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G-SHOCKの最高峰が山形カシオで製造されている理由を聞くために工場見学に行ってきた

2026.06.29

6月の山形県東根市は、「赤い宝石」と呼ばれるさくらんぼを求め、全国からの観光客で賑わっていた。

人口約5万人の小さな町はこの時期、さくらんぼ渋滞で車が列をなす。

そんな日本一のさくらんぼ生産量を誇る東根市から、実はもう一つの「宝石」が生み出されていることをご存知だろうか?

世界的な人気を誇るG-SHOCKのマザーファクトリー、山形カシオ。

最上級モデル「MR-G」を製造する世界唯一の工場であり、普及価格帯から高価格帯まで多くのG-SHOCKがここから世界に届けられている。

一体なぜ、G-SHOCKのマザーファクトリーは山形なのか?

現在、一般個人の工場見学は受け入れていないとのことだが、今回特別に山形カシオのG-SHOCK生産ラインを拝見させていただいた。

さらに、「G-SHOCKには他には真似できない独自の世界観がある」と語る木村真一社長へのインタビューも敢行した。

長きにわたって愛されるG-SHOCKの魅力を堪能したい。早速案内されたのは、昨年リニューアルされた見学エリア。カシオが誇る歴代の時計やG-SHOCKの希少モデルが燦然と輝いている。

圧巻だったのは、G-SHOCKを始め、カシオを代表する腕時計の心臓部が形になっていくムーブメントラインだ。

複数のラインで様々なムーブメントが組み上げられているが、一番手前がG-SHOCK最高峰「MR-G」とハイエンドシリーズの「MT-G」、そして、エレガンスとテクノロジーの2つをコンセプトに掲げたブランド「オシアナス」のムーブメントライン。

左から右に流れる腕時計のメインプレートに歯車やネジなどを搭載していくこの作業。古くは手作業で行われていたが、今や人間の指先では容易に扱えない米粒以下の部品もあり、組み立て精度向上・生産性向上のため自動化となっている。

小さなスペースに微細な部品を詰め込み、高機能を実現する。それがカシオ製品、G-SHOCKの強みかもしれない。

ちなみに、すべてのムーブメントのエリアには免震の床が採用されている。

山形カシオはカシオ製品の最重要生産拠点。しかも国内唯一の工場だけに、このラインが止まることは許されない。そのため、地震時の揺れや被害を最小限に抑えられる設計になっているという。

そして隣のスペースに移動すると、現れたのは「G」の形をしたプレミアムプロダクションライン。

上から見ると「G」の形をしたこのラインでは、自動化で製造されたムーブメントに、機械では困難なハイエンドモデルの最重要ポイントを人間の手で丹念に組み上げていく。

しかし何故「G」の形なのか?

もともとは、『G-SHOCKはGの形の生産ラインから生まれている』という意味を込めて、あえてこの形にしたそうだが、複数の工程を担当する作業員にとって移動がしやすいという利点もあるとか。

このプレミアムプロダクションラインで特に技術を要する作業が、針の打ち込みだ。

時針、分針、秒針の3本の針を12時の位置に合わせて正確に打ち込んでいく。その位置を決めるのがメダリストと呼ばれる、ハイエンドの製造を許された極小数のスペシャリスト集団。

メダリスト認定制度に沿った試験に合格したメダリストだけにこの作業は任されているそうだが、実はそのほとんどが女性。しかも、地元山形出身の方ばかり。

女性職人が多い理由について、木村社長はこう語る。

「ハイエンドモデルをお買い求めるお客様はデザインや性能に加えて、秒針が12時の位置をいかに綺麗に通過するかをよく見ています。その精度を極めて正確に実現できる集中力と手先の器用さを考えると、どうしても女性が多く集まってくるんです」

「しかも、常に立ち仕事で細かい部品を扱う作業ばかり。かつて、山形を舞台にした「おしん」というドラマにも描かれていたように山形県の女性は頑張り屋さんで辛抱強く粘り強い。細かい作業を得意とする優秀な方が多いんですよね」

「そんな方々の匠の技と最先端技術が上手く融合することで今の山形カシオがあると自負しております」

髪の毛よりも細いナノレベルの加工技術こそ山形カシオ最大の武器

山形カシオの見学エリアには、歴史やテクノロジーの展示はもちろん、G-SHOCKの凄味を目の当たりにできる変わった展示もある。その一つが、“G-SHOCK水槽“だ。

