
この2ヶ月ほどで、アジア地域に住む人々は「シーレーン」を何よりも意識するようになった。
液化天然ガスも石油も、東アジア地域へは中東から船に積まれてやって来る。これを止められたら最後、我々の生活は成り立たなくなる。そして、今現在そのようなことが現実になっているのだ。
いや、本当はもっと以前から「燃料危機」が到来している。ウクライナ戦争とガザ紛争は我々の暮らしにも大きな影を落とした。そして、「飛行機を使った旅行」が一気に贅沢なものになった。これは国内、海外問わずの話である。
ここ数年の世界情勢を背景に、航空会社は料金体系の大幅改編を余儀なくされているようだ。この記事では、ANA国内線の新料金プランを見ていきたい。
新しく登場した「3本の柱」
今年5月19日搭乗分から、ANAは新しい料金システムを導入する。
これが、SNSでも様々な角度から大きな議論になっている。「新料金体系のせいで予約画面が分かりづらくなった」という声も大きいが、この記事では料金体系自体に注目の目を向けてみたい。ANAの国内線は、3本の柱が用意される。それぞれ「シンプル」「スタンダード」「フレックス」と名付けられた。
要はサービスの大小により3通りの料金が提示されるようになるということだが、ここで気になるのはやはり「シンプル」。従来よりもサービスの内容を絞り、その分だけ料金を低廉化しようという試みでもある。
払い戻しは有効だが、無料手荷物許容量は2×23kgではなく、1×23kgになっている。事前座席指定は出発時刻24時間前から可能、座席のアップグレードは不可、そして最も気を付けるべきは、予約変更ができないという点だ。
ここから「ANAがLCC化した」とも評されている。此度の措置はアメリカとイスラエルによるイラン攻撃の影響を受けたもの……というわけではまったくない。ANAがこの料金システムの内容を実施日程と共に発表したのは、去年5月のことだからだ。
これは本来なら喜ぶべきことではないが——結果として航空業界は動乱を見据えた再編の時期を迎えることになり、同時にANAの新料金プランがその先鋒的存在となってしまったのだ。
予約変更はできるの?
ANAの「シンプル」プランとLCCと違うのは、前者は「23kg以内の荷物を1個持ち込める(預入荷物にすることができる)」という点だ。
LCCであればそのあたりはさらにシビアで、別料金を払わなければ7kgの手荷物1個ということが殆どだ。それに比べれば、ANAの「シンプル」は空路移動の自由度が大幅に保障されていると言ってもいいだろう。現実問題、2×23kgの無料手荷物許容量は、むしろ持て余してしまう利用者も少なくないはずだ。
が、一方で「レガシーキャリアなのに予約変更ができない」という点は残念と言わざるを得ない。一つ上のプラン「スタンダード」であれば、予約変更は別料金を払えば実行可能。「シンプル」はそうしたことすらできない、というわけだ。
これはやはり、しっかりとしたスケジュールを持っている人向けのプランだろう。多少でも未確定な部分があると、そのせいで予定がずれ込んで航空券を取り直す羽目になり、結果として大損する……という可能性も考えられる。
「お得」と言うべきか?
では、具体的にプランの違いでどれだけの料金差があるのだろうか?
今回は筆者の地元静岡の空港から札幌(新千歳)までの航空券を検索してみる。5月29日発。実はこの静岡ー札幌便は10月に運休してしまうのだが、そうなる前に実際に乗ってみよう……という計画を立てているのだ。
「フレックス」は5万2,870円、「スタンダード」は1万6,753円、そして「シンプル」は1万4,205円。「スタンダード」と「シンプル」の価格差は2,500円といったところだ。復路も同額だった場合、「シンプル」にすれば往復で5,000円セーブできるのだが……これを単純に「お得」と解釈してもいいのだろうか?
やはり、予約変更ができない点がネックになるだろう。この可能性を加味した場合、「シンプル」は必ずしも賢明な判断とは言い切れない。
もしも誰かに、ANAの新料金体系が「現在の世界情勢を克服し得る合理的な施策か?」と問われた時、筆者はそれに即答できる知識と勇気は持ち合わせていない。「これは絶対に買いだ!」と言い切れるほどの料金差ではなく、「予定が狂ったら高くつく可能性がある」というLCCの欠点がそのまま移植されている感が否めない。
航空業界と世界情勢
残念ながら、世界情勢の見通しは極めて不透明だ。
航空業界にとっては、パンデミックに続く災禍と言わざるを得ない状況であるが、ともかくANAが示したような料金プランは他の航空会社(国内・国外問わず)にとっての雛型になっていくのではないか。
航空業界とは、そうした外的要因に極めて影響されやすい分野でもある。燃油サーチャージも大幅値上げが予定され、旅行の難易度は短期間で上がってしまったと考えるしかない。が、それでもなお「安く旅行したい!」と考える人にとって、ANAの新料金プランは一筋の希望の光となっているようだ。
参考
ANA
2026年5月19日搭乗分から国内線の運賃をリニューアル 予約・搭乗ルールを国際線と共通化していきます ANA
文/澤田真一
地方都市から別の地方都市へ行くには、どうしたらいいだろうか? 幸いにも、日本は世界有数の鉄道大国である。新幹線というものが存在し、それを使って日本各地へ足を運ぶ…







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