スニーカーメーカーのアシックスは、オニツカタイガーブランドに関連する事業を分割し、100%子会社の株式会社OT GROUPに承継すると6月10日に発表しました。事業を独立性の高い事業運営体制に移行し、意思決定の迅速化を図りつつ、競争力を高めることが狙い。
オニツカタイガーは海外を中心に人気を集めており、分社化はスニーカー市場におけるシェア拡大に向けた経営陣の期待感の高さを垣間見ることができます。
大手メーカーは足元で苦戦をしており、分社化のタイミングも絶妙なものだと言えるでしょう。
アシックスの中でも利益率が高い優等生
オニツカタイガー事業の2025年度における売上高は1365億円。前年比で実に43%も増加しました。全エリアで増収でしたが、特に欧州と中華圏で根強い人気を獲得しています。
アシックスの2025年度の会社全体のインバウンド売上は前年比84%増の474億円。このうち、およそ9割の415億円はオニツカタイガーが占めています。
インバウンドのエリア別売上でアメリカは76億円となり、前年の約2.8倍に急拡大しました。フィリピンも約1.5倍、台湾が1.4倍に伸びています。
世界的に抹茶がブームになっていますが、要因の一つにインバウンドの増加があると言われています。オニツカタイガーがアメリカ人観光客に受け入れられていることは、巨大市場である北米エリアでのシェア拡大にも期待できるでしょう。
オニツカタイガーはアシックスの増収をけん引する存在ですが、利益率が他の事業に比べて高いという別のメリットもあります。ランニングカテゴリーの利益率は23.7%、スポーツスタイルが29.3%。オニツカタイガーは37.7%。
一般的にブランド力の強い商品は高付加価値化が可能で、利益率は高い傾向にあります。オニツカタイガーの強さはこのブランド力にあるのです。
コモディティ化の象徴となったナイキ
ブランド構築に尽力したのが新会社OT GROUPの社長で、オニツカタイガーの事業責任者を務めてきた庄田良二氏。外資系ファッションブランドを経て、2011年にアシックスに入社しました。当時、アシックスはスポーツブランドとしての側面が強く、ファッションブランドのノウハウに欠けていました。
庄田氏はクラフトマンシップを重視。靴の製造を手作業で行い、意図的にひび割れなどの加工を入れることで、手づくり感を演出しました。スニーカーの大量生産品というイメージを排し、一つひとつに独自性を持たせたのです。
この脱コモディティ化は、オニツカタイガー人気において重要な役割を担っているでしょう。
足元ではナイキやアディダスといった大手メーカーが苦戦しているからです。
ナイキは2025年12月から2026年2月までの売上が前期と横ばい。シューズ部門の売上は前年同期間比でわずか2%しか伸びていません。北アメリカは6%伸びているものの、中華圏は7%減少しました。中国以外のアジア、南アメリカの売上も横ばいで停滞中。
ナイキはコモディティ化の象徴的な存在になってしまいました。2020年にジョン·ドナホー氏がCEOに就任すると、徹底的な合理化を図るようになりました。カテゴリーを統合し、製造プロセスを簡略化したのです。
ナイキはハイテク技術を盛り込んだ斬新なスニーカーを送り出してきましたが、売れ筋のローテクスニーカーや復刻版ばかりが目に付くようになったのです。
ジョン·ドナホー氏はIT業界に強みを持つ人物で、コンサルティング大手のベイン·アンド·カンパニーでキャリアを磨きました。スニーカーよりも、組織のデジタル化や経営合理化に強みを持つ人物だったのです。ドナホー氏は2024年に退任。ナイキは再びブランド力を取り戻すべく、歩み始めています。
新興ブランドが高機能なスニーカーを次々と市場投入
アディダスも苦戦気味。2026年1月から2026年3月までのシューズの売上高は前年同期間比で2%減少しました。アパレルの売上が24%伸びて全体を支えているものの、主力のスニーカーが売れなくなっているのです。
アディダスはローテクスニーカーに強みがあり、一時はブームをけん引していましたが、その人気が一服しているようにも見えます。
こうした中で、売上を伸ばしているのが新興スニーカーブランド。ホカとアグを展開するアメリカ企業デッカーズ·ブランズは2026年1月~3月の売上が前年同期間比10%増加しています。2つのブランドの売上は過去最高を更新しました。
スイスのオンも好調。特にアメリカでの人気が高く、ナイキやアディダスのシェアを奪っていると言われています。
オンは独自のクッションシステムを持ち、軽快感のある履き心地の良さが特徴。日常使いから軽い運動まで幅広い利用シーンをカバーしています。
ホカもクッション性が高く、衝撃を吸収する機能性の高さがセールスポイントです。膝や関節の痛みを軽減すると言われています。
消費者の目はスニーカーの機能性やデザイン、ブランドストーリーを見るようになっています。超有名ブランドの魔法が解けたと言えるのかもしれません。
オニツカタイガーが躍進し、分社化したのはちょうど新興ブランドが注目されているタイミングなのです。今後の展開には期待ができます。
文/不破聡







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