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「空気を読む」天才がチームを崩壊させる?組織の判断力を麻痺させる〝事なかれ主義〟の正体

2026.06.28

会議などの場で空気を読んで、「私も同感です」「おっしゃる通りだと思います」と同調する人たち、通称“イエスマン”。この言葉を聞いて、あなたはどんな人を想像しましたか?

一見、協調性があるように見えますが、心理学的には思考のサボりであり、組織の成長を阻害する要因にもなり得る存在なのです。安易な賛成がチームのパフォーマンスを大きく低下させる理由を暴き、本物のパフォーマンスを生み出すためのマネジメントを提案します。

同調がマイナスになってしまうのはなぜか

周囲の意見に同調する行動は、円滑なチームワークに貢献しているように映ります。しかし、これは自ら考えることを放棄した思考の手抜きの可能性も…。

実は、誰かの意見に無条件に乗っかるような姿勢は、チームに新しい視点をもたらさずにマイナスに働くこともあるのです。表面的な同調がなぜ組織の判断力を麻痺させてしまうのか、その裏に隠された心理を解説します。

■意見を考えること自体を奪う

会議で誰かの提案に対して深く考えもせず、「いいと思います」と賛成する。この行動の背景には、周囲に合わせることで自分の責任を無意識に分散させようとする心理が働いています。

心理学では、集団の人数が増えるほど、「誰かがやるだろう」「自分ひとりくらい手を抜いてもバレないだろう」と、ひとり当たりの貢献度や責任感が低下していく現象を「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」と呼びます。職場で周囲との摩擦を避けるために同調を繰り返す人は、まさにこの「社会的手抜き」に陥っている状態です。

本人は波風を立てない優秀なフォロワーを気取っているかもしれませんが、その実態は主体的な思考や発言の責任から逃れているにすぎません。このような思考の手抜きがチーム内に蔓延すると、組織全体の活力を低下させる原因になります。

■正しいか正しくないかを判断する思考を奪う

全員がイエスと言い合う環境が定着すると、誰もリスクや問題点を指摘しなくなるため、チームとしての判断能力が損なわれてしまいます。

これは心理学において、まとまりの強い集団ほど客観的な思考を失い、不合理な決定を下しやすくなる「集団思考(グループシンク)」と呼ばれる現象です。批判的な意見や異なる視点が排除されたチームは、内輪の調和を乱さないことばかりが優先され、多角的な視点が失われたり、致命的なリスクに対して盲目になってしまいます。

同調を繰り返すメンバーたちは、決して組織の足を引っ張ろうとしているわけではありません。むしろ良かれと思って空気を読んでいるケースがほとんどです。しかし、こうした表面的な賛成が積み重なると、チームの判断力は低下する可能性が高くなります。

なぜオンライン会議で『イエスマン』が量産されるのか

前の章の集団心理がもたらす同調行動は、リモートワークやオンライン会議が普及した現代において、さらに強まる傾向にあります。対面よりも相手の細かなニュアンスが掴みにくい画面越しの環境は、普遍的な集団の手抜きや思考停止をさらに増幅させてしまうからです。デジタル環境だからこそ陥りやすいコミュニケーションの盲点を見ていきましょう。

■本音を隠すことがチームの主導権を失わせる

オンライン上のやり取りでは、お互いの表情や部屋の空気が伝わりづらいため、摩擦を恐れてとりあえず賛成しておくという選択が急増します。相手の反応が予測しにくい画面越しだからこそ、わざわざ異論を唱えて気まずい雰囲気になるのを避けたいという心理が強く働くのです。

■優しいだけの職場がパフォーマンスを下げる

心理学や組織論などで使われる「心理的安全性」という言葉を一度は聞いたことがあると思いますが、その言葉の意味は、誰も傷つかない、何でも認め合える優しい環境のことだと多くの人が誤解しています。

この心理的安全性とは、本来、チームのために必要なことであれば、たとえ耳の痛い話であっても拒絶される恐怖なしに気兼ねなく発言できる状態を指す言葉です。お互いに気を遣い、同調で意見の一致を取り繕う行為は、この心理的安全性とは真逆の、ただの事なかれ主義にすぎません。

“イエスマン”を生まないためのマネジメント方法

集団による思考の手抜きや、オンライン上の表面的な同調を防ぐためには、マネジメント層の関わり方が重要になります。メンバーが周囲の目を気にせず、異なる意見を安心して口にできる環境をどのように作ればよいのか。そのための2つのアプローチをお伝えします。

1.若手や立場の低い人から意見を求める

立場や年齢の差による同調を防ぐ最も簡単な方法は、発言の順番を若手や立場の低いメンバーから順に意見を聞いていくことです。

立場が上の人や声の大きいリーダーが最初に発言してしまうと、その意見が場の正解となり、後から続くメンバーは異論を唱えにくくなります。最初に意見を求められる側は心理的な負担を感じるかもしれませんが、「上の人に合わせる」という選択肢が物理的に存在しないため、自分の考えをそのまま口にしやすくなるなどの利点があります。

リーダーは最後に発言する、というシンプルなルールを徹底するだけで、上下関係の忖度による同調を未然に防ぐことができます。

2.リーダー自らが弱さを開示する

メンバーの主体的な発言を引き出すためには、まずリーダー自身が完璧な存在であることを手放さなければなりません。

立場が上の者が常に正論だけを語り、失敗を隠すような組織では、周囲は「間違えてはいけない」と萎縮し、無難な同調を選ぶようになります。リーダーが自らの失敗談を共有したり、「この部分について自分の知識が足りないので意見を教えてほしい」と率直に頼る姿勢を見せることが、結果としてメンバーの安心感につながります。

リーダーが率先して自分の弱さや不完全さを開示していくことで、チーム内の心理的な壁が取り除かれ、本音を言い合える関係性が作られていきます。

あなた自身が“イエスマン”にならないためにも

職場の安易な同調を防ぐための工夫は、周囲のためだけではなく、自分自身の目を曇らせないためのものでもあります。

人は誰しも、周囲の意見にただ合わせているほうが楽だと感じてしまう瞬間があります。だからこそ、あえて異論が出やすい仕組み作りや、自分自身が思考の手抜きに陥っていないかを振り返る視点を持つことが大切です。

異なる視点や違和感を歓迎する姿勢を持つことが、結果として、チームと自分自身の成長を促すことにつながります。

文・構成/藤野綾子

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精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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