエスちょんまげ』でも、その強みを生かして歌とクイズを組み合わせ、子どもたちが楽しく学べるコンテンツを目指しています」
現在は子ども向けコンテンツとして展開しているが、本間さんの目標は、その枠にとどまらない。
「将来的には、子どもだけでなく大人にも親しまれるキャラクターへ育てていきたいと思っています」
記憶に残る映像と歌で商品の魅力を伝えてきた本間さんは今、その表現力を社会課題の解決へと広げようとしている。心を動かし、行動を生むその力は、CMの枠を超え、新たなコミュニケーションの可能性を切り拓こうとしている。
取材・文/峯亮佑 撮影/干川修




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