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〝戦いの場〟を整えてきたキリン、〝戦う姿〟を進化させたアディダス、パートナー企業が語るサッカー日本代表の舞台裏

2026.06.29

かつてのサッカー日本代表があと一歩のところで届かなかったアメリカの地に、夢の祭典が再び帰ってきた。現在の代表チームが目指すのは、あくまで〝優勝〟。出場すらかなわなかった32年前を知る世代からすれば、考えられないほどの高い目標設定だ。その可能性はゼロではないと言われるほどまでに代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか!?

日本サッカーはめざましい進化を支えているのが各クラブのアカデミーだ。未来を背負う子どもたちをどうやって獲得し、どう育てているのか、その最前線を追った。今回は、その中から鹿島アントラーズの育成体制について迫った内容を特別にお届けする。

今や世界と互角に渡り合う日本サッカー。その強さの源は戦術や選手の進化だけではない。現在発売中のDIME8月号では、環境整備を支えた「企業サポート」というもうひとつの側面をフューチャー。単なる資金援助を超え、共に「時代」を築き上げた支援を取材した。

約半世紀の伴走。キリンとJFAとの共創

 日本サッカーは今、かつてない高みに到達しようとしている。W杯での躍進や海外で主軸として活躍する選手の存在など「新時代」を迎えたと言っても過言ではない。

 しかし華々しいピッチの裏側には、日本代表を黎明期から支え続けた企業の存在があった。そのひとつがJFA(日本サッカー協会)オフィシャルトップパートナーを務めるキリン。同社がサポートを始めたのは1978年。サッカーが現在のような巨大ビジネスとして成立するはるか前のことだ。

「当時、原宿にあったキリン本社と、JFAが入っていたオフィスがJR山手線を挟んで向かい側にあったんです。そこで、スポンサー探しに苦労されていた長沼専務理事からお声がけいただいたそうです」と、キリンのマーケティングを担う泉伸也さんは語る。

 当時は大企業に対して社会的な役割が求められはじめた時代。キリンもCSR(企業の社会的責任)の形を模索していた。

「志高く、と言いたいところですが、最初は『ご近所付き合い』の感覚だったと聞いています。その上でサッカー普及と社会貢献という目的が合致し、78年5月のジャパンカップ(現:キリンチャレンジカップ)の特別協賛からすべてが始まったのです」

 とはいえ、サポート開始から約20年間、日本はW杯に出場できなかった。Jリーグ開幕前はいわゆる「冬の時代」である。それでも同社は支援の手を引かなかった。

「純粋な社会貢献としてスタートしたのですが、93年のドーハの悲劇、97年のジョホールバルの歓喜を経てサッカー人気が高まり、スポーツマーケティングのフェーズへと移行しました。そこからアンダー世代やなでしこジャパンへの支援と拡大していったのです」

JFA

©JFA

 先行投資的な側面が強い中、撤退という経営判断はなかったのか。

「サポートをやめるという決断は、社内には全くありませんでした。長く続けてきたおかげで世の中の約4割の方に『キリンといえばサッカー日本代表』と認知していただけるようになり、何より従業員が誇りを持てるという、インターナルブランディングの面でも非常に有効に機能しています。いい時だけでなく、厳しい時も伴走し続けたからこそ、現在の強固な関係性が築けたのだと思います」

 2010年代に入ると、活動は社会的価値と経済的価値を両立させる「CSV(Creating Shared Value)」へと進化した。その象徴が復興支援だ。

「11年の東日本大震災後『JFA・キリン スマイルフィールド』として東北3県の小学校で元日本代表選手によるサッカー教室を実施し、約6年間で10万人以上の小学生に笑顔を届けることができました。その後は大人や地域外の人も巻き込むアトラクション形式へとアップデートし、コミュニティ再生という社会課題解決にも取り組んできました」

 そして現在、キリンが新たなCSVの柱として推進しているのが「ウォーキングフットボール」。これは年齢や性別にかかわらずフラットに楽しめるスポーツだ。

「コロナ禍を経てリアルな繋がりが希薄化する中、家族や仲間との絆を深める『キリンファミリーチャレンジカップ』を全国で開催しています。お孫さんとおばあちゃんが一緒にボールを蹴り、パス交換で心が通じ合う。これはお酒で乾杯するのと同じ、人と人を繋ぐすばらしいコミュニケーションの形のひとつだと思っています」

