ニューヨークに本社を置くグローバルコンサルティング企業、アリックスパートナーズから「2026年版グローバル自動車業界見通し」(以下、本レポート)が発表された。
第23回となる今回のレポートでは、2026年には中国および米国といった主要市場で需要が落ち込むと予測。中国では国内競争の激化と内巻(過剰競争による収益圧迫)が加速しており、中国の各メーカーが海外市場に成長を求める動きが活発化するとみている。
ここかからは同社発表リリースをベースに、その概要をお伝えする。
「2026年版グローバル自動車業界見通し」の主要ポイント
・数十年にわたるグローバル化の後、地政学と中国からの低コスト・高技術車両の台頭にけん引され、脱グローバル化(地域化)の時代が今や着実に定着しつつある。
・新興市場への参入を目指す中国の野心は、従来の自動車メーカーとサプライヤーの双方に挑戦を突きつけており、欧州における中国ブランドのシェアは16%に達すると予測。
・米国における「新たなICE 時代」は短期的なキャッシュフローの機会を生み出すと同時に、企業がこの機会を活かせなければ長期競争力が失われるという、存亡に関わる課題でもある。
・理想的な「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)2.0」とは、メキシコやカナダではなく中国との競争力強化を主眼に置き、米国車両のコスト増を最小限に抑えながら、競争前段階の技術・設備協力によって、関税収入は産業の強靭性と価格競争力の強化に向けた投資に充当すべき。
・欧州(ロシアを含む)における中国ブランド車の販売台数は今年25%増の230万台に拡大、市場シェアは2030年までに16%、2031年には17%に達する見通し。30年のプラグインEV車の世界市場シェアは 36%に達すると予測。
・「USMCA 2.0」への対応に伴う隠れたコンプライアンスコストは、年間で1台あたり最大2000ドルに上る可能性がある。
・2026年の米国新車販売台数は2.5%減の1580万台に落ち込む見通し。新車購入は一部の高所得者層に限られるものの、2030年までに1680万台まで回復する見込み。
・中国の販売台数は、今年は10%減の2460万台に落ち込む見込みだが、30年には2620万台に回復すると予測。
・AI-DV(AI定義車両)は自動車関連技術の次世代フロンティアであることは間違いないが、それに必要となる主要メモリの需要に占めるデータセンター向けのシェアが28年までに 50%と現在の約2倍に達する見込みであり、自動車メーカーの活用が拡大する局面では半導体コストが急騰する見通し。
・欧米市場の販売台数停滞を受け、自動車メーカーは防衛、ヒューマノイドロボティクス、エネルギー貯蔵といった隣接分野への多角化を推進するとみられるが、多くの企業はそのために必要な製造規模や体制を持ち合わせていない。

EV のシェア比率は202年4%に対して2030年に11%、2035年には 30%に達すると予測
販売台数の見通しは市場によって明暗が分かれる。中国は今後数年で緩やかな回復と成長が見込まれる一方、米国と欧州では停滞が続く見通しだ。
販売台数への持続的な圧力は、中国市場における外資系メーカーの販売減少をさらに加速させるとみられる。その結果、中国以外の完成車メーカー(OEM)とサプライヤーは、中国での安定収益がなくなり、自国市場での競争力強化に一層注力することが求められている。
米国政府は USMCA 2.0の推進、関税強化、中国製ハードウェア・ソフトウェアへの規制を相次いで打ち出している。これにより自動車メーカーは、USMCAに準拠した仕様と、中国の技術・部品を相当量活用した「グローバル仕様」という、二つの製品ラインへの対応を同時に行なうことが求められている。
日本市場では、EVの市場シェアが拡大する見通しをまとめている。EVのシェア比率は今年4%に対し、2030年に11%、2035年には30%に達すると予測する。
BYDなど中国メーカーを含む海外OEM の存在感の高まりなどを受け、市場競争の激化とともに、消費者の選択肢が広がることで、BEV価格を少しずつ押し下げていることも要因にあるとみている。
■2030年には世界販売の 36%がプラグイン電動車両になると予測
本レポートは、各市場が相反する方向に向かいつつある世界の自動車産業を分析している。中国が電動化に強くコミットする一方、米国は内燃機関車(ICE)およびハイブリッド車の販売が引き続き主流となる「新ICE時代」へと向かう様相を呈している。
ただし、この時代もいずれ転換点を迎えるとみられており、2030年には世界販売の 36%がプラグイン電動車両になると予測する。
アリックスパートナーズ 自動車・産業プラクティス・グローバル共同リーダー アンドリュー・バーグバウム氏は、次のように述べている。
「よりスマートな車両を開発する競争は、業界の積極的なプレイヤーにとって胸躍る機会をもたらしています。しかしその未来を支える基盤を確保する競争は、大きな課題となるでしょう。半導体は世界で最も争奪戦が激しい車両部品であり、自動車各社はデータセンターや無数のハードウェアメーカーと競い合いながら、適正なコストで十分なチップ供給を確保しなければならない状況に置かれています」
自動車メーカーに新たな成長経路をもたらす隣接分野への多角化
AI データセンターの需要がこの移行コストに対する重大な逆風要因となる中、本レポートでは今後3年間でデータセンターが利用可能なマイクロチップ供給量の 50%を占めるようになると予測している。
そして供給上の課題に対処するため、本レポートでは自動車メーカーに対し、パートナーシップの締結、製品工程の抜本的な再設計、そして合弁事業や資本参加を通じた主要テクノロジー企業との連携を図るように提言を行なっている。
本レポートが普及すると見込むもう一つの戦略は、既存の供給能力を置き換えることなく自動車メーカーに新たな成長経路をもたらす隣接分野への多角化だ。対象分野としては、蓄電池エネルギー貯蔵ソリューション、自動化、そして防衛が挙げられる。

■多くの自動車関連企業がテクノロジー企業との連携を図る準備を十分に整えていない
しかしながら、本レポートは多くの自動車関連企業がこうした機会を活かす準備をいまだ十分に整えていないと指摘している。
同社自動車・産業プラクティス DACH(ドイツ・オーストリア・スイス)共同責任者のジン・ジョウ氏は次のように話す。
「自動車業界はアフターマーケット、商用車、航空宇宙、パワースポーツといった分野への参入など、長年にわたり多角化に関心を寄せてきました。今後の戦略は、成長を目指す自動車メーカーにとって、市場の魅力度と自社との適合性をいかに見極めるかという均衡を図る取り組みになるとみています。自動車業界で培った製品知識やプロセスノウハウを他分野に応用できる場合、最大の制約となるのは認証の取得と顧客へのアクセスです」
続いて自動車・製造業プラクティス・日本リーダー 鈴木智之氏も、以下のように述べている。
「今年の見通しでは、各市場が相反する方向に向かいつつある世界の自動車産業を分析しています。中国が電動化に強くコミットする一方、米国は ICE およびハイブリッド車の販売が引き続き主流となる『新ICE時代』へと向かう様相を呈しています。ただしこの時代もいずれ転換点を迎えるとみられており、2030年には世界販売の36%がプラグイン電動車両になると予測しています」
関連情報
https://www.alixpartners.com/jp/
構成/清水眞希




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