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〝消せる筆記具〟の進化はまだ続く!剥がして消す新発想のボールペン「ケセラ」とは?

2026.05.13

スマートフォンやパソコンの普及により、日本人が文字を手書きする機会は急激に減少している。とはいえ、日常に手書きで文字を書かなければならない機会は皆無ではない。久々にペンを持って緊張したため、簡単な字を間違えたり、うまく書けなかったりした時にありがたいのが、消せるボールペンだ。

化学変化で消す「フリクション」と、はがして消す「ケセラ」

元祖・消せる筆記具は、パイロットコーポレーションが2006年(日本では2007年)に発売した「フリクションボール」。摩擦によって生じる熱でインクが化学変化を起こして無色になるシステムで、ボールペンをはじめ、サインペンや色鉛筆など、さまざまな製品を展開し、「フリクション」シリーズの世界累計販売数は2025年末時点で50億本を達成しているという。

だが、消せるペン=フリクションという常識が今年、変わるかもしれない。セーラー万年筆株式会社(以下「セーラー万年筆」)が2026年2月21日に、鉛筆と同じように物理的にインクを“はがして消す”新発想の「ケセラ ボールペン」を発売したのだ。

新開発のインク「Que Será(ケセラ)」を搭載した「ケセラ ボールペン」(希望小売価格 税込み330 円)。ボール径:0.8mm、芯色はブラック・レッド・ブルーの3色

ケセラボールペンが筆跡を消せる仕組みは以下のとおり(下の図参照)。

(1)紙に筆跡として残ったインクの中には、顔料(微細な着色剤)と、粘着性のあるゴム材が分散した状態で入っている。
(2)少し時間が経つと、ゴム材が顔料を巻き込んで団子状になり、皮を張ったような状態となる。
(3)その部分を専用の消し具でこすると、ゴムと一体化した顔料が紙面上からはがれ落ちて、筆跡が消える。

「ケセラ」で文字を消せるメカニズムのモデル図(画像提供:セーラー万年筆)
消したときには、いわゆる消しゴムのような“カス”は出るが、これは剥がれたインクのカスなので、消し具そのものは減っていかない

ちなみに使い方にはコツがあり、書いてすぐではなく、少し時間を置いてインクがしっかり乾いてから消す方がきれいに仕上がる。だがインクを「はがして消す」ことにどんなメリットがあるのか。セーラー万年筆に聞いてみた。

物理的に消せるので、温度などの環境変化に影響されない

セーラー万年筆の広報担当者によると、ケセラボールペンはプラスグループ傘下の3社(プラス株式会社(以下「プラス」)、「アストラム株式会社(以下「アストラム」)(※)、セーラー万年筆による共同開発で誕生したペンだという。
※2026年4月1日「ぺんてる株式会社」から社名変更

よく知られているように、フリクションには60℃~65℃の熱で透明(無色)になる独自開発のインクが使用されている。ペンについている消し具でこすると筆跡が消えるのは、こすった個所に摩擦熱が発生してインクが無色化するため。また一度消えた文字はマイナス10~20℃で色が戻るという特色もある。そのため、炎天下に車の中に入れっぱなしにしたフリクションのインクが無色化したり、極寒の環境下で消したはずの筆跡がもとにもどったり、という化学変化が起こる可能性がある。

こうした寒暖差による変化発生の可能性を踏まえ、プラスの今泉嘉久会長が「新しい消せる筆記具を開発できないか」と提言したことが、きっかけだという。

プラスとアストラムの合同会社である未来創造開発センターの基礎研究を契機に、プラス、アストラム、セーラー万年筆の3社が組んで新たに専用の開発体制をつくり、約3年かけて開発に成功したのがケセラボールペンだ。

開発段階での最大の難関は、インクの“定着と剥離”のバランス。書いた直後から簡単に剥がれてしまっては意味がないが、いざ消したいときに強くこすっても取れないのでは困る。この相反する条件を両立させるために、インクの研究開発チームはインクの成分比率を何度も微調整し、最適なポイントを探り続けた。「外から見れば『3年もかかったのか』と思われるかもしれませんが、研究開発側の感覚としてはむしろ逆で、『3年でよくここまでこぎつけた』という手応えでした」(セーラー万年筆)。

