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なぜ、日本では大きな挑戦が生まれないのか?西野亮廣さんが語る「投資のない世界」のデメリット

2026.04.16

独自の視点から編み出された投資とお金、働くことについての考えをまとめた3年ぶりの最新刊『北極星 僕たちはどう働くか』(幻冬舎)を上梓した西野亮廣氏。

絵本やビジネス書の出版、アニメーション作品や舞台作品の制作、自治体とのプロモーション活動、ブロードウェイ・ミュージカルへの参画など、新たなことに挑戦し続ける西野氏はどんなことを学び、いかなる知識を得て、いったいどこへ向かおうとしているのか? 西野氏に話を聞いた。

西野亮廣(にしの・あきひろ)
芸人・童話作家。株式会社CHIMNY TOWN代表取締役社長。1980年兵庫県生まれ。99年梶原雄太氏とお笑いコンビ「キングコング」を結成。2001年バラエティ番組『はねるのトびら』にレギュラー出演して人気に。09年にしのあきひろ名義で絵本『Dr.インクの星空キネマ』を出版。絵本や小説、ビジネス書など著書多数。20年映画『えんとつ町のプペル』で脚本・製作総指揮を務め、26年3月27日に最新作『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』を公開、同作はミュージカルとして舞台化もされている。国内最大級のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」を運営するなど、幅広い分野で活躍中。

CHIMNY TOWN オフィシャルウェブサイト

〝投資がない世界〟の最大のデメリットとは?

──『北極星 僕たちはどう働くか』はビジネス書として3年ぶりの出版です。何を主眼に置いて執筆されましたか?

それはふたつあって、ひとつは投資についてです。

日本での舞台とアメリカのブロードウェイで、自分が「投資される側」と「する側」を経験して、その差やいいところ、悪いところを見たので、実体験として伝えられるなと思ったこと。ふたつ目は「事業投資型クラウドファンディング」(※)を自分で実際にやってみて、この選択肢がもうちょっと広まったほうがいいなと思ったことです。

※支援者に記念グッズなどの返礼品を渡す一般的なクラウドファンディングとは異なり、支援者に「事業の利益」を分配する仕組み。

──西野さんはブロードウェイでデンゼル・ワシントンとジェイク・ギレンホールが出演したミュージカル『オセロー』で共同プロデューサーとなり、ミュージカル『えんとつ町のプペル』の制作も控えています。本書に日本での舞台は自己資金、ブロードウェイは出資者を募る、と制作方法の違いが書かれていますね。

なぜ日本の舞台は出演者やスタッフへのギャラが後払いになっているのかというと、単純にお金が用意できるまでスタートできないからなんです。つまりチケットやグッズを売って、稼いで貯めないといけない。お金がないとそもそもプロジェクトがスタートできないんです。これ、後払いが本質的な問題ではなくて、「お金を貯め切らないとスタートできない」というのが問題なんです。

でも、もうその時点でスタートが遅いし、大っきい挑戦ができない。めちゃくちゃいいアイデアがあって、体力もあるのにもかかわらず、「若い」っていうだけで挑戦ができない。銀行も簡単にお金を貸してくれませんからね。だから「稼いで貯金してから」がこの国のルールになってる。

一方ブロードウェイでは、クリエイターに自己資金が一円もなくても、出資者がお金を出してくれたら、プロジェクトが始まる前にみんなにギャラを払えて、舞台を作ることができるんです。

──若い人が10年、15年と資金を貯めている内に年を取ってしまうし、アイデアも古くなるわけですね。

そうです。これが〝投資がない世界〟の最大のデメリットで、「若さ」をいとも簡単に捨ててしまってるんです。若い時間を貯金に充ててしまうわけですから。若い時に挑戦できないっていうのは、すごいもったいない。

一方で、事業投資型クラウドファンディングというのは、全員に参加切符があるわけです。これをやる・やらないはさておき、知っておいたほうがいい。それを「知っている」か「知らないか」は大きな違いです。

例えば映画を作るにしても、僕らの会社はアニメーション『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』の製作費の半分ぐらいにあたる4億8000万円を事業投資型クラウドファンディングで集めたんですが、これ、34時間ぐらいで集まってるんですよ。この選択肢って、もう映画製作者は全員持っておいたほうがいい。若手の映画関係者は「お金が集まらない」と初めから諦めてしまっていて、企画段階からすごい小っちゃい企画や、小っちゃい話しか書けなくなってしまっている。でもそれでいいんだっけ?と思うんです。めちゃくちゃおもしろい企画があって、「それ、おもしろいじゃん」っていう人が増えて、そこでお金が集まるんだったら、(事業投資型クラウドファンディング)を使ったほうがいいですよね。

