累計26万ダースの大ヒット!ルールぎりぎりの反発性能を実現したアルペンのゴルフボール「TOBUNDA ONE LINE」が売れた理由
2026.06.13
■連載/ヒット商品開発秘話
第一打は遠くに飛ばしたい――。ゴルファーならそう思うだろう。
いま、「飛ぶ」と話題のゴルフボールが、ゴルフ専門店『ゴルフ5』の店舗とAlpen onlineで販売されている『TOBUNDA ONE LINE』。2026年4月末時点で26万ダースが販売されている。
2025年8月に発売された『TOBUNDA ONE LINE』は、ドライバーの飛距離性能を追求したゴルフボールで、公式戦で使用できる公認球。初速アップに貢献する、ルールぎりぎりの反発性能を実現した。
また、目標に向かって構えやすくなるよう、アライメントスタンプを4面に配置。パッティング時にキレイな順回転が生まれると1本のラインに見え、自身のストロークの正しさやボールの軌道がより確認しやすくなった。商品名の『ONE LINE』は、この点に由来したものである。
新商品で再び選ばれる存在になる
ゴルフ5を展開しているのはスポーツ用品販売のアルペン。同社は自社ブランド商品も数多く手掛けており、マス化商品(一般消費者向けに販売する量産品)の開発を活発に推進している。
『TOBUNDA ONE LINE』もこの流れを受けて誕生したものだが、開発の背景には競合品が市場を席巻し、自社ブランドのゴルフボールの売れ行きが低迷していたことがあった。このため、ゴルフボールの新商品が強く望まれていた。
「競合品にシェアを奪われてしまい、売上構成比が逆転されました。バイヤーからも『新しい商品が欲しい』と要望されました」
こう明かすのはスポーツ・ゴルフギア事業部ゴルフギアグループの櫻井裕幸氏。自社ブランドのゴルフボールが市場で再び選ばれる存在になることを目指し、2年ほど前に企画された。
規格ギリギリを狙った反発性能
ゴルフボールは構造から、1ピース(カバーとコアが一体化)、2ピース(カバーとコアで構成)、3ピース(カバー、中間層、コアで構成)、4ピース以上(カバー、複数の中間層、コアで構成)の4つに分けることができるが、『TOBUNDA ONE LINE』は2ピース構造を採用している。2ピースは低コストでつくれ、飛距離を伸ばしやすいという特徴を持つ。
飛距離を伸ばすために主にしたことは、カバーとコアの柔らかさ、カバーの肉厚の調整であった。「数パターンの試作をつくってロボットによるフィールドテストを繰り返し実施し、ルール上限内で最大限の飛距離が出せる仕様を見極めていきました」と櫻井氏は話す。
公認球とするためには、初速と総飛距離をルール上限内に収める必要がある。また、飛距離を伸ばす上でネックとなるスピンの発生を抑えるため、カバーの素材や肉厚、ディンプル(表面の凹み)の数や形状に工夫が求められた。櫻井氏は次のように話す。
「反発性能を高めるためにコアを固くすると、スピン量が増えて飛ばないボールになってしまいます。逆に柔らかすぎても、反発性能が損なわれて飛びません。適度な硬さと厚みのカバーを組み合わせることで、ルールぎりぎりの反発性能を維持しつつ、スピンを抑制して飛距離を伸ばす必要がありました」
114のデザインから12色に絞り込む
納得のいく性能が出るようになった後も、カラー展開を決めるのに時間を要した。
『TOBUNDA ONE LINE』は全12色展開している。実に豊富なカラーバリエーションだが、当初の予定は6パターンだった。
「前モデルは5色でした。当初は5ないし6色で考えていましたが、上司にその旨を報告したところ、『いままでと同じカラー展開やコンセプトだとつまらないね』と返されてしまいました」
このように話すのは、ゴルフ商品部クラブ・ギアグループ マネジャーの森田秀彦氏。上司の言葉を受け、清水の舞台から飛び降りたつもりで8色展開すると上申したものの、上司の反応は「まだつまらないね」だった。
「8色でも多いと思っていたのですが……」と振り返る森田氏。ゴルフボールは売れるカラーがホワイト、イエロー、オレンジ、ピンクあたりに限られている。在庫を抱えるリスクがあることから、カラーバリエーションを拡大するのには慎重だった。
森田氏の上司が6色では「つまらない」と評した背景には、いいデザインが多かったことがあった。ベースカラーとアライメントスタンプを組み合わせてつくったデザインは114パターン。これほど多くのデザインパターンをつくったのは、アライメントスタンプの視認性が高いという価値も提供するためであった。この114パターンのデザインから、ゴルフ5の販売員やゴルフをよくする社員の声などを踏まえ20数パターンにまで絞り込み、サンプルをつくった。
ゴルフボールでこれほど多くのデザインサンプルをつくるのは、ほぼ前例がない。出来栄えのいいものが多かったことから、6種類に絞ってしまうのはもったいなかったというわけである。
