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連休明けに退職代行サービスに殺到…新卒の早期退職の背景にあるのは「価値観のミスマッチ」

2026.05.31

今年4月、新入社員の「退職代行」サービスへの依頼が増加したニュースが報じられたが、その後、ゴールデンウィーク明けにまた依頼が殺到したとのニュースもあった。こうした新入社員や退職代行利用に限らず、若手社員の早期退職の課題は年々、浮き彫りになっている。

今回は、「退職代行Jobs」の事業責任者に、今年の状況とともに、早期離職者が増えている背景や問題の焦点を聞いた。

そして採用においてAIマッチングが進む中、今後、AIをどのように活用していけるかも探ってみた。

新入社員の依頼件数は増加している?

「退職代行Jobs」の事業責任者を務める佐藤英一郎氏によると、今年の4月、新入社員からの依頼が数多くあったという。3月下旬以降、5月中旬までの累計で150名ほど。前年が100名弱だったため、前年比で1.5倍となった。

【取材協力】

佐藤 英一郎氏
大手専門学校で経営に従事し、その後異業種に転身。退職代行の立ち上げに関わる一方、労働組合の執行委員長として労働問題に深く関わる。現在は、退職代行の事業責任者として、退職関連の課題解決に取り組んでいる。

「全体のご依頼者数自体が1.5倍増加していますので、新入社員の方のみが増加傾向にあるわけではありません。また毎月800名ほどのご利用がありますので、4月に絶対数が多いというわけでもないです。おそらく、退職代行というサービスの認知度が高まるにつれ、顕在化してきたのではないでしょうか」(佐藤氏)

今年「退職代行Jobs」へ依頼があった新入社員のうち、退職理由は大まかに次のランキング結果となったという。

●2026年新入社員の退職理由のTOP3
第1位 思っていた仕事と違う・思っていた会社と違う
第2位 やってみたが自分には仕事が合わない
第3位 研修体制が整っておらず、やっていく自信がない

「全体の傾向としては、人間関係、労働環境(残業・休日)、転職(キャリアアップ・キャリアチェンジ)といった理由が上位を占めるため、新入社員ならではの理由といえるでしょう」(佐藤氏)

早期退職の問題の焦点は……

昨今、若年層の早期退職が社会問題となっているが、さまざまな見解がある。佐藤氏はどうみているのか。

「私自身、新入社員の早期退職が本当に増加傾向にあるのか、という点は常に疑問に感じています。クローズアップされているものの、相対的、絶対的な人数共に、10年前、20年前と比較して、それほど増えているようには感じません。転職市場の流動化や、終身雇用制度の崩壊などを踏まえると、多少増えていくのは当然のことであり、異常事態ということではないと思います。これに対して当然、ミスマッチをなくすための施策が重要になり、採用時の期待値コントールや、入社後のメンター制度の導入などは広く取りざたされているところです」(佐藤氏)

一方で、佐藤氏は問題の焦点は異なるところにあると見ているという。

「アメリカで退職代行というサービスが成立するかといえば、まず成立しないでしょう。退職代行というサービスは、日本人が持っている一般的な特性と深く関わりがあるように思います。そういう意味では、幼少期からの教育制度や教育システムの在り方を考えていくことが、退職代行サービスによって顕在化した早期離職という実態を問題視すべきなのか、それとも、一つの明確な意思に基づく行動であり、問題に値しないのか、という点がクリアになっていくと思っています」(佐藤氏)

早期退職問題へのAIの使いどころ

ところで近年は採用分野にAIを取り入れる動きがある。その一つが、企業と求職者にズレが起きないようにする「マッチング」だ。

例えばZ世代向けのAIキャリアエージェント「BaseMe」は、求職者であるユーザーがAIを対話しながら、価値観を「見える化」して、自分らしいキャリア選びができるサービスだ。価値観が定まれば、マッチする会社を選びやすくなる。

開発元の株式会社ベースミー 代表取締役CEOの勝見仁泰氏に、昨今の退職代行サービスへの依頼殺到や、すぐに辞める新卒入社の社員が目立つ現状に対する意見を聞いた。

【取材協力】

勝見 仁泰氏
株式会社ベースミー 代表取締役CEO
2024年2月に学生向けAIキャリア支援プラットフォーム「BaseMe」リリース。ユーザー数2万人、トヨタ自動車、JT、KPMG、日立製作所など150社以上がサービス導入。

「これまでの就活のマッチングが、年収や業界といった表面的な条件に偏り、個人の本音や価値観を置き去りにしてきた結果だと考えています。就活が内定獲得のテクニック論に終始し、学生が企業に合わせた正解を演じてしまうことで、入社後のリアリティとの間に深刻なミスマッチが生じています。退職代行の急増は、自分の価値観と仕事がつながっていないことへの拒絶反応の表れではないでしょうか。どちらが悪いという話ではなく、学生の自己理解、企業による学生の理解の両方が足りていないことが課題だと感じます」(勝見氏)

その企業と新入社員の価値観の不一致を、AIなら埋めることができるだろうか。

「AIを答えを出すために使うのではなく、対話を通じて個人の原体験や好き嫌いを言語化させる自己探求のプロセスとして取り入れることが必要だと考え、BaseMeを提供しています。企業側もスペック採用を脱却し、自社の価値観と個人の価値観がどう共鳴するかを学生に見せていく姿勢が、ミスマッチ解消の鍵となると思います」(勝見氏)

AIとの対話を通じて自己探求をした新卒就活生のケース

「BaseMe」イメージ

ここで、BaseMeを利用し、自己探求をして成果を出した新卒就活生のAさんのケースを紹介する。

ものづくりに惹かれて理系学部に進んだAさんだったが、就活シーズンを迎えても「メーカー志望」というぼんやりした言葉以上に、自分の軸を語ることができずにいた。説明会に足を運んでも、なぜその会社に惹かれているのか自分でも説明できない。エントリーシートを前に手が止まる日々が続いていた。

そこでBaseMeを利用。自分専用の就活アドバイザーとして動くAIエージェント「ken」からは「これまでの人生で一番夢中になって作ったものは何ですか」 「壊れたモノを直したくなる瞬間がありますか」という、一見就活とは無関係に思える問いを受けた 。対話を重ねるうちに、Aさんは自分が完成品ブランドよりも、誰かの日常を裏で支える基幹部品に惹かれてきたという、これまで誰にも言語化できなかった自分軸に辿り着いた。

そこから就活は一気に動き出すことになる。

kenが提示したのは、Aさんが名前すら聞いたことのない部品メーカー志望動機の言語化、面接対策、企業との接点づくりに至るまで、kenが対話を通じて並走し、Aさんは無事に内定を得た――。

学生ユーザーの多くは内定獲得後もBaseMeを使い続け、最近では長期のキャリアシミュレーションなど、就活の枠を超えた領域にも対話の対象が広がっているという。

早期退職が顕在化し、クローズアップされているいま、何が大事なのかを各人が考え直す契機といえる。

取材・文/石原亜香利

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