──本書で印象的だったのが「現代のお客さんは、『作りたがっている』のだ」という部分です。西野さんがアイデアや役割を作り出し、お客さんを巻き込んでいく事例が書かれています。

お客さんをどう作り手に回すか、という話なんですよね。これまでは「みんなで盛り上げよう」みたいな感じで、お客さんを拡散装置として参加させるだけだった。でも今はAIでクリエイティブなことができるようになってしまったから、お客さんがそれを使って拡散すると権利問題が絡んできて、結構難しいことになる。それならばお客さんに出資者になってもらえばいい。これって、ブロードウェイだと共同プロデューサーという肩書がつくんですよ。そうすると、出資したお客さんが「ウチの作品」と思えるようになる。こういう参加の仕方、させ方はあるよなって思います。

──そうした新しい思考法は、どんな時に思いつくのでしょう?

僕の地元の兵庫県川西市の居酒屋で普通のおっさんと飲んでて、そこでヒントもらうこと、もうめちゃくちゃありますよ。『オセロー』で共同プロデューサーをやった時、どのくらい席が埋まったかでリターンが変わってくるんだという話をおっさんらにしていたんですけど、ある時「実は西野君、僕も出資したっていう体で席がどれぐらい埋まってるかをホームページ見ていたら、埋まった時めっちゃうれしかったんだよね」って言われて。要するにこれって、いわゆる「推し活」なんですよ。日本のアイドルなのか、もしくはデンゼル・ワシントンやジェイク・ギレンホールに対して推し活するのかという違いだけの話で。その推した人がうまくいってるのを見ると「やった!」という気持ちになるんですよね。

でも普通のおっさんがいきなり何千万とか何億とか出資するのは無理じゃないですか?それで「どうすればお茶の間とブロードウェイを接続できるか」ということ考えるわけです。そこにニーズがあることはもうわかってるから、あとは繋ぐだけ。本気で仕組みを作りにいけばいい。

例えばブロードウェイ作品にお金を出せる事業投資型クラウドファンディングを立ち上げて、1口5万円で参加できるようにして、作品がヒットしたら売り上げがちょっとずつ分配される仕組みを作る。そうすると、お茶の間とブロードウェイを繋げられる。でもこんな仕組みがこれまでなかったんです。しかもこのおっさんに色々聞いたらば「別に儲かりたいとかじゃない」と言うんですよ。5万円出してリターンが3万5000円でも全然構わなくて、居酒屋で「ワシ、ブロードウェイ作品に出資してんねん!」って言えたらいいっていうネタなんすよね(笑)。つまり、推し活でワンチャンプラスになることがあるかもしれない、っていう感じなんです。

でもこれをやれるのは、ブロードウェイと接続できている自分しかいないし、自分がやらなかったら誰もやらないだろうし、この先ブロードウェイとお茶の間を繋ごうとする人なんか出てこないはずなんです。

あとは事業投資型クラウドファンディングの旗振り役、アイコンになってないといけないから、誰かが急に思いついたとて、それでは機能しない。だから今、自分がやらないといけないなと思ってて。そこはなんとかいけそうなところまで来てるので、頑張ってます。

変数の塊である〝人〟と働くために

──本書には、20代は体力(量)、30代は技術(質)、40代は人脈、50代は健康といった世代ごとの働く上での武器や戦い方にすべきポイントの話があります。@DIME読者には『北極星 僕たちはどう働くか』をどう読んでもらいたいですか?

ひとつは第一章「お金」の中の〝投資〟の部分ですね。投資することも大事なんですけど、今求められているのは「投資される技術」だと思うんです。どうすれば投資されるのか、という立ち振る舞い方が全然体系化されていないので、それをまとめてあります。投資されるための作法ってやっぱりあるし、それはわかっておいたほうがいいと思います。

あとはいろんな事業やサービス、プロジェクトを作ってきて、やっぱり「人と仕事してるよな」って思ったんですよね。人ってもう〝変数の塊〟で、「お前が気に入った/気に入らない」なんか平気であるし、同じ条件でも「Aさんの条件は飲む/Bさんの条件は飲まない」みたいなことがまあまああるわけじゃないですか? そうした時に「世のエビデンスと呼ばれているもののほとんどは、あまり信用ならん」と思ったんです。人が介在している以上、エビデンスよりも、好かれる人になったほうがいいし、惚れられる人になったほうがいい。それを第二章の「心」で書いてます。

人の心ってすんごいブレブレなんで、そこを理解しておくのはめっちゃ重要だろうなと思いますね。人がどういう感情を持って働いているのか、というところを読んでもらいたいです。

──西野さんは2017年から社長として会社を経営されていますが、そこから得たことはありますか?

