バンダイナムコホールディングスのガンダムIPが急成長しています。2026年3月期は2543億円で、前期のおよそ1.7倍に急増。強気とも思われた通期計画の2400億円も軽々と飛び越えました。
バンダイナムコは2025-2027年度の中期計画「Connect with Fans」に取り組んでおり、その成果が花開いたと見ることができます。詳しく見ていきましょう。
「新世紀エヴァンゲリオン」担当者のメカデザインが冴える

中期計画ではグループ全体のキーテーマの1つとして「いいものをつくる」を掲げています。
バンダイナムコは2025年1月静岡市にガンプラの工場を新設。同年7月に動き始め、2026年からは本格稼働していました。2023年度比で35%の増産体制を整えたのです。
ガンプラファンは、欲しい新商品が手に入らず苛立った経験があるはず。プラモデルはコロナ禍の巣ごもり特需で需要が急拡大しました。それに目を付けた転売ヤーの暗躍も加わって品薄の状態が続いていたのです。
バンダイナムコは商品が行き渡るよう巨額の設備投資を行なったのです。
新工場の稼働開始に先駆け、2025年1月に劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を公開。『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけた庵野秀明氏を脚本に迎えるなど、ガンダムファンを驚かせました。
バンダイナムコは2024年8月に東宝と資本業務提携を締結することで合意。ガンダムシリーズの劇場版は松竹が手がけてきましたが、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』は東宝が配給しています。従来とはビジネスの建付けが大きく変わりました。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のメカニックデザインは山下いくと氏が担当しています。山下氏は『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけたことで有名で、手足の長い独特なフォルムは『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』にも受け継がれました。これまでのデザインとは一線を画するものが誕生したのです。
これがヒットします。映画の興行収入は30億円を突破するという異例の人気を獲得しました。
ガンプラを主軸とした、2026年3月期国内トイホビーのガンダムの売上高は1063億円で、前期の1.4倍に増加しました。ガンダムの新作はガンプラの売上増にも貢献したのです。
バンダイナムコは中期経営計画でアライアンス強化を掲げ、パートナー企業とのアライアンス強化を目的とした「CW360」を新設。事業成長を後押しするパートナー企業との連携に力を入れています。
その背景には、東宝との資本業務提携での成功体験がありそう。提携後の2025年にガンダムを取り巻くビジネスは大きく変化し、IPの影響力が拡大しています。
新作ゲームをヒットさせる巧みな仕掛け

もう一つのヒット作が2025年4月にリリースした「SDガンダム ジージェネレーション エターナル」。このゲームは2025年11月に700万ダウンロードを突破しています。モバイルゲーム市場が冷え込み、ヒット確率が下がる中で絶大な支持を得ました。
このゲームはゲーム機向けに開発されてきた「ジージェネレーション」シリーズのモバイルゲーム版。多くのファンに親しまれてきたシリーズである一方で、シミュレーション要素を盛り込んだ初の本格モバイルゲームという難しさもありました。
しかし、バンダイナムコはゲーム機に引けを取らない高いゲーム性を提供。ファンを失望させない最大限の配慮をしました。さらに、オート進行、スキップ機能などを盛り込み、スマートフォンで遊ぶ人を飽きさせない工夫も凝らしています。
モバイルゲームはかつて、いかにしてプレイヤーをゲームにくぎ付けにするかを追求してきました。その先にあったのが射幸心をあおる「ガチャ」の進化。高い中毒性を生み出して社会問題化したのです。
しかし、時代は変わって今はタイパが重視される時代。アプリの乱立でスキマ時間の取り合いが激しくなっていますが、モバイルゲームも効率よく進行できなければ、ユーザーは飽きてすぐに離れてしまいます。そして、タイパが高いゲームであることが分かれば、「ジージェネレーション」を知らないガンダムのライトファンを引き込むことができます。
ターゲットの間口を広げたことが、大ヒット要因の一つとなっているでしょう。
バンダイナムコは中期経営計画のキーテーマに「もっとひろげる」も掲げています。「ジージェネレーション」の新作ゲームは、ターゲットを広げてゲームをライト層にも最適化したことにより、ファンを獲得することができたと見ることができます。
ガンダム実写化で欧米のファンを取り込めるか?
ガンダムの海外展開に向けた動きからも目が離せません。2026年4月にNetflixがガンダムシリーズ初の実写映画の製作を開始すると発表。ハリウッドでの実写映画化がスタートしました。
ガンプラの売上のおよそ半分は海外によるものですが、中国や韓国、台湾などのアジア圏が中心。アメリカやヨーロッパでは存在感を発揮しきれていません。実写映画により、IPの浸透が進む可能性があります。
2025年7月にはソニーグループと戦略的な業務提携契約を締結しました。ソニーは日本のアニメ専門の海外向けチャンネル「クランチロール」を傘下に持っています。ガンダムというコンテンツを流通させるインフラ整備も進めているのです。
本格的な世界進出に向けて動き出しています。
©創通・サンライズ
文/不破聡
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