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超巨大窓と豪華な車内!リゾート列車「えちごトキメキリゾート雪月花」に込められた想いとこだわり

2026.06.07

新潟県上越地方を走るリゾート列車「えちごトキメキリゾート雪月花」。大きな窓からは妙高山と日本海の景色を楽しむことができ、車内ではハイクオリティな食事に堪能できる。2025年には、鉄道関連では唯一となる国際デザインコンペティション「ブルネル賞」において鉄道車両部門・奨励賞を受賞。第三セクター鉄道では初となる受賞となり話題を呼んでいる。

今回は、えちごトキメキ鉄道株式会社 初代社長 嶋津忠裕さんとデザイナーの川西康之さんに、雪月花が誕生した経緯やこだわり、今後の展望についてお話を伺った。

左)嶋津忠裕さん、右)川西康之さん

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

新潟県の美しい風景を楽しんでもらうために、窓をできるだけ広く設計

はじめに、嶋津さんは雪月花の誕生までの経緯についてこう説明する。

「北陸新幹線が金沢まで開業することになった当時、県知事は新幹線の通る新潟にあまり有名な見どころがないことに危機感を持たれていて、『目玉になる列車を作れないだろうか』と相談を受けたのが始まりです。知事からは『思い切って作ってください』『日本ではあまり見られないような列車を作ってもらいたい』とお話がありました。どのような列車にするか悩みましたが、日本海と2500m級の妙高山、高低差のある素晴らしい沿線の風景を楽しめるように、思い切って窓を広く取る列車を考えました」(嶋津さん)

嶋津さんはデザイナーの川西さんに声を掛け、本格的に開発がスタート。最大限に窓を広く取ることを第一にデザインを進めた。

「北陸新幹線沿線には、軽井沢・長野・立山黒部アルペンルート・金沢・能登と日本を代表する錚々たる観光地があり、沿線にはいくつもの観光列車が乱立している状況です。本当に著名な観光地が競い合っている中で『圧倒的1位を作る』のが最初のお題でした。模型と図面を持って知事室へ行った際、『窓ガラスはもっと大きくしてください』『カナダの観光列車カナディアンロッキー号のようにできないか』とご要望をいただきました。しかし、日本の法令上ではそれができないため、車両メーカー・ガラスメーカーを含め何度もやり取りをして、窓を限界まで大きくしました」(川西さん)

第一回より

ガラスを広く取るための試行錯誤。ボディの強度をいかに保つか

「雪月花」という名前にした経緯について、嶋津さんはこう話す。

「日本海の荒波、田園風景、そして妙高山の景色の素晴らしさを雪月花で楽しんでいただきたいと考えました。季節によって変化する風景がこの沿線の魅力で、中でも特に強調したかったのが『雪』です。ネーミングの際には白楽天の漢詩『雪月花の時に最もあなたのことを思い出す』というくだりから、最もこの沿線らしさ、新潟らしさを出すのに、雪月花という名前を使いたいと思いました」(嶋津さん)

窓を広く取ることの難しさについて、川西さんは次のように説明する。

「車体は2両編成で、床の下のエンジン・車輪はJR西日本で開発された車両をベースに作っています。ボディは鉄と決まっていたのですが、窓を大きくする中で窓の面積を取りながらボディの強度をどこまで保てるかを何度もシミュレーションしました。本当はガラス1枚・ボディの長さ20mで作りたいんですが、揺れやねじれ、風圧を考えると割れてしまう可能性もあります。ガラスが力を受ける部分、鉄が受ける力の部分をいかにバランスよく配置し、お客様の視点で景色を最大限に楽しんでいただけるかを検討しました」(川西さん)

それに加え、ガラス面の大きい車体では熱の問題もあった。

「窓ガラスが大きいと車内が温室状態になり、夏はとても暑くなります。自然光と人工光とのバランスを大きな課題でした。また、トンネルがない山へ向かう『妙高はねうまライン』と海岸線を走る『日本海ひすいらいん』、まったく対局な場所を走ります。場所によってはガラスの車体が鏡のようになってしまうため、バランスを取りながら丁寧に作業を進めました」(川西さん)

