4月10日、投資事業などを行うAIフュージョンキャピタルグループが「鰻の成瀬」を展開するフランチャイズビジネスインキュベーションの株式の58.0%を取得したと発表しました。
これにより、鰻の成瀬はAIフュージョンキャピタルグループの子会社として、再成長を目指すことになりました。店舗が急減した鰻店が再び拡大する道を考察します。
※画像はイメージです。
持株を売却した後も創業者は社長の座に留まるか?
AIフュージョンキャピタルグループは、「AI・DX による業務効率化」「SNS マーケティングによる集客最大化」「地方自治体及び金融機関ネットワーク」という自社の強みを活かすことで、「戦略的な出店」「店舗収益性の向上(営業利益率 15%水準を志向)」「フランチャイズ網の拡大」による企業価値の向上に取り組むといいます。
しかし、具体的な立て直し策は示されておらず、その道も決して平たんではなさそう。
鰻の成瀬は2024年8月期に8000万円の純利益を出しましたが、2025年8月期には4000万円近い純損失を計上しました。店舗数は一時400店舗近くまで拡大したものの、2026年3月末には270店舗あまりまで減少。1号店オープンから3年で400店舗に迫る勢いで急拡大し、2025年秋ごろから100店舗近くを閉鎖したことになります。
AIフュージョンキャピタルグループは、フランチャイズビジネスインキュベーション代表取締役社長の山本昌弘氏などから、持分の58%を5800万円で取得しています。しかし、AI社から2.6億円もの貸付を行っていたことも明らかになっています。
フランチャイズビジネスインキュベーションの公式ホームページを見る限り、代表取締役社長は買収後も山本昌弘氏から変わっていません。
山本氏は自らの持株を売却していることから、今後は雇われ社長のような立場となって立て直しに邁進することになるのではないでしょうか。2025年8月期の営業利益は5400万円であり、2億円を超える返済負担は重く、再成長の道が難路であることは想像に難くありません。
店舗が急拡大する中で顧客目線が薄れたか?
鰻の成瀬のビジネスモデルは当初、完璧に見えました。
価格を2000円程度に設定し、うな丼の中での中価格帯を狙いました。低価格帯は「宇奈とと」や「すき家」があり、高価格帯は個人の店が中心で4000円からそれ以上で設定されていることがほとんど。つまり、鰻の成瀬はうな丼の空白地帯を狙ったのです。
さらにフランチャイズモデルを採用し、オペレーションを徹底的に簡略化しました。焼きの職人を必要とせず、オーブンで冷凍の鰻を焼く体制を整えたのです。
フランチャイズで店舗拡大を狙う場合、オペレーション負荷の軽減は必須。誰でも簡単に店を持つことが重要だからです。
しかし、顧客目線を欠いていたことがやがて表面化します。
一部のメニューで「アメリカウナギ」を利用するようになったのです。通常の鰻店では「ニホンウナギ」を使いますが、「アメリカウナギ」の方が安く仕入れることができます。ただし、「アメリカウナギ」は皮に厚みがあり、どうしても口に入れた感触が悪く、口の中に残ってしまうなどのネガティブな面があります。
収益性で判断すれば「アメリカウナギ」の魅力は高いですが、顧客目線ではそうはいきません。
オーブンで焼く方式も、顧客にとっては早く提供されて、どこの店でも同じ品質のうな丼が食べられるというメリットはあります。しかし、ランチで2000円を出せば老舗の天丼や親子丼、ちょっとした寿司などの贅沢な料理が食べられるわけで、提供スピードは差別化要因にはなりにくいのが現実です。
鰻店を利用しない人は4割を超える
鰻はそもそも食べる人が少ないという事情もあります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の市場調査データによると、鰻店を利用したことがない割合は全年齢で4割を超えています。よく利用している人はほとんどおらず、たまに利用する人が2割程度。この割合は40代以降の男性で高くなります。
つまり、鰻店はお金に余裕があるミドル・シニア層のニーズに最適化し、リピーターになってもらうのが勝ち筋。そう考えたとき、オペレーションの簡略化や「アメリカウナギ」を提供する店というのは、ネガティブな材料ばかりが目立ちます。
低価格帯の「宇奈とと」も店舗拡大には苦戦していました。2021年に100店舗目を達成していますが、この店は焼鳥居酒屋「やきとりの扇屋」との複合店。鰻単体のニーズを獲得しづらいためか、多業態化することで付加価値をつけているのです。
鰻の成瀬が再成長する道筋とは?
鰻の成瀬が再成長する道は3つあると考えられます。1つ目は従来のターゲットに合わせて提供する品質を戻すこと。2つ目はターゲット層を移すこと。3つ目は多業態化することです。
鰻の成瀬は店舗が急拡大していた通り、一時は高価格帯の鰻店から客を奪っていました。しかし、提供品質が落ちたことによって、客離れを引き起こしたのです。
これを従来の品質に戻し、集客を図ることで客足が回復する可能性があります。ただし、ウナギの価格が高騰する中でこれまでの価格を維持し、高い品質を維持するのは難しいでしょう。値上げをすれば競争力を失うことにもなりかねません。
ターゲット層を移すことで、客数の回復を図ることもできます。例えば、宇奈ととはファーストフード並の価格で提供しています。鰻の成瀬も低価格帯に最適化し、差別化要因を際立たせることで客を奪うことができます。
海外観光客への最適化もターゲットを移す例の一つ。牛カツの店は今や外国人観光客で埋め尽くされるようになりました。SNSなどを通してその魅力が人々に広がったのです。海外の人にとっては珍しいうな丼も、そのポテンシャルを十分持っているように見えます。
多業態化も生き残り策の一つになるでしょう。宇奈ととを運営するG-FACTORYはもともとこのブランドの運営会社として設立されましたが、その後は様々な飲食ブランドを立ち上げ、業態を多角化しました。
鰻の成瀬はフランチャイズオーナーを数多く抱えていることが、ビジネス上の資産でもあります。オーナーに対して魅力のある業態を提案することにより、業態転換や店舗の拡大を図って再成長に弾みをつけることもできるのではないでしょうか。
文/不破聡







DIME MAGAZINE