低価格のゴルフボールでは異例のスリーブ単位の販売
PB(プライベートブランド)のゴルフボールは年間20万ダース前後売れるが、『TOBUNDA ONE LINE』は年間40万ダースを目標に発売を開始。このまま順調に売れ続ければ年間目標は達成できそうな見通しだ。現状では売れ行きは非常に好調に推移しているといえる。
発売翌月の2025年9月、同社が主催する『ゴルフ5レディース プロゴルフトーナメント』においてギャラリー向けにボール発売を告知し、パターマット上で12色連続パッティングチャレンジを実施。すべて成功したら非売品の12色セットをプレゼントしたことがSNSで話題になったこともあった。なお、非売品の12色セットは2025年11月に10万ダース達成記念として数量限定で発売されている(現在は販売終了)。
販売に当たっては試しに使ってもらうことを重視。目立つよう圧倒的な大量陳列をエンド(店頭で一番目立つ陳列棚の両端)で実施したほか、来店客に積極的に声をかけ勧めるようにした。価格設定も工夫し、1スリーブ(3個入)499円/1ダース1699円(2026年6月1日時点)と、1ダースの価格を割安にしている。
『TOBUNDA ONE LINE』のような低価格のゴルフボールで、スリーブ単位で売ることはこれまで考えられないことだった。低価格ゴルフボールは主にロストが多い初心者が使うことから、何度も買いに行く手間を省くため1ダース3000円以下のゴルフボールはスリーブ単位で販売しないのが常識。しかし『TOBUNDA ONE LINE』は、まずは試してもらいたいという理由から、店頭では低価格であってもスリーブ単位で販売した。
1スリーブ単位での販売もすることで、スリーブごとに異なる色をチョイスできるようになったのは、従来のゴルフボール販売にはない特徴となった。1ダース分買うと通常はすべて同じカラーになるが、全12色展開の特色を生かすことで従来になかった選ぶ楽しみをプラスした。
ゴルファーにどれだけ使われているかは、ゴルフ場内の練習場に行くとわかるという。森田氏はこのように明かす。
「ゴルフ場内の練習場で使うボールはロストボールですが、現在どこのゴルフ場の練習場に行っても、10球のうち2,3球『TOBUNDA ONE LINE』が混ざっています。2,3年前は前モデルのシェアを奪った競合品が同じくらいの割合で混ざっていましたので、この1年でかなり市場を席巻できたと捉えています」
色別の売れ行きを見ると、ホワイトに赤いアライメントスタンプを入れたものが一番売れている。ベースカラーがホワイトのものは総じて売れ行きがいいが、予想外に売れているのが、4番目に売れているピンクにホワイトのアライメントスタンプを入れたもの。売れ行きのバラつきが思っていたより小さいことから、現在のところデザインの差し替えなどは予定されていない。
2026年3月には数量限定で〈SAKURA COLOR〉を発売した。「ピンクカラーの売れ行きが好調なことから企画しました」と櫻井氏は話す。
公認ボールのため、発売に当たってはR&A(全英ゴルフ協会)の適合球リストへの掲載を申請しなければならず、受理されるまでに2か月ほど時間がかかる。製造できるのが申請受理後になることから、春にギリギリ間に合った形だ。
季節に合った限定色は今後も発売していきたい考えだという。
取材からわかった『TOBUNDA ONE LINE』のヒット要因3
1.対象ユーザーの明確なニーズに応えた
遠くに飛ばすことができるディスタンス系のゴルフボールの中でも一番飛距離が出るものを目指して開発。店舗に訪れる初心者が飛距離性能を求めていることがわかっているので、明確なニーズに応えた。
2.選ぶ楽しみがある
カラーは全12色と従来のゴルフボールにない多色展開。従来であれば1ダース買うとすべて同じ色であったが、スリーブ単位で色を変えることができるので、他のゴルフボールにはない選ぶ楽しみがあった。
3.絶妙な価格設定で購入を促進
低価格のゴルフボールでは実施してこなかったスリーブ単位での販売を実施。気軽に試しやすくしたことに加え、1ダース(=4スリーブ)購入すると1スリーブの当たりの価格が安くなる価格設定により、大量購入も促しやすかった。
ゴルフ5での現在の売上を見ると、『TOBUNDA ONE LINE』のシェアは伸びているという。断定はできないが、それまでの競合品のユーザーが『TOBUNDA ONE LINE』に多く流れた可能性は十分考えられる。ボールの性能のほか、店頭での売り方や商品の見せ方、価格設定、接客も含め、アルペンの総合力で成し得たヒットといえるだろう。
製品情報
https://store.alpen-group.jp/golf5/campaign/one_line/
取材・文/大沢裕司
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