長引く中東情勢を受け、プラスチックや合成ゴムの原料となる「ナフサ」の供給不足が問題になっている。ナフサは化粧品の容器に多く利用されていることから、化粧品ブランドの中には容器分の価格を見直し、値上げする例も見られる。
一方、中小D2Cブランドは安易に価格を上げられないことから、供給ルートを複数持つなどのリスクヘッジを進めている。
今回は、ナフサショックを想定した化粧品容器にまつわる問題の対応策を探った。
ニュースでよく聞く「ナフサ」って何?日本企業がナフサ不足に苦しむ理由
イラン情勢を受けて、緊迫したニュースが続いてきた2026年の上半期、ナフサという言葉をニュースで見聞きするようになりました。突然湧いて出たようなワードで「ナフサ…
化粧品業界へのナフサ供給不足の影響
化粧品業界へのナフサ供給不足の影響はいかほどか。
帝国データバンクの調査によれば、ナフサを化学製品メーカー52社から直接・間接的(二次流通まで)に仕入れる製造業は全国で約4万7,000社と、集計可能な製造業全体の約3割を占める。最もナフサ高騰による影響を受けやすい(ナフサ依存度が高い)業種は「化学工業、石油・石炭製品製造」で67.2%・3148社。
このうち、化粧品や医薬品などを製造する「環式中間物製造」が最も高く88.4%となっている。
実際、日本の大手化粧品ブランドはどうか。一般的に化粧品容器や原料には、ナフサに由来するものが多く使われている。例えばコーセーも同様だ。
株式会社コーセーのコーポレートコミュニケーション部の村松慎介氏は、ナフサ供給不足の影響について次のように回答する。
「ナフサ供給不足によるデザインや容器開発(色味や包材の簡素化など)への直接の影響は現状、これまでの対応により出ていませんが、長期化による影響への対応は今後の大きな課題です。原料の調達難などが発生する場合は、主力商品や新商品、利益貢献度の高い商品へ資源を集中させ、優先的に生産を進めるなどの対応の検討が必要になります。調達が不安定な状況下でも、お客さまが手にする商品の品質や安全性を最優先に据えるとともに、安定供給の維持に努めます」
昨今、より必要性が高まる容器の環境対応は、供給不足のリスクヘッジにもつながると考え、推進を強化しているという。
「当社では、サステナビリティ戦略の中長期目標として、2030年までに『プラスチック容器包装の環境配慮設計』を進めることを宣言しています。その中で、4R*の推進(バイオマスやリサイクル材の活用など)や、石油由来バージンプラスチックの使用削減、レフィル化の推進などを掲げ、KPIを設定しています」
*リデュース(Reduce)・リユース (Reuse)・ リサイクル(Recycle)・リニューアブル(Renewable)
中小化粧品ブランドの施策
中小化粧品ブランドにおいては、容器の原材料価格の高騰は大きな直撃を受ける可能性がある。どのような対応策があるのか。現状、候補に挙がるのが、独自のルートでそろえること、そして再生素材を利用することだ。
1.独自の調達ルートの開拓
2026年4月、化粧品OEMメーカーの株式会社ベイコスメティックスは、化粧品などの容器に利用されるリフィル用アルミパウチ資材について、日本国内需要の約5%相当・最大1億枚分の安定供給ラインを確保したと発表。供給が困難になる前にサプライチェーンを確保した。
リフィル用アルミパウチ資材とは、アルミ箔とポリエチレン(PE)樹脂を多層に貼り合わせたフレキシブルな包装資材。軽量・遮光・バリア性に優れており、化粧水・美容液・ローション・シャンプー・コンディショナーなど幅広いスキンケア・ヘアケア製品の詰め替え用途(リフィル)に使用されているという。
代表取締役社長の加藤聡太氏によれば、取引先のブランドでは、プラスチックボトルの使用量削減によるサステナビリティ訴求を目的としたリフィルパウチの採用が増えているそうだ。
●ルート発見の経緯
供給ルートは、中国からのものだという。発見した経緯について加藤氏は次のように話す。
「2026年2月末からのホルムズ海峡の事実上の封鎖により、中東産のアルミ地金とナフサ由来のPE樹脂が『ダブルショック』で調達困難になるリスクを早期に察知したことがきっかけでした。国内・欧州ルートの代替を模索する中、当社が以前から構築してきた中国サプライヤーとのネットワークを活用し、複数の信頼できるメーカーと交渉を重ねました。業界全体が対応に追われる前に先手を打てたのは、サプライチェーンの状況を日常的にモニタリングしていたことが大きいと考えています」
発表後は、問い合わせ件数が急増しているという。
「既存取引先からの供給枠の拡大要請に加え、今まで取引のなかった新規ブランド様からのご相談も顕著に増えています。特にD2Cブランドは安易な値上げが難しい分、資材の安定調達に対するニーズが切実で、早期に動いてくださるブランド様が増えている印象です」
●今後の見込みと展望
今後は、中東情勢の長期化を前提に、中国ルートに加えた代替調達ルートの開拓も継続する方針にあるという。
「資材供給にとどまらず、リフィル設計支援・コスト最適化まで一気通貫でサポートできる体制を強化し、業界全体のサプライチェーン危機を、ブランド様の『リフィル移行加速』の契機として前向きに捉えていただけるよう働きかけてまいります」
2.再生容器の採用
ナフサに関連する原材料の供給不足を想定し、ナフサに依存しない再生素材の容器を採用することも一案だ。
例えば「紙」。水や油に弱いことから不安があるが、従来のプラスチックコーティングに替わる、水性のバリアコーティングやヒートシールニス(熱で溶ける接着効果のあるコーティング剤)を施し、耐水性や耐油性を実現している容器の例もある。
今後は、化粧品用品の開発においても試行錯誤されていく可能性がある。この契機に新たな方向性が生まれることを期待したい。
参考/帝国データバンク調査
取材・文/石原亜香利




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