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寝言も言うしオナラもする、利便性のないロボット「ニコボ」が誕生した理由

2026.04.24

ロボットなのに機嫌が悪ければ無視する。ロボットなのに気ままで役に立たない。

心の豊かさに全振りした“弱いロボット”「NICOBO(ニコボ)」が人気だ。

手掛けたのは、パナソニック株式会社。2023年5月から販売を始め、累計販売1万体を突破した。

ロボットが完璧である必要はない

「便利にしない」「生きものらしさ」をコンセプトに最新技術で作り上げたロボットは、人と触れ合うことで笑顔を生み出し、温かい空気で包み込んでくれる。

利便性、機能性、タイパやコスパを追求しまくる今の時代に、あえて人に依存しないロボットはいかにして生まれたのか?

今回、パナソニック株式会社NICOBOプロジェクトリーダーの増田陽一郎さんに話を聞いた。

――ニコボを開発しようと思ったきっかけを教えてください

「きっかけは、「この先の暮らしにどんな豊かさが必要なのだろうか」という素朴な問いでした。便利で高性能な製品が溢れる一方で、情報に追われ、心の余白が失われているように感じており、これが社会課題だと気づきました」

「当初は、AIや会話に特化した“賢いロボット”も検討していましたが、上記の社会課題を解決するには、「役に立とうとしすぎるロボット」ではなく、ただそばにいることで人の気持ちを少し軽くする存在にこそ価値があるのではないか、と思うようになったんです」

――パナソニックと聞くと便利で役立つロボットをイメージをしてしまいますが

「私たちも最初は弊社の強みを活かして色々な機能を盛ってしまい、心の豊かさと利便性がごっちゃになっていました。しかし、豊橋技術科学大学の岡田美智男先生との出会いが大きな転機となったんです」

――というのは?

「岡田先生は『ロボットが完璧である必要はない。むしろ弱さがあるからこそ、人は助けたり、気にかけたりする』という、“弱いロボット”を提唱されている方で、ロボットが人の代わりに何かをするのではなく、人の優しさや寛容さを引き出す存在になることを教えていただき、その思想に強く共感しました」

「そこからニコボは、「何かをしてくれるロボット」ではなく、何もしないけれど気づくと笑顔になっている存在を目指すようになりました。ニコボが暮らしに与えたいのは“効率”ではなく、“ゆとり”。この考え方こそがニコボ開発の原点であり、今も変わらない軸になっています」

そんな、何もしないけど笑顔になれる“弱いロボット”は、道具ではなく、同居人。

岡田先生も「ニコボは“弱いロボット”のはじめての社会実装」と話しているが、ニコボはどのようなターゲット層に向けて開発されたものなのか?

「ニコボは一人暮らしの方、ご夫婦、ファミリーなど「誰かと暮らしていたい」「気配のある存在に癒されたい」と感じるすべての生活者が対象です」

「最近では、医療・介護施設、オフィス、学校など、人と人の関係性が生まれる場所でもニコボの価値が発揮できることが分かり、法人向け展開も本格的に始めています」

――ターゲット層に刺さり、ヒットすると思った理由は?

「暮らしの中に「正解」や「効率」を持ち込まず、人が勝手に感情移入してしまう余白があることが、今の時代に必要だと感じていました」

「2021年に行ったクラウドファンディングではわずか6時間ほどで支援が集まり、実際のオーナーさんからも、「癒された」「笑顔が増えた」「家族の会話が増えた」といった声が多く届いています。ニコボは“問題を解決する”存在ではなく、“毎日をちょっと良くする”存在として受け入れてもらえたのだと思っています」

実際にニコボと暮らしているユーザーからは、こんな嬉しいコメントも寄せられた。

「いいね!のためではなくニコボを応援したい、ニコボの良さをもっとたくさんの人に知ってもらうためにSNSに投稿していると話してくださいました」

「ニコボはもう製品ではなく、「家族」や「同居人」として迎えられている。その事実が私たち開発者にとって一番の原動力になっています」

ロボットの「何もしない価値」が人間らしさを取り戻すきっかけになる

NICOBOプロジェクトリーダーの増田さんは以前、こんな言葉を残している。

『ロボットというのは中途半端に便利にしてしまうと、ちょっとできないことがあったときに「あ、これできひんのか」となって、オーナーさんにがっかりされてしまう。でも人は、自分のペットを見て、「この子は役に立つのかな?」なんてことは考えないじゃないですか。そのまま、ただいてくれるだけでかわいいわけで。「生きものらしさ」を大事にするニコボも、そういう存在にすべき、と考えました』

