「年を重ねるにつれて疲れやすくなりだるくなりがち……」「集中力が続かない……フットワークが重い」と悩む人も多いはず。一方で〝体力おばけ〟のような年を重ねてもパワフルで疲れない人もいる。
そんな〝体力おばけ〟への一歩を教えてくれるのは、『体力おばけへの道 頭も体も疲れにくくなるスゴイ運動』著者の澤木一貴さんだ。
澤木さんが提唱するのは、運動習慣がない人でも、高齢者でも始められるという「イージーHIIT」。疲れにくい体、体力を底上げする力を手に入れられるシンプルな運動とはどういう方法なのだろうか。
体力の鍵となる「行動体力」と「防衛体力」
「運動したほうがいいのは分かっている。でも、時間も体力も残っていない」——そう感じている人は少なくない。しかし、今日からちょっとした一歩を踏み出せば、〝体力おばけ〟を誰でも目指せるという。
「体力おばけというのは、年齢に関係なく元気で、日常生活を涼しい顔で乗り切ってしまうタフで頼もしい存在です。それは、生まれついた特別な能力ではなく、生活の中でのちょっとしたことの積み重ねによるもの。体力おばけになる鍵は2つです。それが行動体力(身体を動かす力)と防衛体力(病気やストレスに打ち勝つ力)です。体力とはこの2つがあると考えています。どちらか一つではなく、これらのバランスを整え、両方高めることが体力おばけへの近道です」
HITTとイージーHITTは何が違うのか?
私たちが体力というとイメージするのは、筋力や心肺機能、バランスといった行動体力の方だろう。しかし、こちらだけでなく、自律神経の切り替えや、免疫や睡眠の質、疲労回復力、ストレス耐性といった防衛体力も含めて底上げすることが、疲れにくさやメンタルを鍛えることにつながるという。
「行動体力を鍛えると、当然防衛体力も高まってくる部分があります。そのため、まずおすすめするのがイージーHIITへの取り組みです。そもそもHIITとは『High-Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)』の略で、全力に近い運動と短い休憩を交互に行う考え方を指します」
HIITというと、(20秒運動+10秒休憩×8セット)を行うことで、有酸素運動と無酸素運動の両方の効果が得られ、脂肪の燃焼など、プラスの効果が期待されている。しかし、バーピージャンプやマウンテンクライマー、腿上げなど、短時間で心拍数を一気にあげて出し切る全身運動であるため、厳しくハードな印象もある。
「皆さんがイメージしているHIITは、HIITという考え方の中にある一つの方法です。少しレベルを落としたものもHIITと言っても成立します。従来推奨されているHIITの方法では、動作が難しく、運動初心者にはハードルが高い。自分には無理だと諦めてしまう人も多く、まずはできる形で提案して、入口を作ろうと思って提案したのがイージーHIITです」
HIITの原理を押さえつつ、体力に自信がない人でも安全に取り組めるため、HIITのレベル1と考えればいいだろう。
イージーHITTのやり方
「イージーHIITの基本は『10秒動く→30秒休む』を3回で、合計1〜2分で十分です。どういうことをやるかというと、スタンドアップ・バックステップ・リズミカルジャンプの3種類です。スタンドアップというのは、椅子に立って座るを繰り返すだけです。バックステップは、後ろに足を引いてしゃがむという動き。リズミカルジャンプは全身を使って軽快に跳ねる運動です」
●スタンドアップのやり方

●バックステップのやり方

●リズミカルジャンプのやり方

この3つに厳選したのは、体力というテーマで、まず何を押さえるべきかを突き詰めた結果、筋力、バランス、跳ぶに取り組むことが、体力の土台を作るために近道だと考えたからだ。
「スタンドアップは、お尻と太ももを中心に、重力に負けない筋肉を鍛えます。立つ、座るという動作は、日常動作に直結するため、年齢を重ねたときの自立にもつながりやすい。バックステップは、後ろに足を引く分、不安定になります。そのため、自然とバランス機能が求められます。最初は壁などに捕まってトライ。慣れたら支えなしでやりましょう。そしてリズミカルジャンプは、腱や筋の弾力性、つまりバネを活性化させ刺激になります」
慣れてきたら、10秒を20秒、30秒へ伸ばすや、休憩を短くするなど、〝少しだけ背伸び〟で強度を上げていこう。
イージーHIITの注目すべき効果
「イージーHIITのような短い時間でも息が弾むような運動を繰り返すことで、心肺機能の改善、筋持久力の向上、柔軟性やバランスの改善が期待されます。そして、今回のミソとなるのが、この行動体力だけではなく、防衛体力への働きかけです。リズミカルな全身運動は、自律神経のバランスを整える効果があり、交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズになります。これにより、ホルモン分泌が安定し、幸せホルモンといわれる、セロトニンも出ます。認知機能に関わるBDNFといった脳内物質に影響する可能性も示されており、判断力が求められるビジネスパーソンほど、運動のリターンは大きい。運動後には心地よい疲労感とともに深い睡眠が得られ、疲労回復力も高まります」
更にビジネスパーソンにとって嬉しいのが、継続することによる「自己肯定感」や「心の安定」だ。
「続けるコツは〝自分を認める〟というところです。1回立って座ったらそれも運動です。運動習慣がない人ほど、最初に頑張りすぎて燃え尽きてしまいます。どんなに少なくても毎日動いてほしい。そうやって自分を認めてあげることが非常に重要です」
どんなに少ない運動量でも続けると体は変わる。その継続は、心にも大きな変化を及ぼすのだ。だからこそ、継続できるレベルがどれくらいかも見極めよう。
「いまの自分のレベルと目的を確認し、人と比べず、続けられる形に調整することが失敗を防ぎます。無理をしてやめたら効果が失われてしまう。また行動体力ばかりを追い込みすぎると、睡眠や回復が追いつかず体調を崩すこともある。まずは〝無理なく毎日〟、そして少しずつが基本です。体力は気合いではなく、続けられる設計からつくられるといっても過言ではありません」
体力があることで、疲れにくくもなりできることが増えるというのは、日々のパフォーマンスが大きく向上することにつながるはずだ。
澤木 一貴さんプロフィール
株式会社SAWAKI GYM代表取締役。トレーナー歴35年。静岡県の整形外科病院でトレーナー科主任を歴任し、リハビリ後の患者からトップアスリートまで医学的根拠に基づき指導。その後専門学校講師を12年間務め、機能解剖学を中心に学生教育を行う。現在はトレーナー活動の他、講演会やメディアで健康情報を発信している。出版書籍は20冊、監修雑誌は350冊以上。テレビ出演多数。
取材・文/田村菜津季
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