4種の北朝鮮菓子、実食レポート
店員の女性にもおすすめを聞いたりしながら、買ったのは次の4品。
・その1「トウモロコシグミ」
最近の日本のグミ市場といえば「高弾力」か「ジューシー」が主流だが、それらとは絶妙に違う。確かな歯ごたえはあるものの、ハリボーのような強固な弾力ではない。例えるなら、トウモロコシフレーバーのういろうを食べているような、不思議な食感だ。甘さは、控えめ。何より、小さなトウモロコシを模した形がミニチュア玩具のようで、目にも楽しい。個包装という配慮も相まって、ばらまき土産としての「気の利き方」に、少し意外な洗練を感じた。「不穏な国」のイメージからはほど遠い、なんともチャーミングな一品だった。
●その2 イチゴサンドビスケット
店員のお姉さま方が「これが間違いない!」と太鼓判を押してくれたのが、この一品。直訳すれば「イチゴクリーム重なり菓子」。つまりは、イチゴクリームのビスケットサンドだ。
いざ実食。……ちょっとモサモサする。いや、ホロホロっとした生地というべきか。中に挟まれたイチゴクリームは、リッチな油脂感とは無縁の、乾いた甘酸っぱい砂糖ペースト的なものだった。それが申し訳程度に「うす――く」塗られているのだが、この慎ましさがたまらなく素朴で、昭和の記憶を呼び覚ました。
●チョコレート
最も安牌だと思っていたチョコレートで、まさかの撃沈。犯人は、その「中身」にあった。原材料名を見れば一目瞭然。ココアバターと乳製品が主役を張る、これは紛れもないホワイトチョコではないか。「茶色の皮を被ったホワイトチョコ」という奇妙な存在に、ホワイトチョコ嫌いの筆者は悶絶。
パッケージの重厚さからして、おそらくは贈答用の高級ラインなのだろう。乳製品と油脂がぎっしりと詰まったその一枚は、最高級の「栄養」であり、至高の贈り物なのかもしれない。味覚の不一致を超え、豊かさを味わおう。
●もち米スナック
「米のお菓子」とあったので素朴なポン菓子を想像したが、取り出して見るとかりんとうくらいのサイズだった。味はほんのり甘い「ハッピーターン」を思わせる軽快なスナックだった。原材料は、もち米、白砂糖、食用油、食塩。実にシンプルで、図らずも今の時代に求められる「グルテンフリー」を体現している。
中国市場において、北朝鮮製の製品が商品「無農薬・無添加」として一部で高く評価されている点があるのも興味深い。もちろんそれは「農薬や添加物を買う物資が不足している」なるイメージを持たれる切実な事情の裏返しなのだが、食の安全に揺れる中国市場においては、信頼の置けない自国産よりも、皮肉にも「純粋な北朝鮮産」の方が選ばれるケースもあるのだという。なおそれは、主に化粧品や高麗人参配合の製品などでその傾向が強いと、大熊氏は指摘する。
菓子には社会主義国の背景がつまっていた
さて、4つの菓子を食べ終えて共通して感じたのは、その圧倒的な「素朴さ」だ。人によっては、そこに強烈なノスタルジーを抱くかもしれない。その背景について、大熊氏は「それこそが社会主義国の味」だと指摘する。
「売りぬくために、競い合ってクオリティを高めるという考え方が浸透していないからこそ、いつまでも『懐かしの味』が守られ続けているとも言えます。主な開発動機、向上の動機はやはり『党の指示』ですよ。そもそも自国の富裕層は海外の既製品を好みますから、自発的に製品開発をする動機も薄い。それでもこうした菓子を作るのは、一番大きいのは北朝鮮指導部が製品の『国産化』に重点を置いており、庶民が食べられるお菓子を供給するため、あるいは働く場所を確保するという側面があるのでしょう。マーケティングの概念が希薄なのか、今回入手されたチョコのように、パッケージなどは中国側に丸投げしているケースも見受けられます」(大熊氏)
そんな、定期的に丹東へ通い詰める大熊氏をしても、昨年驚かされた出来事があったという。それが、北朝鮮産の「アイスクリーム」との遭遇だ。
「コロナ禍を経て物流が回復し、品揃えが豊かになっていく中で、まさかアイスまで並ぶようになるとは驚きました。それまでは日持ちのする乾き物が中心でしたが、温度管理が不可欠な氷菓が国境を越えてきた。輸送する冷凍車自体は中国製だとしても、それだけ物流のパイプが太く、スムーズになっている証拠です」
お菓子ひとつでも、国の風景が見えてくるのが面白い。次にこの街を訪れる時、並んでいるのはもっと洗練された味なのか、それとも変わらぬ素朴さなのか。その味を確かめに、ぜひまた再訪したくなった。
おまけ
文/ムシモアゼルギリコ







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