■連載/ヒット商品開発秘話
暑い夏が迫っている。汗かきの人にとって悩ましい季節の到来だ。
夏の汗対策に欠かせない制汗デオドラントで売上を伸ばしているのが、「金のロールオン」ことマンダムの『ギャツビー EXプレミアムタイプデオドラントロールオン』である(以下、ギャツビー EXデオドラントロールオン)。
2024年2月に発売された『ギャツビー EXデオドラントロールオン』は最新の汗腺研究で得られた知見を生かしており、根本からニオイの発生を防ぐのが特徴。『ギャツビー デオドラントロールオン』シリーズ史上最強の密着処方により汗が出ても有効成分が流れにくく肌にとどまり続けるほか、2種の殺菌成分配合で汗・皮脂が出やすい男性の肌でもしっかりニオイを防ぐ、といった特徴を持つ。2026年2月末に累計出荷数が150万本を突破した。
最新の汗腺研究で得られた知見の活用
「生活者の調査から、ロールオンタイプの制汗デオドラントの防臭効果を感じる根拠として最も多かった回答が、制汗力の高さでした。しかし、現在使っているロールオンの満足度を確かめたところ、効果については『使ってもどうせ汗をかく』といったような諦めの声も聞かれました」
こう話すのは、プロダクトマーケティング部 主幹の小坂洋介氏。こうした声から、最新の汗腺研究から得られた知見を生かし制汗力をさらに高めれば満足度は上がると同社は捉え、2022年頃に『ギャツビー EXデオドラントロールオン』の開発を企画した。
同社は2011年から大阪大学と共同で、世界でもほぼ例がない汗腺研究を実施している。もともとは、2006年からニオイの研究を実施していたが、汗はニオイの原因となることから研究領域を拡大した。
2019年2月に発売された『ギャツビー プレミアムタイプデオドラントロールオン』(以下、ギャツビー デオドラントロールオン)と比較すると、『ギャツビー EXデオドラントロールオン』は汗腺研究から得られた知見を生かしたことのほかに、吸水速乾処方の採用、密着力の高さ――と、大きく3点が異なる。
最大の違いは、先端汗腺研究の知見を生かしたアプローチだ。同社の汗腺研究は、2010年から業界に先がけて始まっており、世界初の研究内容が専門の学術誌に掲載されたり、2023年には国際学会(IFSCC2023)のポスター部門で最優秀賞を受賞したりするなど、高い評価を受けている。小坂氏は次のように話す。
「『ギャツビー デオドラントロールオン』をはじめとした従来の制汗デオドラントは、汗の出口をふさぐことで汗を抑えることがメインの機能ですが、これに加えて吸水速乾処方を加えることで、制汗の満足感を高めました」
吸水速乾処方は吸水ポリマーを応用したことが特徴だ。ポリマー系の成分がデオドラント剤に使われるのは一般的だが、現在日本で市販されているデオドラント剤で吸水ポリマーが使われているものは、他には見当たらないという。
吸水ポリマーを活用するアイデアは、中身の開発を担当した社員が育児から得た。「紙おむつが赤ちゃんのおしっこを吸収しお尻をサラサラに保ってくれるところから、デオドラントに応用すると面白そうだと発想しました」と小坂氏は話す。
密着力の高さについては、『ギャツビー デオドラントロールオン』より耐水性と耐摩擦性を高めて有効成分がしっかり肌にとどまるようにした。これにより、脇に塗った剤が服や肌の摩擦や他の部位から流れてきた汗で落ちにくくなった。
耐水性、耐摩擦性を高めるのに一役買ったのも吸水ポリマーであった。吸水ポリマーを配合することで、剤を塗ると表面に強力な膜が張られ、服や肌の摩擦を防ぐ効果を発揮する。
研究施設で汗をかき処方を検証
処方設計は試行錯誤の連続だった。検討した処方は全部で60程度。小坂氏は次のように振り返る。
「ロールオンで汗を抑える効果を実感できないと感じられるケースの理由に、塗りムラがあります。使い方に個人差があることを踏まえた上で効果をきちんと実感してもらえるようにするため、処方は何度も検討を重ねました」
処方の検証には複数の被験者がいるものの、開発担当である社員も直接検証に参加。気温や湿度を一定に保つことができる大阪の自社施設の中で、被験者はフィットネスバイクを漕いだりウォーキングマシンで歩き続けたりするほか、足湯に浸かるなど汗をかくことを行なって処方を検証した。
小坂氏も大阪のその施設で汗をかいただけではなく、自宅の浴室で足湯に浸かって汗をかいて処方を検証した。片方の脇だけに塗って塗らなかったもう片方の脇との差を比較するのはもちろんのこと、2種のサンプルを左右の脇に塗り分けて比較するといったことも実施している。
「最強」の2文字が躍る金色のパッケージ
処方設計とともに悩ましかったことが、効きそうだということをいかに伝えるかであった。小坂氏は次のように話す。