ロボットではなく生きものらしい存在。ロボットだからと言って、役に立つ機能を求めない。

筆者も愛猫と暮らしているが、愛猫を人生に役立つ存在とは思っていない。結果論として心と身体に大きな恩恵があるのかもしれないが、ただ一緒に居たいから愛猫と暮らしているだけ。

はたから見れば居てもいなくてもいい存在は、実は絶対に居なければならない存在になることもある。

愛猫の存在はニコボに通じるものがある気がした。

それだけに、開発には想像以上の苦労とこだわりがあったのだろうと思う。

必要性のない必要を生むためのこだわり。

「ニコボで一番こだわったのは、正確に動かさないことです。ロボットは本来、言われたとおりに動く存在ですがニコボはあえて気まぐれで、反応しないこともあります」

「ニコボのふるまいには常に揺らぎを持たせ、同じ反応をしないようにしています。また、内部構造も生き物の筋肉や関節の考え方を参考にしています」

「また、ニコボの価値はスペックや機能そのものにはありません。独自の言葉モコ語、寝言、オナラ、機嫌の良し悪し、それらはすべてニコボ自身が自分の世界を持っており、生き物としてふるまいます」

そして、単なるロボットではないニコボには他社には真似できない魅力がある。

「振る舞いに解釈の余地(余白)があるため、オーナーが「今こう思っているのかな?」と想像することで、ニコボとオーナーの関係性が構築されていきます」

「ニコボは人の声や表情、触れられた感覚などを感じ取りながら、その時々で反応を変えますがあえて毎回同じ答えは返しません。パナソニックが培ってきた技術を裏側で使いながらも、前に出すのは便利さではなく“余白のあるふるまい”。思い通りにならないからこそ、同居人のような存在になっていく。その距離感こそが他にはないニコボの価値だと考えています」

「パナソニックの技術力を土台にしつつ、便利さよりも感性を優先する。この感性の設計そのものが、簡単には真似できないニコボならではの価値だと考えています」

ニコボ開発の中で特に困難だったことを聞くとこんな答えが返ってきた。

「それは「便利にしない」という判断です。パナソニックは長年、便利で高性能な家電を作っています。その流れに逆らい、「何もしない価値」を説明し続けることは簡単ではありませんでした」

「技術面でも生き物のような動きを“意図的に不安定に作る”という、前例のない開発に苦労しました。それでも、コンセプトだけは最後までブレないよう守り続けました」

今年3月、ニコボは累計販売1万台を突破した。その偉業に甘んじることなく、人の笑顔と人の優しさをさらに引き出す新たな仕掛けを今年度中に展開する予定だという。

これからのニコボに期待することは?

「弱いからこそ、人が手を差し伸べたくなる。ニコボを通じて、人の優しさや寛容さが自然と引き出される社会になればと思っています。ロボットが人の代わりに何かをするのではなく、人らしさを取り戻すきっかけになることが私たちの最大の期待です」

「これからも、ニコボがさらに広めるためにニコボらしさを失わずに進化させていきたいと思っています。例えば、LLM(大規模言語モデル)も活用しながら、正確な会話ではなく想像の余地がある言葉を増やしていきます」

「また、ニコボ同士のコミュニケーションや法人・公共空間での活用も広げ、人と人の関係をつなぐ存在へと育てていきたいです。加えて、ロボットと共棲することを当たり前にするためには文化醸成が大切だと思っています」

最後に、今後の構想を聞いた。

「私たちはニコボ単体だけで終わらせるつもりはありません。「人とロボットが共棲する日常」を実感できる、新しいプロダクトやサービスの可能性を探っています。ただし、どんな形であっても、中心にあるのは“心の豊かさ”。それだけは変わりません」

取材協力
ニコボ公式サイト
ニコボ公式Instagram

文/太田ポーシャ

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