■連載/ヒット商品開発秘話
グミ市場が拡大を続けている。調査会社のインテージによれば、2025年の国内のグミ市場は1297億円。2021年から大きく伸び始め、同年にガム、2025年にキャンディを抜いている。
好調なグミ市場を支えている企業の1つが、『タフグミ』や『ピュアラルグミ』でおなじみのカバヤ食品。そんな同社で現在売れ行き好調なグミの1つが2024年9月に発売した『しゃりinグミ』である。これまでの売上金額はブランド累計で30億円を超えている。
『しゃりinグミ』はグミの内側に秘密のしゃり粒を閉じ込めており、噛んだ瞬間に独特のシャリッとした食感が楽しめるのが特徴。外側の手触りがツルッとしており、手や机をあまり汚すことなく食べることもできる。
〝ツルツル〟とギャップが一番大きいのは〝シャリシャリ〟
『しゃりinグミ』はグミ市場の中でも売れ行きが好調な食感訴求グミ。食感訴求グミは表面に粉末をまぶすことで独特の食感を生むことが一般的だが、そういうものは食べると手が汚れてしまうのが難点であった。
「グミが大好きでリフレッシュしたい時によく食べますが、粉が付いてしまいどうしても手が汚れてしまいます。食べた後にパソコンを使う時は、その前に手を拭かなければならず、ストレスを感じていました。同じようなことを思う人は多いと考えられるので、食感の楽しさを損なうことなく手が汚れるストレスをなくしたグミの開発を考えるようになりました」
このように『しゃりinグミ』の企画経緯を話すのは、ブランドマーケティング本部ブランド企画部の鈴木ひなたさん。2023年末頃から食感に特徴のあるグミをつくりたいと考えるようになり、2024年に入ってから詳細の検討に入った。
対象としたユーザーは10代から30代の女性。食感の候補としてはジャリジャリ、ジョリジョリ、ショリショリといったものがあったが、シャリシャリに決まったのは、外側のツルツル触感とのギャップが一番大きいと判断した結果であった。鈴木さんは次のように振り返る。
「他の候補より間違いなく楽しそうな印象があり、好感触が得られると判断できました。満場一致で決まったほどです」
失敗を元に開発した「インナーしゃりしゃり製法」
シャリシャリ食感が実現できたのは、グミの内側に “秘密のしゃり粒”を閉じ込めた独自の「インナーしゃりしゃり製法」を採用したため。噛むと〝秘密のしゃり粒〟が砕け、シャリシャリとした食感が生まれる。
「インナーしゃりしゃり製法」は失敗が元になったものだという。誕生経緯をブランドマーケティング本部研究開発部の岡部一馬さんは 次のように明かす。
「『インナーしゃりしゃり製法』の開発は、別の商品の開発時に起きた失敗がきっかけになりました。『しゃりinグミ』の開発に関して相談を受けた時、その現象を生かすことができそうだったことから取り入れました」
岡部さんは『しゃりinグミ』について、「シャリシャリした食感のグミが店頭に並んだらお客様に喜んでいただけるだろうと思っていました」と第一印象を口にする。しかし当時、次の3点の懸念から「工場で量産できるだろうか?」という不安も覚えていた。
・シャリシャリ食感とグミらしい弾力、食感の両立が難しい
・ラボでシャリシャリ食感が実現できても、工場で量産した時にシャリシャリ食感にならない可能性が高い
・そもそも工場で量産するのが難しい
重要になったのが、原料の選定と配合。“秘密のしゃり粒”の原料の選定と配合だけではなく、グミの原料においてもシャリシャリ感が残る原料の選定と配合が求められた。
試作検証は少なくとも数十回は実施し、現在の特徴ある食感にたどり着いた。岡部さんが最初に考えていた原料と配合ではシャリシャリ食感は実現したものの、グミ本体の弾力が足りなかったという。〝秘密のしゃり粒〟をグミの中に閉じ込めたことでグミの表面に粉を掛けることが不要になり、手が汚れる問題も解決されることになった。
フレーバーについては、〝さわやかソーダ〟と〝さわやかレモン〟(終売)の2種で展開することにした。「グミのトレンド、季節感などを踏まえた上で、独特のシャリシャリ食感に合うことと爽やかさを感じさせることからこの2種に決めました」と鈴木さん。全部で6種類ほど試作をつくってもらい、その中から選んだという。
一度は失敗した工場での量産
シャリシャリ食感を実現するためには、 〝秘密のしゃり粒〟の適正量を見出さなければならなかった。少ないと食べた時にシャリシャリ食感が実感できず、多すぎると工場での量産時に品質上の問題が発生するほか、味が落ちるという課題があった。試作検証を繰り返して〝秘密のしゃり粒〟は現在の量で決まったが、現在よりも粒を大きくしてジャリジャリ食感を試したこともあった。
