■連載/阿部純子のトレンド探検隊
RIZAPグループが新会社「RIZAP建設」の設立を発表した。この事業は、コンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」の急速な店舗展開で培った独自の「ネットワーク型SPAモデル」を外部の事業者にも提供し、建設業界が抱える「高い、遅い、わかりづらい」という課題を「安い、早い、ちょうどいい」という価値で解決することを目指す。
さらに、グループ内の人材をリスキリング(再教育)し建設業界へシフトさせることで、2040年問題に代表される、深刻な人手不足という社会課題の解決にも貢献する計画も示した。
3つの「直」を追求したネットワーク型SPAモデル
チョコザップは1年間で1,000店舗以上、現在では1,900店舗以上を全国展開している。この爆発的成長を支えた独自の出店ノウハウを、建設コストの高騰、工期の長期化、プロセスの複雑化に悩む経営者に向けて提供するためRIZAP建設を設立したと、RIZAPグループ株式会社 代表取締役社長 瀬戸 健氏は話す。
「我々は1年間で1,000店舗超える、前例のない形で出店のチャレンジをしてまいりましたが、その目標を阻んだ巨大な壁が『物価高騰』『人材不足』『多重下請構造』でした。建設業界の構造的課題に直面したことから、我々は独自に3つの『直』を追求した、建設業界の常識を覆す、『ネットワーク型SPAモデル』を確立しました。
物価高騰に対しては『直取引』、人材不足に対しては『直雇用』、多重下請構造に対しては『直発注』することで、出店の上流から下流まで、ネットワーク型SPAモデルで一括受注し、ワンストップで支援していきます」(瀬戸社長)
物価高騰に対しては、サプライヤーとの直接取引、独自製造、工場からの直取引で中間マージンを排除し、マルチな調達網により資材不足のリスクも回避する。
人材不足に対しては、職人をRIZAPで直接雇用し、また、職人を社内で育成する体制を整える。
多重下請け構造に対しては、専門工事業者へ直接分離発注することで、中間マージンを排除し、現場との円滑なコミュニケーションと正確な施工管理を実現する。
ネットワーク型SPAモデルでは、チョコザップの1,900店舗以上の展開で得たスケールメリットを活かし、最適な品質の資材を最適価格で調達。また、全国の施工パートナーとの強固なネットワークにより、複数店舗の同時着工にも柔軟に対応する。
通常費用から25~30%削減、通常工期の2倍速、適正品質にコミットするという「安い、早い、ちょうどいい」という価値を提供し、出店事業者の負担を劇的に軽減。これまでコストや工期が理由で諦められていた店舗出店のハードルを下げ、地域の経済活性化と日本の活性化に貢献することを目指す。
対象業種はオフィス、美容室、クリニック、コワーキングスペース、小売店、居宅リノベーションなど多岐にわたる。当面はチョコザップのノウハウを活かせる内装工事を主軸とするが、将来的には躯体工事や土木分野への参入も検討していくという。
ネットワーク型SPAモデルは、本格始動前のテスト期間として実施した半年間で、外部案件を186件受注し、約30億円を超える発注・納品を完了した。品質、納期、コストの全てにおいて顧客から高い評価を得ており、入札案件では圧倒的なコスト競争力と短納期で受注を獲得した実績もある。
資材調達網は国内外の数十社に及び、家具や重機なども含めて確立されているとのことで、この実績を基に、RIZAP建設は今後、年間60億円以上の売上規模を目指し、事業を本格的に展開していく。
「きつい、汚い、危険」の3Kから「健康・快活・給与アップ」のと新3Kへ
RIZAP建設は、単なる建設事業に留まらず、日本社会が直面する構造的な課題解決にも挑戦する。特に、2040年に建設業界で約122万人の人材が不足すると予測される「2040年問題」に対し、民間企業の立場から直接的な解決策を提示する。
その中核となるのが、RIZAPグループのホワイトカラー人材最大500名を、ブルーカラー(建設技能者)へと転換させる大規模なリスキリング計画だ。
「建設職人の年収伸び率は事務職の約3~4倍となり、市場はエッセンシャルワーカーを高く評価している現実があります。社内での新たな挑戦として、グループ全体で最大500人のホワイトカラー人材を、ブルーワーカーやエッセンシャルワーカーとしての活躍の場へシフトさせる計画を進行しています。
このシフトは、RIZAPグループがこれまで推進してきた、チョコザップでの無人運営エコシステム確立、20%を達成したRIZAPグループ全体での業務効率化といった生産性向上の取り組みがあることで可能となります。
業務効率化によって創出された時間を成長分野に振り向けることで、グループ全体の生産性向上と収益力向上を実現したいと考えています。
この取り組みを通じて、建設業界の『きつい、汚い、危険』という従来の『3K』のイメージを、『健康・快活・給与アップ』という『新3K』へと再定義することを目指しています。
座りすぎによる健康リスクが指摘されるデスクワークに対し、建設現場での全身を使う労働を『ファンクショナルトレーニング』と捉え直し、仕事を通じて健康になるというポジティブな価値観を提唱したいと考えています」(瀬戸社長)
また、人材育成のプラットフォームとして「RIZAP建設育成アカデミー」を設立。RIZAPのトレーナー育成で培った伴走型メソッドを応用し、座学と実技を融合した独自プログラムを提供する。
20社以上の協力企業と連携した実地研修や国家資格取得の全面的な支援も行い、未経験者を最短でプロフェッショナル人材へと育成。個人・社会・会社の「三方よし」のエコシステムを通じて、RIZAP建設は日本の建設人材を永続的に輩出するプラットフォームとなることを目指す。
【AJの読み】ギネス認定されるほど急速なチョコザップ出店から生まれた建設業界への挑戦
2023年1月24日~2024年1月23日の1年間でオープンしたチョコザップ 1,030店舗のうち、24時間営業は1,020店舗で、「1年間で最も多く出店した24時間営業のフィットネスジム・センター」としてギネス世界記録に認定された。
ギネス認定されるほどのチョコザップの急速な出店で浮かび上がった課題が、RIZAP建設設立への原動力となった。当面は内装工事が中心となるが、内装以上の工事が可能な取引先もすでに存在するとのことで、今後はM&Aなどを通じ、チャレンジできる領域を広げていきたいと意気込む。
職人の仕事をファンクショナルトレーニングと定義し、8時間の勤務時間をフィットネスプログラムと捉える考え方はRIZAPらしいが、グループ内の人材のキャリアシフトに関しては、現在、約50名がすでにキャリアチェンジで活動しており、元の職種や役職は様々とのこと。
瀬戸社長は「500名の希望者を集めるには、丁寧なコミュニケーションが不可欠で、社員にとってキャリアチェンジが自身の将来にどう役立つかを、深く理解してもらうことが重要」と話す。
RIZAP建設の代表取締役社長には幕田 純氏が就任。幕田氏はパーソナルトレーニングジム事業の立ち上げ時からRIZAPに参画し、事業の推進、店舗の開発、施工管理の現場に携わり、RIZAPメソッドを構築した人物。
建築領域に進出し、グループ内の人材を再配置して職人育成していく取り組みを成功させるのか、幕田社長の手腕が問われる。
取材・文/阿部純子







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