第二回より

他の乗り物にはないサービスと視点を提供

過去にホテル業を経験した嶋津さんは、車内での接客にもこだわった。

「車内での接客に対して『マニュアルを作ってはどうか』という話もあったのですが、反対しました。どうしたかというと、SERVつまり笑顔(S)・アイコンタクト(E)・認識(R)・お声がけ(V)をやってくださいと伝えました。お客様をとにかく笑顔でお迎えし、顔を伏せずにアイコンタクト、お客様の目を見て笑顔で挨拶をする。そうすると、どういうお客様なのか、どういう状態なのかがわかります。お客様が求めているものを想像しながらお声かけをしてくださいと伝えた結果、アンケートで『素朴で一生懸命なところが良かったです』とお声をいただきました。これは他の乗り物にはないサービスだと思っています」(嶋津さん)

大きな窓だけではなく「視点を変える」ことにもこだわり、車内にはさまざまな工夫も施されている。

「信越線の線路は、明治時代と同じ位置を走っています。つまり、100年前と同じ景色なんですが、雪月花は新しい視点を提供しなければいけません。乗車時間は3時間ほどですが、同じ席に座りっぱなしだとどうしても疲れてスマホを見始めてしまう。そうすると地下鉄に乗っている体験と変わらなくなってしまうので、ハイデッキまで来ていただけるようにするなど、飽きさせない視点の選択肢をたくさんご用意しました」(川西さん)

第三回より

新潟県には未発掘の宝がたくさん!地域と一緒に沿線を盛り上げる

嶋津さんは、これからも沿線の魅力を発信し続けたいと語る。

「日本海の海の幸やお米、お酒などたくさんある沿線の魅力をまだまだ伝えきれていません。沿線の宝をどんどん紹介していきたいですね。それに加えて、上杉謙信のファンは全国・海外にたくさんいらっしゃいます。歴史の部分でもっとアピールできると面白いのではないかと思います。まだ未発掘の宝がいっぱいあるということですね」(嶋津さん)

川西さんは、列車だけではなく地域が一緒に盛り上がることが重要だと語る。

「鉄道車両は、限られた中で点と線、面へと広げていかなくてはいけません。観光列車だけでなく、地域も元気になることが大切です。旧中心市街地と呼ばれる新潟県西部の上越・妙高・糸魚川は、残念ながらシャッター商店街が駅前に広がっている箇所が見受けられます。その商店街と一緒に雪月花が元気になってほしい。これが一番の夢です。課題は多いんですが、鉄道が走ることで街が元気になることが、鉄道のデザインの究極的な目的です。時間はかかっても、そこに一生懸命取り組みたいと思います」(川西さん)

最後に、お二人からリスナーに向けてメッセージをもらった。

「地域の方と一緒に沿線を盛り上げ、もっと魅力を知っていただきたいです。そのためには、新たな魅力、新たな運行といったソフト面の開発が重要だと思います。『雪月花に乗って良かった』と思っていただけるよう、これからもファン作りを続けていきます」(嶋津さん)

「沿線には、スキーと温泉だけではなく、素敵な街と歴史、そして何よりも豊かな土地があります。雪月花が走る地域は一度も飢饉がないそうです。それだけ豊かな土地をもっと地域の人たちと一緒に大事にして、良い点を伸ばし、夢が持てる地域にしていく。それを鉄道と一緒になって進めていきたいです。そんなことも、少しお見知りおきいただきながら、ぜひ雪月花にご乗車いただいて、豊かさを楽しんでいただけたらと思います」(川西さん)

第四回より

画像引用:https://www.echigo-tokimeki.co.jp/setsugekka/about.html

文/久我裕紀

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