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令和最速!発売から50日間で5500万本以上出荷した「ギルティ炭酸 NOPE」の爆売れ快進撃

2026.07.04

■連載/ヒット商品開発秘話

高カロリー、高脂質なものを楽しむギルティ消費が人気を集めている。背徳感はあるものの胃袋と心が満たされ、やみつきになってしまうところがある。

ギルティ消費に着目して開発された炭酸飲料が現在大ヒットしている。サントリービバレッジ&フードが2026年3月に発売した『ギルティ炭酸 NOPE(ノープ)』(以下NOPE)のことだ。サントリーが令和に発売した炭酸飲料としては最速となる、発売から50日で5500万本以上を出荷した。

『NOPE』は完熟フルーツやスパイスなど、99種以上のフレーバーを掛け合わせ、複層的な香りや味わいを実現。甘味・酸味だけでなく、苦味・旨味・塩味も配合し、五味をしっかり楽しめる中身を設計した。

新感覚の甘濃く〝やみつき〟になる味わいが特徴の『ギルティ炭酸 NOPE』。600mlペットボトルと340 ml缶の2種をラインアップしている(340ml缶は自動販売機専用)

飲んでストレスを「発散」ではなく「溶解」する

意外なことに、サントリーにとって『NOPE』は約14年ぶりの大型飲料ブランドとなる。

「ありがたいことに当社は、お茶やコーヒー、ミネラルウォーターではお客様に愛されるブランドを育てることができています。しかし炭酸飲料に関しては強力な他社ブランドが多いことなどから、市場に新たな提案がなかなかできないでいました。『NOPE』は、炭酸飲料市場に風穴を開けることを目指して開発されたものです」

『NOPE』の開発背景をこう明かすのは、ブランドマーケティング本部の大槻拓海氏。2025年春に企画を立て、開発に着手した。

サントリービバレッジ&フード
ブランドマーケティング本部 大槻拓海氏

大槻氏は20歳代、30歳代の若年層にチャンスを見出した。ロングセラーブランドが多い炭酸飲料は40歳代、50歳代の底固いユーザーによって市場が支えられており、若年層がなかなか獲得できていないという課題があったからであった。

若年層に関するさまざまな調査データや同社に寄せられたお客様の声に目を通した。すると、注目すべき傾向が見られた。それは、ストレスの発散、解消のために炭酸飲料を飲む人が多いということ。日々の生活でストレスを溜めている若年層のストレスを解消することが1つのカギになると考えた。

最近のストレス発散は炭酸飲料を飲む以外にも、サウナに行く、家でゲームに没頭するといった、自分の好きなタイミングに1人でできることが増えてきているという。こうした行為は、ストレス発散というよりストレスをジワジワ溶かしている感じに近い。炭酸飲料はコンビニや自動販売機で簡単に手に入ることから、ストレスを溶かすことができる一番身近かつピッタリなアイテムと位置づけ、飲むとストレスを溶解できるような中身をつくることにした。

ブレークスルーのきっかけはグミ

1人でダラダラ過ごす中でストレスを溶解する時にピッタリな炭酸飲料とはどういうものか? 香りや甘濃さに着目しながら具体的な中身を検討してくことにしたが、具体的なイメージがあったわけではなかったので、手探りの状態から中身をつくっていかなければならかった。

若年層の嗜好を理解するために参考にしたのが、グミであった。若い世代からの支持が高く市場が成長を続けていることから、参考にすべき点があると考えた。

グミでよく使われているフレーバーなどから、『NOPE』はトロピカル系のフルーツをベースとすることにし、ここに香りや甘濃さを生むのに欠かせない糖類、そしてカフェインをプラスしていくことにした。大槻氏は「グミにたどり着いたことが、ブレークスルーするきっかけになりました」と振り返る。

試作検証は毎週のように実施。大槻氏をはじめとしたチームメンバーが試飲しただけでも100種類程度の試作品を飲んだ。中身をつくった担当者は2000種類の試作品をつくり、1日2リットル近く試飲したこともあったほどだった。

商品の方向性についても、社内・社外を問わずいろんな意見やアドバイスを聞いて磨きをかけていった。とくに社内では、ギルティ消費は本当に受け入れられるのかどうかが不安視されたことから、開発終盤まで需要があるかどうかの確認は言われ続けた。

カップラーメンやお菓子といった近しい市場でのギルティ消費の傾向を確認しては堅調に推移していることを事あるごとに報告したほか、「ギルティ」という言葉の浸透度も調査。言葉の浸透度まで調べるのは同社でもほぼ例がなかったが、言葉を聞いたことがある人が全体の約6割、「背徳的」といった細かい意味まで理解していた人が約3割となった。『NOPE』がターゲットとした若年層に限れば、言葉を聞いたことがある人の割合はもっと高いという。

ギルティ消費が伸びていること、調査結果から「ギルティ」という言葉が市民権を得つつあると判断できたことから、自信を持って前面に「ギルティ」を押し出していくことにした。

ブラック×マゼンタのカラーリングとフェイスアイコン

パッケージデザインを決めるに当たっては、記憶の残り方を一番大事にした。重要なファクターとなったのがカラーリングである。

カラーリングはブラック×マゼンタを採用した。店頭の棚に並ぶ他の商品にはない色使いであること、ブランドのコンセプトに合うことから決まった。

大槻氏から見ても、ブラック×マゼンタは最初、奇抜に映った。社内でも「おおっ!」「思い切ったな」といった驚きの反応が返ってきたが、外部モニターは驚きつつも「こういうデザインもあっていい」といったように柔軟に受け止める傾向が見られた。

