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低圧での感電死傷事故の傾向と事故を防ぐポイントは?

2026.07.03

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE=ナイト)は、需要設備(※1)における感電死傷事故(※2)に関する注意喚起を目的に、事故を防ぐポイントをまとめて発表した。本稿では同機構リリースをベースに、その概要をお伝えする。

※1 需要設備:電気を使用するために、使用場所と同一の構内(発電所又は変電所の構内を除く)に設置する電気工作物。
※2 死傷事故:死亡事故と負傷事故(入院を伴う負傷者の発生した事故)を併せたもの。

1:需要設備における感電死傷事故の状況(分析結果)

今回は自家用電気工作物(※3)を対象に、需要設備で発生した感電死傷事故を感電時の電圧ごとに分析した。2020~2025年度の間に発生した感電死亡事故は、高圧(※4)で13件、低圧(※5)で16件と、低圧においてより多くの死亡事故が発生しており、一層の注意が必要だ。

低圧での感電死傷事故が発生した時の作業内容としては、電気工作物の修理・点検や、電気工事などの電気作業が中心だが、建設・建築・土木作業などでも発生している。

※3 自家用電気工作物:ビル・オフィス・工場など、電気を多く使用する施設に設置されるような、高圧で受電する需要設備や、一定以上の出力を持つ発電設備(電気事業で用いられるものを除く)。
※4 高圧: 直流では750V、交流では600Vを超え、7000V以下の電圧。ここでは、7,000Vを超える特別高圧も含む。
※5 低圧:直流では750V以下、交流では600V以下の電圧。

■感電死傷事故件数について

需要設備における感電死傷事故について、低圧と高圧に分けて分析を行なった(2026年4月時点のデータで分析)。

図1では2020年度から2025年度における、需要設備の感電死傷事故件数を感電時の電圧別に示している。低圧での死傷事故は65件発生しており、高圧の156件と比べると少ないが、死亡事故は低圧で16件(電圧の内訳100V:3件、200V:12件、400V:1件)、高圧で13件発生しており、低圧の方が多く発生している。

これらの結果から、低圧でも油断せず、しっかりと感電対策を講じることが重要だと言える。

図1 需要設備における感電死傷事故件数(2020-2025年度)

■事故発生時の作業内容について

図2では低圧での感電時の作業内容の内訳を示している。電気工作物の修理・点検や電気工事といった電気作業が50件、それ以外の作業が15件となっており、電気作業を中心に事故が発生しているが、建設・建築・土木作業など、電気作業以外でも発生しているため、これらも注意が必要だ。

図2 低圧での感電時の作業内容の内訳(2020-2025年度)

■感電死傷事故時の被害状況について

感電死傷事故時の被害状況について、充電部への接触などによる感電(以下、「接触による感電」)と「アークによる火傷など」の二つに分類すると(図3)、「アークによる火傷など」の割合が低圧では高圧に比べて高いことがわかる。

なお、感電死亡事故に関しては、過去6年間、いずれも「接触による感電」により発生している。

図4は、月ごとの低圧での感電死傷事故件数を、負傷内容別に算出したものだ。「アークによる火傷など」については、月ごとの件数の寡多は顕著ではないが、「接触による感電」は7~9月の夏季に多く発生しており、特に8月に突出して事故が多いことがわかる。

図3 需要設備における感電死傷事故の被害状況(2020-2025年度)

図4 月ごとの低圧での感電死傷事故件数(2020-2025 年度)

<用語の解説>
「アークによる火傷など」は、いわゆる感電とは大きく異なり、爆発に近い現象で引き起こされる(図5)。低圧の導体間の短絡であっても、瞬間的なkW級の大電流のアークが発生するため、金属の溶滴や蒸気を含む高温ガスが人体に吹き付けられることがある。また、極めて高輝度の閃光による眼球や皮膚の損傷が起こる可能性も想定される。

これまでの事故において比較的多く見られる事例は、手に持った工具などで誤って端子等を相間短絡させてしまい、顔面を含む上半身を中心に広範囲に火傷を負うというものだ。直接的に死に至ることはほとんどないものの、思わぬ重傷となることがある。

一方で、「接触による感電」は、電圧がかかっている導体に接触することで、接触箇所から接地された導体に接触している部位に向け、体内を電流が流れることにより、体内に様々な影響を与える(図6)。

特に、心臓付近を電流が流れた場合、低圧であっても比較的小さな電流で心臓に深刻な影響を及ぼし、死に至ることがあるので、細心の注意が必要だ。

図5 アークによる事故の概念図例

図6 接触による感電事故の概念図例

2:低圧での感電死傷事故の事例

■事例1

【事故発生年月】
・2025年8月
【作業内容】
・電気工事の事前調査
【被害の状況】
・感電による心停止→死亡。
・当該事業場の設備工事の事前調査の際、作業員が計画外の作業として低圧分電盤内の負荷電流測定を行っていたところ、誤って充電中の二次側銅バーに接触して感電。
【事故の原因】
・計画外作業(電流測定)が発生した際に、具体的な作業方法等の打合せを実施しておらず、また、素手で活線近接作業をしており、感電防止措置を実施していないことから感電したと推定される。
【対策例】
・管理者への事前確認、停電作業、革手袋等の低圧用保護具の着用。