確かに、温度によって消えたり復活したりという変化が起こらないのはメリットといえる。とはいえ、普通のオフィスで気温が60℃以上になったりマイナス10度以下になったりすることはあまり考えられない。であれば「温度による変化が起こらない」というメリットはあまり感じられない気も…。が、ケセラは色素が粒子として残っている「顔料インク」を使用しており、色素が溶剤に溶けている「染料インク」と比べて筆跡の耐水性や耐光性に優れている。そのため、記録として残しておきたい日記やレシピ帳などに向いているという。そう聞いて実際に使ってみたところ、ケセラボールペンにはフリクションにない別の特色があることに気がついた。

特色(1)…ごく細い線を消すことができる

ケセラボールペンとフリクションのインクの性質の違いは見た目ではわからないが、パッと見てすぐにわかるのは、消し具の形状の違いだ。フリクションの消し具は先端が半球の円筒型だが、ケセラは消し具の先端にしっかりエッジを立てていて、“角で消せる”設計になっている。このエッジを使ってこすると、かなり細い線で筆跡を消すことができるのだ。

「従来の消せるペンは、どちらかというと素早く広い面を消せるように設計されているタイプが多いのですが、ケセラボールペンはエッジ部分を使うことで、ピンポイントも狙って消せるよう設計しています。ペンを垂直に立てて平らな部分で消せば、面を消すこともできます」(セーラー万年筆)。

消し具の形状の違い。(上)ケセラボールペン(右)フリクションボールペン
ケセラボールペンは、漢字の細かい一部分の間違いもピンポイントで消せる

実際ボールペンの文字を消したい時というのは、漢字の横棒が一本足りなかったというような微妙な間違いが多い。少しでも誠意を伝えようと手書きで長い手紙を書き終えてから、「ピ」ではなく「ビ」だったというような誤りに気が付く経験をしたことのある人は多いのではないか。そういう細かい部分を狙って消すことができるのが実にありがたい。また消し具部分は消しゴムのように減らないので、消しゴムの角で消す時の快感をずっと感じられるのも楽しい。

特色(2)…カラーペンとの組み合わせで、簡単に「白抜き」ができる

もうひとつの特色は、ケセラボールペンとカラーペンを組み合わせることで、マスキング(白抜き)ができること。ペンで書いた線の上にマーカーなどカラーペンを塗ってから消し具で線を消すと、簡単に白抜きができるのだ。手帳の予定表を装飾したい人や、アート用途でボールペンを使う人たちにとって、新しい表現の手段になるのではないだろうか。

ペンで書いた線の上にマーカーなどカラーペンを塗ってから消し具で線を消すと、白抜きされる ※画像提供:セーラー万年筆
細く複雑な線も簡単に白抜きできるので、目立たせたいメモやアート作品にも応用が可能 ※画像提供:セーラー万年筆

なぜセーラー万年筆から発売されたのか

最後に、素朴な疑問をぶつけてみた。共同開発をした3社のうち、プラスは筆記具を扱っていないが、アストラムはボールペンなどの比較的低価格な筆記具が主力商品。なぜ、万年筆が主力商品であるセーラー万年筆から、希望小売価格330円のケセラボールペンを発売したのだろうか? セーラー万年筆によると、そこにも明確な狙いがあるという。

「セーラー万年筆は、どちらかといえば高価格帯の万年筆に強みを持つブランドで、これまで低価格帯のボールペンにはあまり力を入れてきませんでした。その領域を強化したいという思いが一つ。そしてもう一つの理由は、ケセラボールペンの機能そのものが、100種類以上のインクを展開し、インクに強みを持つセーラー万年筆と相性がよかったことです」(セーラー万年筆)。

文房具マニアと呼ばれる人の中にもさまざまなジャンルがあるが、イラストを描いたり、カリグラフィーを楽しんだりする人はインクに強いこだわりを持つ人も多い。アートにも多様な使い方ができるケセラボールペンは、そうしたアート志向が強くインクにこだわりの強い層に愛用者が広がる可能性がある。

つまりケセラボールペンは“消すためのペン”であると同時に、“表現を足すためのペン”として位置づけられているのだろう。年間100万本という売上目標からも、そうした新しい使い方を広げていこうという意志を感じた。

取材協力/セーラー万年筆株式会社

取材・文/桑原恵美子

Author
フリーライター。日経トレンディネット、日経クロストレンドで長く大手チェー ン飲食店や新オープンの商業施設、食品メーカーなどの取材に携わる。ぐるなび が運営するレストランガイド媒体「dressing」でも100軒以上の飲食店を取材し、 自身の推し飲食店を紹介する「満たされメニュー」をぐるなびPROで連載中。

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