 社会課題解決への熱量は、24年の能登半島地震でも発揮され、キリンとJFAのスタッフはほぼ手弁当で被災地へ出向き、避難所でウォーキングフットボールを実施。

「このイベントではサプライズで森保一監督にも来ていただいたんです。大きな看板を出して露出を図ることだけでなく、能動的な活動をJFAさんと共に実行できる関係性こそが、単なるスポンサーを超えた『真のパートナー』だと自負しています。これからもサッカーの力で社会課題を解決していく伴走者であり続けます」

 草の根の活動から代表強化まで、約半世紀にわたり日本代表を根底から支え、独自の企業価値を創出してきたキリン。その揺るぎないビジネス哲学が、新時代における躍進の土台となっている。

泉 伸也さん

キリンホールディングス マーケティング戦略部
主査 泉 伸也さん

1999年入社。広報などを経て2017年より現職。約半世紀に渡り、熱量高く応援し続けるサッカー日本代表を通じ、社会的・経済的価値創出に取り組んでいる。

キリンチャレンジカップ

「キリンチャレンジカップ」「キリンカップサッカー」への特別協賛でもおなじみ。『代表応援缶』なども応援の後押しに。

ウォーキングフットボール

幅広い世代が一緒にプレーする「ウォーキングフットボール」も実施。代表選手のサプライズ参加もあり、世代を超えて楽しめる。

高機能ユニフォームの提供で選手のパフォーマンスを支援

 一方のアディダスは、プロダクトという側面から日本代表の戦闘力をアップデートしてきた。1999年からJFAと独占契約を結ぶ同社だが、根底には創業者アディ・ダスラーの思想がある。

「アスリートのパフォーマンスを最大限に引き出すギアを開発し、提供する。この思想のもと、日本においてもサッカーという世界的スポーツをしっかり支えていこうとパートナーシップが始まりました」

 そう語るのは、アディダス ジャパンの髙橋慶多さんだ。サッカーにおけるパフォーマンスを高める方法は様々あるが、最新テクノロジーを導入して、選手のポテンシャルを最大限に生かすウエアの進化も、それに直結している。

「開発において重視していることのひとつに『衣服内気候』があります。選手の体が冷えすぎず、熱くなりすぎない最適な体温をキープするため、通気性、吸湿速乾性を常に追求してきました。過去のモデルと比較すると、最新モデルは全く異なると言っていいほど、大きく進化しています」

 最新のオーセンティック(選手着用)モデルでは、その技術革新がさらに一段階引き上げられている。象徴であるスリーストライプスは従来より太く、視認性が高まっただけでなく、史上初めて生地に直接編み込む手法を採用した。

「直接編み込むことで、通気性を持たせています。さらに胸のアディダスロゴには見る角度によって見え方が変わるレンチキュラー技法を採用し、機能性だけでなく美しさも徹底的に追求しました」

 さらに興味深いのは、こうしたプロダクトの根幹をなすコンセプトデザインの決定プロセスだ。開発自体はドイツ本社と進めていくというが、そのコンセプトやストーリーは日本発信だという。

「アディダス ジャパンの開発担当者を中心に日本でコンセプトを作り、本社へプレゼンしてデザインへ落とし込んでいます。今年のホームユニフォームのコンセプトは『HORIZON(水平線)』。『最高の景色※』を見に行くため、水平線のグラフィックを象徴的に反映させました」

 また、髙橋さん主導のもと、今回は新たにユニフォームの主題歌も制作。〝美しい衣服〟の意味も込められたAdoが歌うこの楽曲「綺羅」とともに、声援のボルテージも上がりまくりだ。

 両社を中心とした多くの企業が多角的に支え育んできた日本サッカーの総合力は今、かつてない成熟期を迎えている。HORIZONの先にある最高の景色を求めて挑むW杯、そして「JFAの約束2050」に掲げられた目標に向け、歩みを加速する日本サッカー。その進化にこれからも目が離せない。

※今回のW杯の日本代表のキャッチコピー、「最高の景色を2026」より

JFA アディダス DREAM ROAD

育成世代へ早期に世界基準の環境を提供する「JFA アディダス DREAM ROAD」。未来の日本を牽いんする人財を創出する。

髙橋慶多さん

アディダス ジャパン 
アディダスマーケティング 事業本部 シニアマネージャー 
髙橋慶多さん

2014年入社。24年より現職。フットボール領域における代表チームのPR・コミュニケーション戦略などを統括。自身も高校サッカーに打ち込んだ経験を持つ。

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