何年か前から、全国展開していない地域限定のコンビニが注目の的になっている。それらはローカルコンビニとかご当地コンビニなどと呼ばれ、旅の目的地として訪れる人も多い。都内在住の筆者の知人は、聖地巡礼のごとくそうした店を巡っているという。
筆者のように、首都圏から離れた“ご当地”に住んでいると、その魅力は当たり前すぎて意識されないが、大手コンビニにはない何かがそこにあるのだろうか? 秘密の一端を探るべく、大阪と京都に展開する「もより市」を訪ねた。
スーパーとコンビニの中間のような存在
もより市を運営するのは(株)京阪ザ・ストア。京阪沿線の駅内外に多くの小売店を擁し、もより市もそれに含まれる。1号店は2021年11月に開業し、現在19店舗ある。前身は駅ナカコンビニのアンスリーで、順次入れ替わるかたちで、2024年に全店舗の転換が完了している。
取材では、大阪市の「もより市 京橋駅内」を訪れたが、外から見ると生鮮野菜やお弁当の売り場が大きめで、スーパーに近い印象を受けた。しかし、中に入ると大手コンビニと共通する品目が多い。
応対してくれた、同社営業本部で店舗運営を担当する長瀬勝俊さんは、「スーパーマーケットとコンビニの中間のような存在ですね」と語る。長瀬さんによれば、コロナ禍が現在あるような店舗形態を促したという。
「コロナ禍で外出がはばかられるなか、“おうち時間”が注目され、自宅で食べるものを豊かにしたいというニーズが生まれました。京阪ザ・ストアは、スーパーも営んでおり、そのノウハウや強みも生かしつつ、新業態としてもより市のあり方を模索しました。その結果、“食の商店”というコンセプトで、おいしいものを集めることに決定したのです」
レールグルメのヒット商品続々
もより市が目下注力しているのが、京阪沿線の店から仕入れた“レールグルメ”。例えば、大阪府枚方市の九十九堂本舗のクリームパンは、「結構ご好評いただいている」ロングセラー。人気を反映して、冷蔵コーナーでは包装された数十個のクリームパンがひしめいていた。
もう1つのヒット商品として長瀬さんが手にとったのは、「アーモンドサブレ」。国産小麦100%使用で、油脂はバター100%というこだわりのお菓子。こちらは、自社で開発・製造されたものだという。
フランクフルトが1日約800本売れる
「もより市」の特色のひとつに、自社製造商品の多さが挙げられる。「アーモンドサブレ」もそうだが、パン、惣菜、お弁当など多岐にわたる品目の多くを自前でまかなう。
同社は、スーパーの「フレスト」も運営している関係で、「もより市」と「フレスト」向けに比較的多数の商品を自社工場で作れ、それがリーズナブルな価格で販売できる要因になっているようだ。例えば、「シリーズ累計販売数30,000個突破!」と書かれたポスターが目を引く「京阪ザ・プリン」は258円。昨今の物価高の影響をこうむりやすいご褒美スイーツにしては、お安いのでは。
そしてなによりも、「もより市」プロデュース商品の目玉といえるのがフランクフルト。「もより市 京橋駅内」の1階上、つまり京橋駅ホームに位置する売店で1975年頃から売られていたのを、「もより市 京橋駅ホーム」が受け継いだ、当駅のソウルフードともいえる存在。(取材時点にて)1本140円で、ケチャップなしでもそのまま食べられる味付けがおいしく、毎日約800本売れる一大名物となっている。
人気を広げるべく、2024年にカレー味をラインナップにくわえ、さらに販売店も大和田駅店や石清水八幡宮駅などへと拡大しているそうだ。
駅ホームから「もより市 京橋駅内」に戻って、少し離れたところから店を観察してみる。老若男女、客層に偏りがなく、出入りも途絶えずで、かなり繁盛しているのがわかる。長瀬さんに、「もより市」の今後の展望をうかがうと、「定番だけでなく、常に新しい商品を取り入れ、人気の品を増やしていくのが課題。うまくその流れを作っていけるようにしていきたいですね」と答えた。現時点でも魅力的な品ぞろえで、今後どれだけ化けるのか。そのことに、ご当地に住む1人として、大きな期待感を持った。
文/鈴木拓也
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