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日常の中で、他人の失敗や挫折を目にしたとき、心のどこかで一瞬だけ喜びを感じてしまうことはないでしょうか。そして、ふと我に返ったときに自己嫌悪に陥ってしまう…。
しかし、もしそう感じたとしても、自分を過度に責める必要はありません。その感情は多くの人が抱える心理的な反応の1つであり、人間性そのものを指すわけではないからです。
ここでは、つい抱いてしまうネガティブな感情の背景と、その感情との向き合い方について考えます。
そもそも、なぜ他人と比較してしまうのか
私たちは日々の生活の中で、他人と自分を無意識のうちに比較しています。ここでは、私たちがなぜ他人と自分を比べてしまうのか、その心理的な仕組みについて解説します。
■他人との対比は社会的な振る舞いのため
私たちは社会の中で生きている以上、他人との比較を完全に避けることは困難です。なぜなら、人間には自分の立ち位置を確認し、社会的な適応度を測ろうとする本能が備わっているからです。
特に相手が自分にとって重要な領域で優れていると感じる場合、自分自身の価値が相対的に低下したような錯覚に陥りやすくなります。このとき、自分を守ろうとする心理が働き、無意識に相手の転落を願います。
相手の転落を願う――、この言葉だけ聞くと、とても嫌なことのように感じるかもしれませんが、これは特別なことではなく、誰もが抱えうる自然な反応の1つです。
■自分の価値を維持しようとするため
他人の失敗や挫折を目にしたとき、ふと安堵や喜びを感じる心理を、心理学では「シャーデンフロイデ」と呼びます。これは個人の性格の悪さに起因するものではなく、低下した自尊心や揺らいだ自信を回復しようとする、心の防衛反応の1つです。
相手が失敗することで自分の地位が相対的に安定し、一時的に自己肯定感が満たされるというメカニズムが、その感情の正体と言えます。
他人をうらやむ気持ちの裏側にあるもの
前の章では、社会の中で生きる私たちが無意識のうちに他人と比較し、自分の立ち位置を確認しようとする本能について触れました。この章では、そうして生じた比較が、どのようにして「他人の不幸を願ってしまう」という感情へ発展するのか、その心の仕組みをさらに深く掘り下げていきます。
■心は「相手も同じ」と思いたい
他人の失敗や転落を目にしたときにふと安堵や喜びを感じたとき、必ずしも冷静に「相手が不幸になって嬉しい」と自覚しているわけではありません。むしろ、それまで張り詰めていた緊張感がふっと解け、胸のつかえが下りるような、ある種の緩和を身体感覚として先に覚えることが多いものです。
なぜ緩和するような感覚を覚えるかというと、他人が成功し続けている間、私たちは「自分は置いていかれている」という劣等感や焦燥感によって、無意識のうちに心を緊張させ、自分自身を追い詰めているからです。
相手が失敗したという事実は、その張り詰めた緊張を「相手も同じだ」「自分だけが劣っているわけではない」という安心感へと強制的に切り替え、心理的な崩壊を未然に防ぐための安全装置として働いているだけなのです。
■相手の不幸は自信を保つための材料になる
では、この安心感は、私たちの内面でどのような役割を果たしているのでしょうか。実は、ここには自己肯定感を守るための仕組みがあります。自信を失い、自分の立ち位置が揺らいでいるとき、私たちは他人の不幸を、自分の価値がまだ保たれていると確かめるための材料として無意識に使っているのです。
相手の地位が下がれば、相対的に自分の価値が維持されているように錯覚できます。つまり、他人の不幸を前にしたときの安心感は、性格の悪さからくるものではなく、傷ついた自己肯定感を補い、自分自身を崩壊させないように支えるための、心の苦肉の策なのです。
他人と比べる癖との上手な向き合い方
他人の失敗に安堵し、成功に嫉妬する。そんな自分の中のざわつきを感じたとき、そこから自分を守り、どのようにこの癖と向き合えばよいのかをお伝えします。
1.他人と比べている自分に気づく
他人の不幸に心が反応してしまうとき、私たちは無意識のうちに優劣という物差しで相手を測り、自分の立ち位置を確認しようとしています。この比較の心理を止めるための第一歩は、自分が相手と比べていることに気づくことです。
他人の失敗に心がざわついた瞬間、心の中で「今、比較して安心しようとしているな」とつぶやいてみてください。これだけで、自動的に続いていた思考の連鎖を一旦止め、自分の感情を客観的に観察する余裕が生まれます。
2.相手と自分の課題を切り分ける
他人の不幸に心がざわつく背景には、「相手はこうあるべきだ」という期待や、他人と自分の距離感の曖昧さが潜んでいます。これが曖昧になると、他人と比べることは止められません。
安定を取り戻すためには、他人との間に心理的な境界線を引くことです。相手の成功や失敗は相手の人生の出来事であり、自分の価値とは無関係であると線引きをするのです。相手の人生に踏み込まず、自分の今の課題だけに目を向けることで、他人の動向に左右されず、それによってのストレスを軽減できます。
3.どんな自分も否定しない
自分自身の価値を低く見積もり、否定の状態にある中では、その苦しさは他人への関心としてあふれ出てしまいます。この状態から脱するには、今の自分の感情をそのまま受け入れることです。
「誰かをうらやんだり、情けなさを感じたりすることも、自分の一部なんだ」と、ありのままの心に許可を出してあげてください。自己否定を止めて自分自身に寄り添うことが、揺らいだ自信を修復して、他人と比べなくても満たされる心の安定へとつながっていきます。
他人ではなく自分に注目する
相手の不幸を嬉しく思ってしまうのは性格の悪さではなく、自分を守ろうとする大切な防衛反応です。まずはその事実に気づき、自分を責めるのをやめることから始めてみてください。
感情を否定せずにその奥にある焦りと向き合うことで、他人ではなく自分自身に集中できるようになるでしょう。
文・構成/藤野綾子
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