こだわったのはカラーリングだけではない。ブランドを象徴するフェイスアイコンもパッケージを印象づける重要なファクターと位置づけた。

アイコンを置くことにしたのは、将来的なコラボを見越した面もあった。大槻氏は次のように話す。

「ゲームやアニメなどいろんなものとコラボするとなった時、ボトルだけを出すことが難しいことがあります。コラボした際、商品を思い出せるような特徴を何か持たせたかったことから、象徴的なアイコンを置くことにしました」

検討したデザイン案は100案近く。新ブランドゆえゼロベースから幅広く検討することにしたため、他の商品と比べてかなり多くのデザインを検討したという。

事前承諾を得ずに自販機をジャック

『NOPE』は発売から4週連続で、炭酸飲料カテゴリー内で売上ナンバー1(カタリナ リテール メディア ネットワーク「AOUMI」加盟小売店[スーパー、ドラッグストア等]において)を達成。初年度の計画はクリアできる見通しだ。

消費者コミュニケーションにおいては商品が記憶に残るよう、ブラック×マゼンタのカラーリングとフェイスアイコンを伝えることを徹底した。施策としては、囚人が思うがままにギルティフードをむさぼるテレビCMの放映をはじめ、東急プラザ表参道「オモカド」でのサンプリングイベント、テレビCMに登場する3人のキャラクターを使った指名手配ポスター風の広告を原宿に期間限定で掲出するなどした。

発売前の2026年3月17日に東急プラザ表参道「オモカド」店頭イベントスペースで実施されたサンプリングイベント
『NOPE』のテレビCMに登場するような囚人が檻の中から商品を配布

中でも奇策といってもいいのが、自販機ジャックだ。サントリーの清涼飲料自動販売機の側面にあるコーヒーブランド『BOSS』のロゴマークの上に『NOPE』のフェイスアイコンと商品ロゴを被せた。しかも、『BOSS』を担当するマーケティングチームには事前の了解を得ず実行したというから、思い切り方が半端ではなかった。

「『BOSS』は誰もが知っているメジャーなブランドですので、新ブランドが多少やんちゃなことをしてもブランド価値が毀損されることはないと思い自販機をジャックしました。意外とSNSで話題になったことから、『BOSS』のマーケティング担当の耳に入るところとなり、きちんと承諾を得ることにしました」

このように話す大槻氏。実は以前『BOSS』のブランド担当だったことから、自販機ジャックを思い切って実行しやすかったところがあった。露出効果があり若年層の目に留まりそうなところや『NOPE』にふさわしそうなところに設置されている自動販売機に絞ってジャックした。

『BOSS』のロゴマークの上に『NOPE』のフェイスアイコンと商品ロゴを被せてジャックした自動販売機

また、フードメニューや飲食業とのコラボが比較的多い点も特徴だ。これまでに、ファミリーマートやメディアミックスコンテンツ『ウマ娘プリティーダービー』とのコラボのほか、餃子をメインにした居酒屋『肉汁餃子のダンダダン』とのコラボなどの実績がある(いずれも終了)。大槻氏は「食との掛け合わせは今後も象徴的なシーンとして訴求していきたいと思います」と前向きだ。

取材からわかった『ギルティ炭酸 NOPE』のヒット要因3

1.「ギルティ」に対する共感

美味しさの追求もさることながら、「ギルティ」という消費シーンに目を向けて開発。「ギルティ」に共感を得られたことから、これまでの炭酸飲料ブランドが弱かった若年層をうまく獲得することができた。

2.記憶に残るパッケージデザインやコミュニケーション

パッケージはブラック×マゼンタのカラーリングにフェイスアイコンを配置。消費者コミュニケーションにおいても、印象に残るこれら2つを徹底して示し続けた。消費体験が記憶に残り気になる存在であり続けやすかった。

3.ストレスとの向き合い方の変化に対応

ストレスを感じたら、従来であれば発散や解消を目的とした行動を取ってきたが、徐々に溶かすことを目的とした行動を取るケースが増えてきた。炭酸飲料をダラダラ飲むこともその1つ。この点に着目し、ストレスを溶かす時にピッタリな味わいを追求した。

ネットやSNS上でのユーザーの反応は賛否両方が入り混じっているが、賛否関係なくユーザーの熱量は高いという。大槻氏は「熱量高く商品のことを見ていただけていることは想定外のことでした。さまざまな角度から提案や改善点を発信いただけていることには、すごく感謝しています」と打ち明ける。

ユーザーの中には朝から1本飲み干す猛者もいるほど。尖った商品なのでハマる人はとことんハマるといえそうだ。

ブランドサイト
https://www.suntory.co.jp/softdrink/nope/

取材・文/大沢裕司

Author
月刊誌の編集者を経て2005年からフリーランスライターとして活動。以来、企業取材に(ほぼ)特化し、雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、ブックライティングも手掛ける。主な取材テーマはものづくり関すること全般と中小企業の経営。著書に『高すぎ! 安すぎ!? モノの値段事典』(ポプラ社)、『バカ売れ法則大全』(共著、SBクリエイティブ)などがある。

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