■事例2

【事故発生年月】
・2024年8月
【作業内容】
・配管作業
【被害の状況】
・感電による心停止→AEDにより蘇生
・雨天時に屋外にある配管のメッキ削り作業をするため電気式ディスクグラインダー(AC100V)のスイッチを入れたときに感電。意識および呼吸停止状態(心停止)になったが、心臓マッサージとAEDにより蘇生した。
【事故の原因】
・機器の接地をしていなかった。
・機器を接地していないことを当該事業場の担当者は確認していなかった。
・当該機器の給電ブレーカーが漏電遮断器付きではなかった。
・雨天時に屋外で機器を使用した。
・当該事業場の工事担当者が雨天・屋外での電動工具の使用不可を下請け作業者に伝えていなかった。
【対策例】
・機器の使用上の注意の再確認、社内ルールの徹底、絶縁用保護具の着用。

■事例3

【事故発生年月】
・ 2023年10月
【作業内容】
・電気工事
【被害の状況】
・感電による筋肉収縮(けいれん)に伴う骨折。
・工場内制御盤の修理中に、電気工事の作業員が誤って制御盤内の別電源の活線部(200V)に触れたことで感電。
【事故の原因】
・防護手袋等の対策をとっておらず、一つ一つの回路を検電しなかったため活線部を見落とした。
【対策例】
・活線作業の原則禁止、検電の徹底、防護器具の使用、作業手順の遵守。

■事例4

【事故発生年月】
・2023年6月 
【作業内容】
・電気工事
【被害の状況】
・アークによる火傷。
・当該事業場の電気設備工事において、作業員が、誤って持っていた圧着端子を充電中の低圧動力盤母線(銅バー)上に落下させ、相間短絡により発生したアークによって火傷負傷した。
【事故の原因】
・当該事業場の電気工事において、現場代理人は、事業場が稼働中で停電が困難と考え、充電部を保護して作業可能と判断したが、保護しないまま充電部に近接した作業をさせた。
・また、事業場連絡責任者は、電気主任技術者に連絡せず作業内容への助言や立会いも求めず作業を実施させたところ、作業員が誤って持っていた圧着端子を充電中の低圧母線(銅バー)上に落下させ、相間短絡により発生したアークにより負傷したと推定される。
【対策例】
・電気主任技術者への事前連絡、停電作業。

■事例5

【事故発生年月】
・2025年7月 
【作業内容】
・足場設営作業
【被害の状況】
・感電による落下。
・当該事業場の設備工事用の足場設営作業中、作業者がホイスト電源線充電部に触れて感電して転落、負傷(骨折等)した。
【事故の原因】
・当該事業場の設備工事用の足場作業では、ホイストの電源を切っていなかったため、作業者が誤って触れて感電し、安全帯は着用していたが、フックを手すり等にかけていなかったため、転落したと推定される。
【対策例】
・停電作業、充電部の保護、保護具の適切な使用。

需要設備における低圧での感電死傷事故を防ぐために特に注意したいこと

■管理者・設置者

<活線作業(電気が流れている状態での作業)を避ける>
低圧でも、感電による死亡事故や、アークによる火傷などの負傷事故が発生している。電気作業は、可能な限り停電状態で行なうことを検討する。

<高温などの過酷な環境下での作業を避ける>
感電死傷事故は、高温・多湿である夏期(7~9月)に多く発生している。原因として、発汗により作業員の体表や衣類の導電性が著しく上昇することが挙げられる。作業の時期・時間の見直し、空調設備の活用、スポットクーラーやファン付き作業着の導入などにより、作業環境を整えたい。

<作業中の危険について情報を共有>
作業を行なう設備において、感電などの危険がある場合は、事前に作業者に情報共有を行なう。

<AEDの設置や、講習の実施について検討する>
感電直後に意識や呼吸がない場合、AEDを使用することにより、救命できる可能性がある。万が一に備え、AEDの設置と、関係者への使用方法の周知や講習の実施について検討しておきたい。

■作業者

<常に検電を怠らない>
低圧でも、感電による死亡事故や、アークによる火傷などの負傷事故が発生している。導体に触れる前に検電器を用いて、無電圧であることの確認を怠らないようにする。

<作業中の感電や危険に感じたことについて情報を共有する>
・作業中に感電した場合や、危険を感じた場合(ヒヤリハット)は、作業責任者や安全管理者などに報告する。
・作業時には、手袋などの絶縁用保護具を着用する。
・電圧に応じた絶縁性の手袋を両手に着用することで、万が一、充電中の導体に接触しても、感電を防げる可能性がある。手袋が破損・劣化している場合などには絶縁性能が下がるため、注意が必要。
・アークによる火傷や失明などへの対策としては、現場の状況に応じて保護面(フェイスシールド)や保護めがねなどの着用も有効。

<AEDの使用方法や設置場所について把握しておく>
万が一に備え、作業関係者間で、AEDの設置場所(事業場に設置されていない場合は近隣の施設も含む)と使い方について把握しておく。

◎安全対策に関係する用語

検電:検電器を用いて、電気回路や電気配線が電気を帯びているかどうかを判別する安全行動。
検電器 :電気が通っているかどうかを確認するための機器。高圧用・低圧用がある。
絶縁用保護具 :電気用帽子(ヘルメット等)、電気用ゴム袖・ゴム手袋・ゴム長靴などの作業者が身体に着用する感電防止のための安全装備。高圧用・低圧用がある。

関連情報
https://www.nite.go.jp/

構成/清水眞希

@DIMEはサイトローンチ時より編集業務に携わる。現在は雑貨や家電、オーディオなどの新製品に加え、各種の社会調査・統計、話題の新スポットからイベント情報などを担当。信条は正確さとわかりやすさ。最近の趣味は日付が変わる時刻のウオーキング。

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