懸念された工場での量産については、一発合格とはいかなかった。「グミらしい弾力食感、新しいシャリシャリ食感、そして製造適正、この3つをすべて成立させるのが難しかったです」と岡部さん。初めの量産試作品はイメージしたシャリシャリ食感とはならなかった。
岡部さんは生産ラインで作業に従事する社員や生産設備に詳しい設備導入の担当者に相談。得られた意見を元にして配合を見直したほか、原料の仕込みなどで生産ラインの作業者が無理なく動けるかどうかといったことも確認した上で、2025年4月頃には品質上問題ないレベルで量産できる体制を整えることができた。
食感の楽しさをより表現した新パッケージ
ブランド累計30億円超という売上は発売から数年先のことと見込んでいた同社であったが、1年半強で達成した。急速に受け入れられたといってもいいだろう。
実際、同社も『しゃりinグミ』に対する期待は高く、販売にも気合が入っていた。岡部さんはこの商品の企画を当時担当した社員が言ったある言葉が印象に残っているという。それは次のようなものだった。
「この商品は新しいブランドとして展開していくものなので、営業のみんなも気合いを入れていこう」
檄が飛んだことで、小売店のバイヤーや問屋との商談に熱が入ったことは想像に難くない。
営業を支援する販促については、主に動画を活用。TikTokやInstagramのリール、YouTubeのショート動画とSNSで繰り返し流れるようにした。
『しゃりinグミ』は発売後、ブランドの育成や話題の提供といった意味から新フレーバーを適宜追加している。最初に追加されたのは2025年3月に全国発売された〝さわやかマスカットソーダ〟(終売)。その後同年8月に〝さわやかみかん〟(終売)、2026年2月に〝クリスタルグレープ〟、同年3月に〝クリスタルピーチ〟(終売)を発売している。〝クリスタルピーチ〟のみ、全国のコンビニエンスストアで期間限定販売となっている。
“クリスタルグレープ”発売の際は、パッケージデザインがリニューアルされた。リニューアルの狙いは、商品の価値である食感の楽しさをより表現するため。「グミの食感やフレーバーだけではなくパッケージを見ただけで気分が上がるデザインに変更しました」と鈴木さんは話す。
発開始売時のパッケージデザインは、キラキラした粒を閉じ込めた大きな丸を中央に配置したが、リニューアル後は全体的にメタリック調のスタイリッシュなものとし、丸の外側にもキラキラした粒が溢れ出ているように見せて噛んだ瞬間に中から〝秘密のしゃり粒〟が現れることを表現した。気分が上がりキラキラ感が印象に残るよう、フレーバー名の冒頭につけていた〝さわやか〟も〝クリスタル〟に改められた。
また、〝しゃり〟の表記の位置を変え、食感を強く印象づけるようにしたのも、リニューアル後のパッケージの特徴だ。リニューアル前は封を切ると〝しゃり〟の表記はなくなったが、リニューアル後は表記の位置を変え封を切っても残るようになっている。
取材からわかった『しゃりinグミ』のヒット要因3
1.配慮が行き届いた商品設計
グミは表面に粉がけしたものが多く、食べると手が汚れてしまうことが普通といってもいいほど。食べた後、別のことをする時は一度手をキレイにしないとならなかったが、その必要がなくなった。持ち歩きを前提にしたコンパクトなパッケージが多いグミにあって、外出先でも食べることが考慮されている。配慮が行き届いていると言ってもいい。
2.見た目から想像できない意外性のある食感
グミらしい適度な硬さや弾力がある一方で、食べるとシャリシャリする。商品名から食感は想像できていたとしても、食べるとやはり意外性を感じる。見た目から想像できない食感のユニークさが興味・関心を高めた。
3.食感のイメージに合ったフレーバーの選定
フレーバーはトレンドを踏まえつつも、シャリシャリ食感に合いそうなイメージのものを選定。美味しさを追求したのはもちろんだが、食べた後にシャリシャリ食感の印象を確かなものにする上でフレーバーの選定は重要な役割を果たしたといってもいい。
シャリシャリした食感が特徴なことから、SNSではユーザーが食べている時のシャリシャリ音を収めたASMR動画が多く投稿された。その動画が拡散したことも、人気に火をつけた側面があった。商品力の高さと誰かに伝えたいと思わせる魅力が『しゃりinグミ』には備わっていたといえる。
製品情報
https://www.kabaya.co.jp/products/catalog/shariin/
取材・文/大沢裕司
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