「新しい技術を採用し独自性もあり、いいのものをつくった自信はあったのですが、これが生活者に伝わらないと手に取ってもらえません。他にも制汗デオドラントがいっぱいある中で、ひと目見ただけで一番効きそうだと思ってもらえるにはどう表現すればいいか、ということについてはすごく悩みました」
悩んだ結果は、『ギャツビー デオドラントロールオン』との見た目の違いに如実に表れている。容器は同じものの、色、パッケージ、表記のすべてが異なる。
色に関しては抗菌のイメージと科学的なイメージがある銀、キラキラする虹色なども候補に挙がったが、強力なことが直感的に伝わるイメージが強いことから金が選ばれた。表記についても「汗」や「ニオイ」を強調する案もありデザインに落とし込んでみたが、市場に出回っている制汗デオドラントも含めて並べると似たような言葉が並び生活者が選びにくくなることから、他社が使っておらずシンプルで効果が高そうと思ってもらえる言葉として、密着力の高さを表現した「最強」を選択した。
購入者の約半分が女性
テレビCMがきっかけで商品のことを知った生活者も多いと思われるが、放映を開始したのは発売から1年が経過した2025年3月。発売開始からテレビCM放映前までは、商品に生かされている技術や研究成果を知ってもらうことに注力した。
中身に自信があったことから、SNSや電車広告で技術を推すコミュニケーションを展開。「先端汗腺研究」など科学的なイメージの強い言葉を使い、研究に裏打ちされた最新の成果を生かしたことを伝えることにした。
テレビCMの放映は、それまで実施していた技術推しのコミュニケーションの課題から踏み切ったものだった。「2024年の夏が終わる頃に実施した調査で、認知率が高くないことがわかりました」と小坂氏。調査でユーザーが制汗に満足していることもわかったことから、認知されればまだまだ伸びるという手応えを得た。
テレビCMにはお笑い芸人の野田クリスタルさん(マヂカルラブリー)を起用。「ワキには、金」「汗を眠らせ、ニオわせない」といったキャッチーなフレーズを使いながら、認知拡大を図っていった。
メンズコスメブランドの『ギャツビー』から発売されたものなので購入者は圧倒的に男性かと思いきや、半分近くが女性。年齢も若年層ではなく30~40代が多いという。
女性にも多く購入されていることは、同社にとっても意外なことだった。女性へのヒアリングから、女性用より効果が強そう、塗りやすそう、といったことから支持を集めたことがわかった。
また、2026年2月にハーブ&ムスクの香りを追加。最初に発売された無香料と合わせて、現在2種ラインアップされている。
ハーブ&ムスクは、デオドラントでは定番のシトラス系以外で新しいものを提案する意味から選ばれた。香料には、汗の成分から再現した汗臭のサンプルを元に調合した機能性香料を使用。仮に汗のニオイが混ざってしまったとしても、清潔感のある香りが持続する設計にすることにした。
取材からわかった『ギャツビー EXプレミアムタイプデオドラントロールオン』のヒット要因3
1.さらに高い効果が実感できる処方
これまでの制汗デオドラントは汗の出口をふさぐことで汗が出てくるのを防いでいたが、さらに高い制汗力とするために吸水速乾処方を追加することで、漏れ出てしまった汗すら速乾させる。「最強」にふさわしい高い効果を実現した。
2.研究成果に裏打ちされた高い信頼性
汗腺研究から得られた知見を初めて活用。最先端の研究成果を生かし、処方や効果にさらに高い信頼性をプラスすることができた。
3.「効きそう」と思わせることができた
効果に自信があっても、それをうまく伝えることができなければ購入に結びつかない。商品パッケージの色や表記の工夫、発売後の消費者コミュニケーションで汗腺研究から得られた成果や商品に採用されている技術を押し出すことで、「効きそう」と思ってもらうことができた。
汗かきな人の中には、いろんな制汗デオドラントを使っても思ったほどの効果が得られず、汗対策を諦めてしまった人もいる。そんな人ほど『ギャツビー EXデオドラントロールオン』を使うと、従来の制汗デオドラントとの違いを感じられるはずだ。ユーザーの中には、同社に「汗対策が進化した」とメールを送ってきた人もいたほど。汗で悩まれている人はこの夏、一度使ってみると進化が実感できることだろう。
製品情報
https://www.gatsby.jp/product/bodycare/deodorant/ex_premiuntype-deodrant/
取材・文/大沢裕司
累計出荷数量500万個を突破!花王「クイックル 洗面ボウルクリーナー」ヒットの裏側
■連載/ヒット商品開発秘話 毎日使う洗面ボウルは、家の中でも汚れやすいところの1つ。こまめに掃除をしないと汚れが堆積してしまう厄介なところだが、いま洗面ボウルの…







DIME MAGAZINE






