中小企業がいっつも負けている理由を考えた時に、「教育を信用しているな」と思ったんです。中小企業って、めっちゃうまくいってる大企業の教育カリキュラムを導入して、あれやこれや教育をやるわけですよ。でも、「勉強慣れしてる人」と「慣れてない人」に同じ内容で教育したら、伸びが全然違う。そもそも高学歴が集まってる大企業の教育を中小企業がやっても、うまくいかないんですよ。

だったら経験者をヘッドハンティングしたほうがいい。新卒で仕事もできないのに、権利だけ主張するみたいな“若くても老害”みたいな人はいるし、50~60代でも若い感覚の人はいる。だから年齢はもはやどうだって良くて、〝骨〟がしっかりしてるかどうかのほうが重要だし、バキバキ働く人を引っ張ってくるほうがいい。だってAIがこれだけ発達してくると、「ウチの会社、明日から農業やるぞ」と業態がガラッと変わる可能性、全然ありますよね?それでも「やりましょう」となるチームじゃないと、回せないですよ。

──これまでの経験から学んだり、あえて捨てたりしたことはありますか?

「説明すること」が程々になりましたね。理屈は通っているけど、説明が通じなかったという経験が山ほどあって。12~13年前、クラウドファンディングをした時に「それ詐欺ですよ」「宗教ですか?」みたいなことをめっちゃ言われたんですよ。

僕の後輩が結婚式の費用をクラウドファンディングで集めたんですけど、その時にあった批判が「結婚式は自分の金でやれ」で。でもね、クラウドファンディングのリターンは「結婚式に出席できる」なんですよ。普通、結婚式する時って受付で出席者からご祝儀もらってるわけですよね?その決済を受付でやるか、ネット決済でやるかってだけの話じゃないですか。こんな簡単な説明ですら理解してもらえなかった。ってことは、説明よりもよっぽど感情が上に来るものなんだなと思ったんです。

あとは「教育できないところを受け入れたこと」ですかね。例えばバスケットのコーチをやったとして、ドリブルは教えられるし、パスもシュートも教えられるけど、身長は伸ばせない……みたいな感じで、伸ばせないとこってあるじゃないですか。こうやってスポーツで説明するとみんな理解できるけど、仕事の現場でも教育で伸ばせないことってどうしてもあって。そこはとっとと諦めたほうがいいかな、って思いますね。

──それを経て、西野さんは自分の話がきちんと通じる人たちが集まってくる「オンラインサロン」を開設したんですか。

時代をどうやって前に進めるかって、結構シンプルで。日本人全員に説明をしても、99.9パーセントぐらいの人が文章は読めない、会話がそもそも成り立たない、これが大前提だと思ったんです。だから〝会話ができる人〟と話をして、成果物を作って、圧倒的な結果を出して、それで99.9パーセントぐらいの人たちに「ああやりゃいいんだ」って思わせるしか方法はない。それがわかったことがデカかったですね。その時に、活動をオンラインサロンに思いっきり寄せたんですよ。「もう世間と会話してもしょうがないな」と思って。

オンラインサロンのメンバーさんだったら会話はできるんで、そこで映画だのミュージカルだのを作り切ってしまえば、それをみんなが真似し始める。結果的に一番前に進めた解決方法だなと思います。とはいえ、非常に虚しい気持ちもありますけど……本当は誰とでも普通に会話ができたら一番幸せなんですが。

──西野さん、次はどんなことを考えていらっしゃいますか?

まずはブロードウェイとお茶の間繋ぐことが一番おもしろいかな、というのがひとつ。あとは『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』が終わったら、美術館を作ることですね。次は土地や観光がおもしろいなと思ってて。これだけAIが成長してきた今、AIで生成できないものって土地かなと思うんです。AIで富士山作るとか、無理じゃないですか(笑)。富士山だと「富士トラム」っていう5合目ぐらいまで行く交通システムができるという話がありますけど、それで事業投資型クラウドファンディングをやったらおもしろそうだな、なんて思いますね!

『北極星 僕たちはどう働くか』
著:西野亮廣
定価1,980円(本体1,800円+税)
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344045583/

取材・文/成田全(ナリタタモツ) 撮影/小倉雄一郎

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