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4年連続の100億円突破となるか?劇場版「名探偵コナン」シリーズでヒットの再現性確立に挑む東宝の巧みな戦略

2026.04.21

東宝は2026年2月期に売上、利益ともに過去最高を更新しました。

自社配給作品の興行収入は1399億円。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は国内402億円、『国宝』は207億円を突破。メガヒット作2本を送り出したことに加え、興行収入10億円以上のヒット作は20本に及んでいます。

映画においてはヒット作の量産に取り組んでおり、アニメ事業での安定的な成長を実現する体制づくりも構築しています。

コナンの新作は歴代1位でのスタート

2026年2月期の売上高は前期比15.2%増の3606億円、営業利益は同5.0%増の678億円でした。本業で稼ぐ力を示す営業利益率は10.0%。10%を超えたのは2017年2月期以来。コロナ禍による逆風を受けた東宝ですが、見事に復活しました。

今期(2027年2月期)は4.3%の減収、8.7%の営業減益を予想しています。これは「鬼滅の刃」と「国宝」のメガヒットからの反動を織り込んでのものでしょう。

しかし、2026年2月期の期初予想も減収営業減益を計画していました。2024年公開の「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」が158.8億円のメガヒットを飛ばし、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」も25億円と健闘。116億円を稼ぎ出した「劇場版ハイキュー ‼ ゴミ捨て場の決戦」も引き続き高稼働を続けており、その反動が出ると見込んでいたからです。

しかし、2026年2月期の着地は増収営業増益で、過去最高を更新しました。2025年は「名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)」が147.4億円、「チェンソーマン レゼ篇」が興行収入108億円など、「鬼滅の刃」「国宝」以外にもメガヒット作を連発しました。

東宝が保守的な期初予想を裏切って好業績を叩き出すのは珍しくなく、今期の業績にも期待が持てます。

2027年2月期は話題作「名探偵コナン ハイウェイの堕天使」を公開済み。この作品は公開3日で興行収入35億円を突破しています。シリーズ歴代1位でのスタートとなりました。ゴールデンウィークを挟んでの更なる伸びにも期待ができます。

「コナン」シリーズは3年連続100億円突破の快挙を成し遂げており、4年連続が視野に入りました。

今期は他にSnow Manの目黒蓮主演の「SAKAMOTO DAYS」の実写版や、「ブルーロック」、「薬屋のひとりごと」など人気アニメの劇場版の公開が予定されています。

推し活×映画で3年連続100億円突破

映画は当たり外れが大きく、業績は安定しないというのが常識でした。しかし、東宝は2022年2月期から5期連続の増収営業増益を達成しています。ヒット確率を着実に上げているのです。その象徴的な存在が「コナン」の劇場版でしょう。推し活消費を巧みに取り込んでいるのです。

風向きが変わったのは2018年公開の「名探偵コナン ゼロの執行人」。SNS上で「(登場するキャラクターの)#安室透を100億の男にする」というハッシュタグが話題になりました。好きなキャラクターが登場する作品をメガヒットに押し上げようとする、推し活要素が映画に加わったのです。

その後も登場人物を100億円にするというファン行動がパターン化しました。映画も登場するキャラクターのカップリングを意識した作り込みを行い、ファンの人気を巧みに取り込んでいます。

こうして、「コナン」シリーズはヒットの再現性を手にすることができたのです。

映画においてヒット作の再現性を持たせることは、極めて難易度の高いものでした。メガヒット作の続編を出すだけでは、必ずしも成功するとは限らないからです。

2022年公開の東映の映画「ONE PIECE FILM RED」は200億円突破の超ヒット作となりました。しかし、この作品は中田ヤスタカやVaundy、Adoなどの優れたアーティストによる音楽をストーリーに巧みに組み込んだことで、成功を収めたと見るべきでしょう。

アメリカのアニメ映画「SING/シング」は続編の「SING/シング: ネクストステージ」もヒットしましたが、これは音楽をベースとしたストーリーが展開されているため。「ONE PIECE」のような冒険マンガで、音楽を織り込んだ作品をいくつも作れるわけではありません。つまり、「ONE PIECE FILM RED」の続編を作っても、二番煎じという評価を超えることは難しいのです。

東宝は「ハイキュー!!」も推し活要素を取り込んで成功させていますが、ヒットの方程式を組み立てているような印象があります。

「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」の新シリーズで新機軸を打ち出す

東宝はIP・アニメ事業も堅調に推移しています。2026年2月期は8.5%の増収でした。この事業はアニメの配信やキャラクターの商品化権などで収入を得ているもの。「SPY×FAMILY」「薬屋のひとりごと」「葬送のフリーレン」「僕のヒーローアカデミア」などの人気作が好業績に貢献しています。

2027年2月期は11.7%の増収を予想。「劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来」「チェンソーマン レゼ篇」などの世界的な配信収入を見込んでのものでしょう。力強く伸びる見込みです。

東宝はこの事業を安定的に成長させるため、M&Aに力を入れていました。2024年5月に取得した会社がサイエンスSARU。「ダンダダン」で独特な世界観を描いたアニメ制作会社です。この会社は2026年7月放送の「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」を手がけていますが、先行して公開しているPVでは原作をそのまま動かしたような表現を披露し、ファンを驚かせました。

東宝は自社にはない映像表現をM&Aで手にしたのです。

マスメディアの影響力が低下した今、人々の好みに合わせたコンテンツを作ることは簡単ではありません。それだからこそ、毛色の違うスタジオを買収する重要性が際立ってきます。

買収したスタジオから人気アニメを生み出し、映画化して収益化するという仕組みが構築されつつあるのです。

文/不破聡

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※付録はDIME2026年6月号通常版・増刊版

Author
大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融、経営戦略を中心とした記事を執筆中。得意分野は外食、ホテル、映画・ゲーム、エンターテインメント業界など。

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