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「就活用の自分」はいらない!博報堂の自己分析本が就活生に好評な理由

2026.06.04

博報堂は、27卒に向けて新たな新卒採用冊子「MY KNOWTEBOOK」の配布を開始した。説明会等で配布され、多くの就活生に活用されている。これは単なる会社案内パンフレットではない。ページをめくると、自分の価値観や経験を書き込むための問いが並ぶ。就職活動の土台となる自己分析ツールとして、学生が「自分らしさ」を見つめ直すきっかけを与える一冊だ。

就活を取り巻く環境が変わりつつあるいま、なぜ博報堂は新卒採用冊子を刷新したのか。その背景にある思いを探った。

博報堂が感じる、いまの就活の課題

 今回、博報堂が「MY KNOWTEBOOK」を制作した背景にあるのは、いまの就活への課題意識だ。就活の早期化・長期化が進み、学生たちは早い段階から「就活モード」に入ることを求められている。こうした環境の変化によって、十分に自己理解が深まらないまま、「就活用の自分」を作ってしまう学生も増えている。

博報堂の人事室・新卒採用チームの近藤さんは、次のように語る。

「今では、早ければ大学2年生の冬から就職活動を始める学生が増えています。しかし、その時点ではまだ、自分が何をしたいのか、どんな人間なのかが定まりきっていないことも多いと思うんです。人事としても、学生時代にはしっかりやりたいことに打ち込み、思いきり遊んでほしいという思いがあります」

本来は、自分の興味関心や経験を広げるはずの大学生活が、少しずつ「就活のための準備期間」へと変化しつつある。

さらに近藤さんは、早期化・長期化によって学生たちの「自分らしさ」が見えにくくなっていると話す。

「早い時期から就職活動を始めることで、自分らしさや価値観が十分に見えていないまま、エントリーシートを書き続けることになります。その結果、『就活用の自分』のまま就職活動を終えてしまう学生が増えてきているように感じます。」

「すごさ」じゃなく「自分らしさ」が武器になる

では、博報堂は就活生のどこに「自分らしさ」を見ているのだろうか。クリエイティブディレクターの山﨑さんは、優れた実績や成果そのものではなく、その背景にある動機や価値観にこそ、個性が表れると語る。

「私たちが見ているのは、『何を成し遂げたか』という結果よりも、『なぜそれをやろうと思ったのか』です。すごい実績があるかどうかではなく、必死に行動した背景にどんな価値観や感情があるのかを知りたいんです。

たとえ大会で一回戦負けだったとしても、本気で汗をかいたからこそ味わえる悔しさがあるはずです。その時、自分の心がどう動いたか。その感情と熱量が私たちの仕事にも活きてくるんです。」

人気企業として多くの学生を惹きつける博報堂だが、求めているのは華々しい実績や、取り繕った「就活用の自分」ではない。スマートな成功体験だけでなく、本気で泥臭く挑んだプロセスにこそ、その人らしさは表れる。こうした考え方は、博報堂の新たな採用メッセージ「汗かいて、心を動かす。」にも通じているのかもしれない。

また、博報堂は面接を「評価の場」ではなく、相互理解のためのマッチングの場として捉えている。

「学生を評価するというより、『博報堂のカルチャーと合うかどうか』を見ています。面接は、一方的に見極める場ではなく、お互いを知るための場だと思っています」

MY KNOWTEBOOK」が導く、本当の自己分析

 こうした採用観から生まれたのが、新たな採用冊子「MY KNOWTEBOOK」だ。幼少期から未来までをたどる88個の問いを通して、就活用につくられた自分ではなく、等身大の「自分らしさ」と向き合える構成になっている。

具体的には、「小さい頃の夢ってなんだった? それは叶いそう?」や、「もし今日地球に隕石が落ちるとしたら、何をする?」など。そうした問いに向き合うことで、自分でも見過ごしてきた価値観や感情に気づくことができる。

 デザインを手がけたアートディレクターの竹之内さんは、「MY KNOWTEBOOK」に込めた思いをこう語る。

「MY KNOWTEBOOKを真っ白にしたのは、学生が自由に自分の色に染めてほしいという思いからです。ボロボロになるくらいまで使い込んでほしいです。また、冊子を紐で閉じているのは、『自分をひも解く』というコンセプトをかたちにしたものです。」

 デザインの細部にも、学生一人ひとりに自分自身と向き合ってほしいという博報堂の思いが詰まっている。その先に見据えるのは、就活のためだけではなく、人生そのものと向き合ってほしいという願いだ。

山﨑さんは、「MY KNOWTEBOOK」を就職活動だけにとどまらず、自分の人生を見つめ直すためのツールとして使ってほしいと語る。

「企業に受かるためではなく、まず『自分はどう生きたいのか』を考えてほしいと思っています。これを使って自己分析をした結果、博報堂では実現できないなでもいいんです。本当に自分に合う場所を見つけてほしいと思っています。就職活動のための自己分析ではなく、その人がどんな人生を送りたいのかを考えるきっかけになればと思っています」

近藤慎太朗さん(右)
博報堂 人事室タレントアクイジション部 マネジメントプラナー

2024年に博報堂へ入社し、初任配属で新卒採用チームに着任。現在は、採用戦略の策定から選考設計、採用広報まで、新卒採用に関わる幅広い業務に従事。

山﨑博司さん(中央)
博報堂クリエイティブ局山﨑チームクリエイティブディレクター・コピーライター
「言葉の力で、社会を動かす」をモットーに、コピーを軸にした統合キャンペーンや社会課題解決業務を手掛ける。受賞歴に、クリエイター・オブ・ザ・イヤー 、TCC賞、TCC最高新人賞、ACCグランプリなど。著書に「答えのない道徳の問題 どう解く?」1~3巻、「ぶたすけのラッパ」など

竹之内洋平さん(左)
博報堂クリエイティブ局アートディレクター
2017年博報堂入社。事業やブランドを社会へつなぐフォーカスの大きいアートディレクションで、愛されるデザインを目指す。 One Show、ADC入選、ヤングカンヌGOLD日本代表、ACC YOUNGグランプリなど。

取材・文/DIME編集部

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