円柱形の水槽には優雅に泳ぐ魚たちと防水力を見せつけるG-SHOCKが仲良く水中生活を楽しんでいた。

筆者が訪れた際は、すでに半年ほどG-SHOCKが水の中に設置されたまま。しかし、一つとして止まるものはなく、正確な時を刻み続けていた。

また、水槽内には山形カシオが独自に開発製造した水中トランシーバー「ロゴシーズ」も。

骨伝導マイク内蔵でレギュレーターをくわえたまま水中で会話をすることができる話題の製品。水槽を用いた斬新なディスプレーにカシオの技術力が見事に詰め込まれていた。

そして、G-SHOCKなどの新製品開発の際に実施される評価試験のデモ機も見ることができた。

水深200メートルの水圧を再現した機械や耐衝撃性を測定する試験など、厳しい検査を経て、新製品は世に放たれる。

G-SHOCKの「MR-G」「MT-G」といったハイエンドモデルになるとこれらの検査は一台一台、入念に行われているという。

全ては、止まらない時計、壊れない時計を作るため。

さらに、頑丈な腕時計を根底から支えているのが山形カシオが誇る金型加工技術だ。

たとえば、「MR-G」には、文字盤の目盛りや数字など腕時計の顔と言われる部分を精巧に仕上げるため、「ナノ加工技術」が活用されている。

さまざまな部品を「ナノレベル」、つまり1メートルの10億分の1サイズに加工できる技術なのだが、その技を目の当たりにしてしまった。

両サイドに取っ手がついた鉄の直方体。取っ手を引き上げると「CASIO」の文字が浮き上がる。ところが手を離すとCASIOの文字は鉄に吸い込まれるように沈んでいき、文字の輪郭も形跡も一切確認できないほど真っ平らな鉄の塊になってしまう。合わせ目がわからないレベルの加工精度。

これは、200ミクロンと20ミクロンの2種類のワイヤーに電気を流し、ワイヤー放電によって切削されたもの。しかも、「CASIO」の文字と外枠を別々に切り出しているというから驚きだ。

ちなみに我々日本人の髪の毛の太さは約50~100ミクロン。髪の毛よりも微小な世界で輝く山形カシオの技術力。これが世界のG-SHOCKを支えているのだ。

木村社長「G-SHOCKには他から入り込めない独自の世界観があると思っています。一言で言うと『他には真似できないもの』」

「世界屈指の緻密な金型加工や成形技術で国内生産にこだわり、永遠に求められる製品を私たちは作っています。メイド・イン・ジャパンであることはもちろんですが、「メイド・イン・山形」「メイド・イン・東根」と胸を張って自慢できる品質を常に追求しているんです」

目指すは感性を刺激するG-SHOCKへの進化

こだわりの逸品を常に同じ品質で作り続ける「ものづくり工場」でもある山形カシオ。

『最高のものづくりで 最高の喜びを』という想いを掲げ、長年G-SHOCKを手掛けてきたわけだが、誕生から40年以上経ってもその魅力は色褪せず、愛されている。

その理由を木村社長はこう語る。

「いくつかありますが、長く使えて安心という点が大きいかと思います。また、ローエンドからハイエンドまで幅広い価格帯があることで、それぞれの人生に合わせてブラッシュアップしていけるのも魅力の一つではないでしょうか」

「以前、お客様からいただいた手紙で『10年前に無くしたG-SHOCKが部屋の奥から出てきたときに変わらず正確な時を刻んでいて感動した』とお褒めの言葉をいただきました。それほどG-SHOCKはタフなんです。携帯やスマホが普及し、腕時計は必要ないと言われる時代ですが、そんなことに左右されない価値と強さがG-SHOCKにはあると思っています」

時計と電卓を主軸とするカシオ計算機は近年、様々な新規事業に参入。それらを支えているのも山形カシオと言えるだろう。

2024年に発売された小型AIペット「モフリン」を始め、骨伝導技術を用いた水中トランシーバー「ロゴシーズ」、さらに医療機器などG-SHOCK以外にも数多くの製品を山形カシオの工場が手掛けている。

幅広い分野で磨かれた技術は新たなG-SHOCKへと注がれ、さらなる進化へとつながっていく。

今年30周年を迎えるG-SHOCK最上位シリーズ「MR-G」から、6月12日に発売されたのが高性能ダイバーズ「FROGMAN(フロッグマン)」。

冒険心を刺激する洗練されたデザインは、G-SHOCKの歴史と革新が融合したあらゆる挑戦に応えるダイバーズウオッチだ。

気になるのはこれからのG-SHOCK。新たな機能やデザインへの挑戦を伺いたい。

「今後展開していきたい新たなG-SHOCKは「G-SHOCK nano」です。小型でG-SHOCK規格を満たしている画期的な商品で、nanoならではの展開や指だけでは無い使い方など色々検討していきたいと思っております」

「新たな機能としては、ショックリリース針や衝撃検知、磁場検知機能など、タフネス機能を更に追求して新たな価値を提供し続けていきたいと考えています。その中でも特に、MR-Gの様な高級路線でのモジュール開発に更に力を入れていきたいですね」

「それは単なる機能というだけでなく、精度だったり、薄さだったり、ガリウムソーラーの様な技術であったりと感性を刺激し時計そのものを進化させる、そういった技術開発に今後も取り組んでいきたいです」

取材協力
山形カシオ株式会社
カシオ計算機株式会社 公式X @CASIOJapan

文/太田ポーシャ

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