深刻な人手不足によって、多様な人材活用としてシニア層に対する労働力としての期待が高まっている。最近のシニア層は、仕事や日常生活の中に生きがいを見いだしながら前向きに過ごしている人も多く、70歳以上になっても働き続ける人が増えている。
人材総合サービスを全国で展開するスタッフサービス・ホールディングスは、65歳から74歳のいわゆる「アラウンド古希」に「アラウンド古希の生きがい、働きがいに関する意識調査」を実施して、結果を公開した。この調査は「就労有無」と「就労意向」を掛け合わせた4タイプに分類しており、“70歳の壁”を超えて働ける環境作りや仕事のマッチングについて考えていくヒントになりそうだ。
アラウンド古希(65歳~74歳)の4タイプの定義
「就労有無」×「就労意向」で対象者を4タイプに分類。
・あなたのご職業を教えてください。複数ある場合はメインのご職業をひとつ選択してください。
・あなたは現在働いていますか? 現在働いている方は週に平均何時間働いていますか? あてはまるものをひとつ選択してください。
・あなたが今の職場で働いている理由は何ですか? あてはまるものをすべて教えてください。
働いている人の雇用形態では、41.0%が「パート・アルバイト(継続的に勤務)」だった。「積極就労層」の男性は「自営業・自由業」と「契約社員」が多かったが、「消極就労層」は「正社員」と「自営業・自由業」が多かった。働いている人の労働時間では、週40時間以上働いている人(フルタイム)の割合が10.4%でもっとも高く、30時間以上で見た場合では「積極就労層」よりも「消極就労層」の方がやや勤務時間が長い傾向だった。「消極就労層」では、男性や65歳から69歳の働く時間の割合が多い傾向になった。
働いている人のいまの職場で働いている理由では、「積極就労層」と「消極就労層」の両方で男性は「スキルや経験を生かせる」という声が多かったという。「積極就労層」は65歳から69歳よりも70歳から74歳の方が多様な理由になる傾向があり、「年齢に関係なく採用されたから」、「社会に貢献できる」、「学びや成長の機会を得られる」などが全体平均よりポイントが高くなった。
働いていない人の理由の1位は自分に合う仕事が見つからない
・あなたが働いていない理由は何ですか? あてはまるものをすべて教えてください。
働いていない人の理由について、全体では「趣味や自分の時間を楽しみたいから」(32.2%)が1位で、就労意向層では「自分に合う仕事が見つからなかった・採用されなかったから」(29.6%)が高いという結果になった。3位には「持病や体力低下などにより働ける状況にないから」(20.3%)が入った。就労意向層の男性は「自分の能力やスキルを生かせないから」が16.7%と高く、スキルを生かす機会に巡り合えていないと感じている人も多いようだ。
・あなたが働くためには、どんな条件や環境が必要だと思いますか? あてはまるものをすべて教えてください。
働くために必要な条件や環境では、全体の上位は「自分に合う働き方(勤務時間・場所)ができること」(63.5%)や「自分のペースで働けること(余裕をもって働けること)」(61.4%)だった。消極就労層では、「人間関係がいいこと」と「マニュアルが整っていて仕事が覚えやすいこと」という回答で、男よりも女のポイントが高かった。
就労意向層は「負担のない通勤時間や距離であること」(70.6%)を他タイプより重視しており、「人間関係がいいこと」と「同年代が働いている実績があること」のポイントも全体平均より高かった。これは心理的安全性を求める傾向が強い現れといえそうだ。「家族からの理解やサポートがあること」に関しては男女でポイントに差があったという。
・あなたは今後働きたいと思いますか? また現在働いている方はこの先も働き続けたいと思いますか? もっともあてはまるものをひとつ選択してください。
今後も働きたいと思うかについては、全体では43.1%が働きたいと回答しており、就労意向層では65歳から69歳よりも70歳から74歳の方が働きたい意向が強い傾向があった。さらに現在の就労有無に関わらず、今後も働きたいと回答した人に理由を質問すると、全体では「健康・体力を維持したいから」が87.2%で1位だった。それに「生活にメリハリを持たせたいから」(87.0%)、「金銭的なゆとりのある生活を送りたいから」(84.0%)が続いた。
積極就労層と就労意向層では、「健康・体力面に不安がないから」と「精神を安定させたいから」でポイント差が目立った。就労意向層の女性では、さまざまな世代と話したいという希望も多かったという。
・あなたは今後(も)働きたいかどうかの質問に対して、「あまり働きたくない」または「まったく働きたくない」と回答されましたが、今働きたくないとお考えになっている理由は何ですか? それぞれどの程度あてはまるか教えてください。
現在の就労有無にかかわらず、今後も働きたくないと回答した人の理由では、全体のトップ3は「趣味や自分の時間を大事にしたいから」(80.4%)、「もう十分働いたから」(71.7%)、「家族との時間を大切にしたいから」(64.9%)だった。消極就労層のトップ3は、「もう十分働いたから」 (79.8%)、「趣味や自分の時間を大事にしたいから」(76.1%)、「家族との時間を大切にしたいから」(57.6%)で、自分のプライベートを充実させたい傾向があることがわかった。就労忌避層は、「家族との時間を大切にしたいから」、「生活費を稼ぐ必要がないから」、「趣味の足しのお金を稼ぐ必要がないから」のポイント差が高いようだ。
もっとも生きがいを感じているのは積極就労層で低いのは消極就労層
・あなたは今生きがいを感じていますか? あてはまるものをひとつ選択してください。
現在、生きがいを感じているかについては、積極就労層が83.1%、就労忌避層が64.8%、就労意向層が59.9%、消極就労層が57.5%という結果になった。積極就労層と比較して消極就労層と就労意向層は20ポイント以上も差があった。性別では、消極就労層の男性が53.7%でもっとも低く、同層の女性は64.0%でポイントの開きがあった。年代別では、消極就労層の65歳から69歳が53.7%でもっとも低く、就労忌避層では65歳から69歳と70歳から74歳では10ポイント以上の差があった。
・あなたは今の生活に満足していますか? あてはまるものをひとつ選択してください。
今の生活に満足をしているかでは、積極就労層が85.8%、就労忌避層が76.5%、消極就労層が62.4%、就労意向層が52.4%の人が満足していると回答。性別では、就労意向層の男性が50.8%でもっとも低く、消極就労層は男性(59.6%)と女性(67.4%)で4タイプのなかで唯一男女差が見られた。年代別では、就労意向層の70歳から74歳が46.5%でもっとも低くかった。就労忌避層は、65歳から69歳と70歳から74歳では10ポイントの差があった。
就労意向層の約半数は働くことに対して健康面の不安を感じている
・働くことに関して、体力面でどの程度不安を感じていますか?
