7~8月に退職の意思を固める社員は少なくありません。その背景には、「何を基準に評価されているのかわからない」という声があります。こうした評価への不満が募り、離職につながることもあるのではないでしょうか。本記事では、夏の面談で「本音」を探ることが逆効果になる理由を識学理論から解説します。そして、優秀な社員が「この会社で頑張ろう」と思える環境づくりのため、上司が今すぐ取り組むべき具体策を紹介します。
1. 「誤った優しさ」が招くぬるま湯組織と、優秀な社員が去る本当の理由
「失敗しても叱らず励ます」「手厚く育てる」といった優しい対応が、実は優秀な社員の離職を引き起こしています。失敗を咎められない「ぬるま湯」環境は一見働きやすい職場ですが、真っ先に限界を感じて去っていくのは「成長意欲のある優秀な人」です。彼らは「このままでは他社で通用しなくなる」という危機感を抱き、自分の市場価値を守るために退職を選びます。結果として、ぬるま湯組織には変化を嫌う成長意欲の低い人材だけが残ることになり、企業としての競争力を急速に失うリスクを抱えることになります。
2. 部下を伸ばす「本当の優しさ」とは:成長のために必要な「負荷」の正体
社員に対する本当の優しさとは、甘やかすことではなく、「未来の成長」のために「適切な負荷」を与えることです。成長には、パワハラや長時間労働ではない「健全なストレス(負荷)」が不可欠です。識学では、「成長」を「出来なかったことが出来るようになること」と定義しています。つまり、本当の優しさとは、部下の不足を曖昧にせず、正しく認識させ、解決策を本人に考えさせることです。上司が必要以上に励ましたり先回りして手助けしたりすることは、部下の思考機会を奪い、成長のチャンスを潰す行為になります。
3. 「成長を諦めている社員」の心理:モチベーションが湧き出るメカニズム
「今の社員は成長を望んでいない」というのは誤解です。スマホゲームで難しいステージをクリアしたときに喜びを感じるように、成長を実感できれば誰でも意欲は湧きます。現場に「成長を諦めている人」がいるのは、個人の資質ではなく以下のような環境が原因です。
・会社や上司から期待されていない
・成長を実感できる成功体験がない
・成長しても評価や報酬に連動しない
意欲を高めるには、達成感(内発的動機)と評価・報酬(物質的動機)の連動が必要です。今の能力に仕事を合わせる「適材適所」ではなく、組織の機能に個人を合わせる「適所適材」の視点で、成長負荷のある明確な目標を設定することが重要です。
4. なぜ夏の面談で「本音・困りごと」を聞くと、逆に上司の立場が失墜するのか
離職を防ごうと面談で「何か困っていることはない?」と聞くのは逆効果です。困りごとを募ると、仕事の本質とは無関係な不満や言い訳を引き出す原因になります。上司が要望をヒアリングする側に回ると、「部下が要求し、上司がそれに応える」という立場の逆転が起き、組織の規律が崩壊します。部下の甘えを容認せざるを得なくなり、部下の仕事に対する熱意や、やる気は低下します。「責任範囲を曖昧にして自由にやらせる方が伸びる」というのは錯覚です。上司と部下の正しいコミュニケーションとは、不満や言い訳を聞き出すことはなく、「仕事を達成するために必要な権限を確認し、与えること」です。また、面談でどれだけ本音を探っても、社員は「本当の退職理由」を上司には言いません。
5. 社員を「この会社で頑張ろう」と思わせる組織づくりと5つの行動原則
優秀な人材が去り、成長意欲の低い人ばかりが残った会社は衰退します。人が「この会社に残りたい」と思うのは、「自分も会社も共に成長している環境」にいるときです。健全な負荷と確かな成長感を提供することこそが、最大の離職防止策となります。お盆明けの離職を防ぎ、優秀な社員が「この会社で頑張ろう」と思える環境を作るため、管理職が今すぐ実践すべき5つの行動原則を紹介します。
(1) 社員の成長に期待する
部下の可能性を信じ、組織の役割として一段上のレベルへ到達することを強く期待し、態度で示し続ける。
(2) 成長を実感できる環境を用意する
不足を曖昧にせず正しく認識させ、課題クリア時には「何ができるようになったか」を明確にフィードバックする。
(3) 成長を期待した「適所適材」の目標を設定する
本人の今の実力ではなく、組織の成長に必要な役割ベースで負荷のある目標を設定し、評価基準を事前に明示する。
(4) 社員の成長に必要な「負荷」を与える
先回りの手助けや過度な励ましを厳禁とし、失敗時には「次はどうすれば達成できるか」を本人に徹底的に考えさせる。
(5) 社員の成長と共に会社を成長させる
個人の成長による成果を会社の業績向上へ直結させ、組織が前進する姿を見せることで、ここに留まるキャリアのメリットを実感させる。
「何か不満はない?」と部下に過度に配慮する面談はやめましょう。
本当の優しさとは、ぬるま湯を提供することではなく、彼らの未来のために「健全な負荷」と「明確な評価の根拠」を提示することです。
文/株式会社識学 乾一文




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