近年はZoomなどのWeb会議システムがずいぶんと浸透したが、社内外の遠隔プレゼンやセミナー、研修へ立て続けに参加し、疲弊していないだろうか。発表する機会が増えた人もいるかもしれない。だからこそ生まれているのが「聞きパ(=聞くパフォーマンス)」向上の課題だ。
LOOVが行った調査によれば、約8割のビジネスパーソンが「説明を聞くこと」に疲弊していることがわかった。そこで今回は、LOOVの代表 内田雅人氏や、一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会代表理事の西原猛氏に、「聞きパ」が求められる時代背景や乗り切るポイントを聞いた。
「聞きパ」が求められるようになった背景
同調査では、「知りたい情報にたどり着かない」「結論が分かりにくい」など、説明を聞くことに疲れや負荷を感じる経験をしたことが「よくある」と「時々ある」と回答した人が75.0%にも上った。
また営業説明や商談中に「つまりこういうことだろう」と自分で意味を推測・理解し直さなければならない経験がある人は77.9%に。「解読作業」が求められていることもわかった。
このような調査結果を、同社は「聞きパ」の問題として提起している。「聞きパ」とは、聞くパフォーマンスのことで「聞き手が少ない負荷で、短時間に、納得感を持って理解できる状態を設計できているか」を指す。
疲弊する聞き手が増えていることがわかれば、話し手は強く意識し、改善する必要がありそうだ。
では、なぜ「聞きパ」が求められるようになったのか。その時代背景について、代表の内田氏は次のように答える。
【取材協力】
内田 雅人氏
株式会社LOOV 代表取締役 CEO
2010年に(株)イノベーションに入社し、1500社以上の企業の営業やマーケティングを支援。その後、執行役員
及び子会社の取締役を歴任。2016年には、同社のIPO(マザーズ上場)を牽引。2022年に株式会社LOOVを創業。
「労働人口が減少する現在の日本において、一人当たりの生産性を高め、効率よく判断する必要性が増しています。加えて、タイパを重視するデジタルネイティブ世代がビジネスのメイン層となったことも大きな要因。話し手が良かれと思って丁寧に説明しようとするほど、結果的に聞き手の時間を奪い、判断の足を引っ張るという悪循環が起きています。この矛盾が、現代のビジネスシーンで限界を迎えたことが『聞きパ』が求められている背景だと考えます」
この「聞きパ」問題について、AI技術で改善を試みるのが同社のAIプレゼンテーションツール「TALKsmith(トークスミス)」だ。その一機能VideoAgent(動画エージェント)は、聞き手が「24時間365日、自分が知りたいと思った瞬間に、必要な情報だけ」を対話形式でピンポイントに引き出し、その場ですぐに「効率よく判断する」ことを可能にする。
AIが聞き手の情報処理の負担を最小限に抑えるため、聞き手は、従来の動画やWEBサイトのように、一方的に流れる情報を我慢して見たり、複雑なテキストを読み込んだりする「解読労働」が不要になる。
「私たちは聞き手が主導権を持って『効率よく判断できる』新しいコミュニケーションのスタンダードをつくっていきます」(内田氏)
今後もAI技術の進化に期待したい。
「聞き手を疲弊させない」ためにプレゼンで注意すべきポイント3つ
しかしながら、日々、プレゼンやスピーチの機会が訪れる人もいるだろう。話し手として、「聞きパ」を改善するにはどうすればいいか。「聞き手を疲弊させない」ためにプレゼンで注意すべきポイントを3つ、プレゼンのプロ、西原氏に聞いてみた。
【取材協力】
西原 猛氏
一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会
代表理事/マスタープレゼン・トレーナー
プレゼンスキル向上のためのセミナー・研修・講演会を、全国の企業や団体、官公庁、教育機関向けに行っている。著書「ぐるっと!プレゼン」(すばる舎)等
https://jpea.jp
1.聞き手のことを「知る」
「まずは聞き手のことを知らなければ、的外れなプレゼンとなり疲弊させてしまいます。例えば商品説明であれば、説明前に見込み客の企業情報はもちろん、業界動向(トレンド)や企業の注力事業、担当者のSNS、社内で以前担当していた先輩などから情報を得ます。そこから現在の興味・関心を推測したり『抱える課題は何か』という仮説をいくつか立てたりできれば、ピントの合ったプレゼンが可能です」
2.聞き手の反応を「見る」
「聞き手にきちんと伝わっているかを見ながら話しましょう。うなずく、首をかしげる、ため息をつく――聞き手は黙って聞いているようで、実は様々な反応をしています。しかし話し手は見逃しがち。特に否定的な反応を見逃せば、補足説明や相手の疑問を聞き出す機会を逃すことになり、結果、聞き手は理解が追いつかず、疲弊してしまいます」
3.聞き手と「対話する」
「プレゼンは話し手が一方的に話すイメージがあるかもしれませんが、本質はコミュニケーション、つまり聞き手との『対話』です。聞き手の考えていることは対話でしか分かりません。特に思い込みや勘違いを未然に防ぐためにも重要です。聞き手が首をかしげる、といった反応があれば即座に『何か質問は?』と、対話に切り替えれば、聞き手は理解に費やす無駄な労力が大幅に減ります」
【話し手向け】「聞きパ」を上げるテクニック3つ
では「聞きパ」を上げるには、話し手にとってどんなテクニックがあるか。西原氏に3つをあげてもらった。
1.「この話は本当に必要か?」と自身に問いかける
「あれもこれもと情報を次々と足していくといくら時間があっても足りませんし、聞き手も情報処理が追いつかず脳がオーバーヒートしてしまいます。『これは聞き手が本当に聞きたいことなのか』と見直し、プレゼン中も反応を見て『この話は軽く流すべきか?』と自身に問いかけてみましょう」
2.聞き手の理解力や知識レベルに合わせる
「『伝わる』とは、相手が『理解できる』ことです。『自分が知っているから相手も知っているだろう』という思い込みが、用語の連発や前提条件の省略、抽象的な説明を引き起こします。自分の話しやすさよりも、相手の理解しやすさのほうが優先なのは言うまでもありません。逆に、聞き手も自分と同レベルの知識を持っているのであれば、丁寧な説明は不要で、むしろ時間の無駄です」
3.聞き手が質問しやすくする
「多くの話し手は、プレゼン中に話を遮られ、質問されることを嫌います。なぜなら自分のペースを乱されたくないから。しかし、聞き手としては、疑問に思ったことはすぐに解消したいのが本音です。そこで項目ごとに『ご不明な点は?』と、確認の時間を取ると良いでしょう。聞き手側も疑問点があれば積極的に質問しましょう。プレゼンは『対話』ですから」
今後は、「聞きパ」を上げて聞くことに疲弊させない人こそ、勝てる人材として重宝されるかもしれない。AIをうまく取り入れながら乗り越えたい。
参考 https://talk-smith.com/news/2026-04-02/
取材・文/石原亜香利







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