・仕事をする上であなたが感じている健康面・体力面に関する悩みや不安について、それぞれどの程度あてはまるか教えてください。
働くことに対して体力面での不安の程度については、就労忌避層が69.6%、消極就労層が68.7%、就労意向層が55.4%、積極就労層が44.6%という結果になった。性別では、就労忌避層の女性が78.4%でもっとも高く、積極就労層の男性が43.2%でもっとも不安が少なかった。消極就労層は、男女ともに健康面以上に体力面の不安が大きい状況といえそうだ。年代別では、就労忌避層の65歳から69歳が70.0%でもっとも高く、積極就労層の65歳から69歳が38.8%でもっとも不安が少なかった。
仕事をする上での健康面・体力面の不安では、消極就労層が「重いものの持ち運びや高いところでの作業ができにくくなった」(51.2%)、「足腰が弱くなった」(44.7%)など多くの項目で全体以上に不安を感じていた。性別では「トイレに近くなった」が消極就労層の男性が44.1%、就労意向層の男性が46.0%など男女で差が見られた。就労意向層の女性は、「目が見えづらくなった」や「物覚えが悪くなった」や「耳が聞こえにくくなった」といった身体変化面で男性以上に強く不安を感じていたという。年代別では、就労意向層の65歳から69歳が70歳から74歳よりも不安を感じていた。
アラウンド古希が大切にしているのは「家族を大切にすること」「生活リズムを崩さないこと」
・あなたがいま大切にしていることは何ですか? それぞれどの程度あてはまるか教えてください。
現在、大切にしていることでは、全体の1位は「家族を大切にすること」で92.9%だった。それに2位「生活リズムを崩さないこと」(92.8%)、3位「自分のできること・できないことを知ること」(90.0%)が続いた。積極就労層は、「社会とのつながりを持ち続けること」(91.2%)が上位だった。
消極就労層は、上位項目以外にも「感情的にならないこと」は女性が90.5%、70歳から74歳が89.2%と全体平均より高い傾向になった。就労意向層は、「ほかの世代の人と関わること」(74.2%)、「友人を大切にすること」(89.5%)のポイントが高く、人とのつながりを重視していた。65歳から69歳は「感情的にならないこと」が92.7%で全体平均より高いこともわかった。
今回の調査で4タイプから特に注目したいのは、働くことへの課題感が大きそうな消極就労層と就労意向層の2層だ。消極就労層は働きたくない理由として、「もう十分に働いたから」だけでなく、その背景に趣味や家族と過ごす時間を重視したい思いも強いことがわかった。さらに加齢に伴う健康面・体力面の不安だけでなく、「働く目的や意欲の低下」や「労働に見合う精神力の維持」など内面の不安もあるようだ。
就労意向層は、「自分に合う働き方が見つからなかった」という回答が目立った。「持病や体力低下などにより働ける状況にないから」という声もあったが、消極就労層と同様にプライベートも重視したいという要因も見えた。働くために必要だと思う条件や環境は、「人間関係がいいこと」や「同世代が働いている実績があること」など心理的安全性の重視も必要といえそうだ。
個人の加齢による身体能力の変化や心境の変化はさまざまなので、シニア層を労働力としてみるのなら企業側は個人の状況の違いを踏まえて、従来の就業条件や採用手法にとどまらず働きやすい柔軟な職場環境の整備が大切といえそうだ。
『アラウンド古希の生きがい、働きがいに関する意識調査 第2弾』概要
調査対象:全国在住の65歳から74歳の男女
調査期間:2025年12月1日~2025年12月8日
調査方法:インターネット調査
サンプル数:800人
(1)【積極就労層】:働きたくて働いている人
(2)【消極就労層】:働きたくないが働いている人
(3)【就労意向層】:働きたいが働いていない人
(4)【就労忌避層】:働きたくなくて働いていない人
男性65歳~69歳:(1)50ss(2)50ss(3)50ss(4)50ss
男性70歳~74歳:(1)50ss(2)50ss(3)50ss(4)50ss
女性65歳~69歳:(1)50ss(2)50ss(3)50ss(4)50ss
女性70歳~74歳:(1)50ss(2)50ss(3)50ss(4)50ss
アンケート調査は回収されたサンプルを各層の出現率に合わせるためにウエイトバック集計しています。
構成/KUMU







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