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24時間働けます!アドビが仕掛けるAI時代の「24時間広報室」の衝撃

2026.04.13

1990年代の誕生から、30年以上の歴史を持つ「PDF」。ビジネスシーンでも、重要なファイルは最終的にPDF化して保存・保管されることが多い。このため、PDFは「ドキュメントを固めて閲覧しやすくするもの」という印象を持っている人が、多いのではないだろうか。

レイアウトを崩さずに閲覧ができるのは確かにPDFのメリットなのだが、それだけではない。それを証明するのが、昨年にリリースされた『Acrobat Studio』と『Acrobat AIアシスタント』だ。PDFの作成や編集、変換ができるのに加えて、新機能の「PDFスペース」では保存したファイルから、AIを通じて様々な情報を引き出せる。

昨年の『Acrobat Studio』日本語版のリリース時に、アドビ広報部がその一例として示したのが、メディアからの問い合わせに常時対応できるようにした「24時間広報室」だ。

一体どんなものなのか、広報部の兼森美紀さんに話を聞いた。

「24時間広報室」を立ち上げたアドビ広報部の兼森美紀さん

あらゆるドキュメントを集約して、対話形式で引き出せる「PDF スペース」を活用

『Acrobat Studio』は、『Acrobat Pro』(月額2530円)、『Acrobat AIアシスタント』(月額680円)、『Adobe Express プレミアム』(月額1180円)が利用できるオールインワンのプラン。Acrobat AI アシスタントで新たに利用できる、注目の機能が「PDF スペース」だ。

「1つのPDF スペースにつき100ファイル、1ファイルあたり600ページまで読み込むことができ、全体のボリュームで言えば約6万ページ分の情報を格納できます」と兼森さん。対応するフォーマットも幅広く、PDFはもちろんのこと、「Webのページであったり、Word、Excel、Power Pointなど、様々なファイルフォーマットに対応しています」。

PDF スペースの作成画面、PDFをはじめ様々なフォーマットのファイルをアップロードできる。

ビジネスシーンで、生成AIを活用する際に怖いのが、「ハルシネーション」と呼ばれる「さもありそうな間違った情報」を引き出してしまうこと。間違った情報も含まれるインターネットからの学習が、回答の源になっているため起こることだが、「PDF スペース」でのAIアシスタントの回答は、あくまでも保管されている資料に基づいて行われる。「回答の根拠を見たい時は、ソースを表示すると元の資料のどこに書かれているかが、青枠で表示されます」と兼森さん。情報ソースの資料が限定されること、ファクトチェックが簡単にできることは、大きな強みだ。

さらに言語の壁を越えた情報収集も可能。「英語で書かれた決算資料などを全部、最初から最後まで読み込むのは大変ですが、PDF スペースに持ってくれば日本語で要約してくれます」。例えるなら「バイリンガルなサポーターがいるような感じ」だという。

年末年始の繁忙期も「24時間広報室」で乗り切る!

「24時間広報室」は、簡単にいえばこの「PDF スペース」に、2025年に発表した35件の主要なプレスリリースをまとめて、そのリンクをメディアに共有したものだ。「PDF スペース」をどう業務に活用できるのか、実証実験として昨年末に実施された。導入の背景には、広報ならではの課題があったと兼森さん。「年末になると記者の方から問い合わせが来ても、繁忙期ということもあってなかなかタイムリーに対応できないことがありました。そこで、PDF スペースとAI アシスタントが使えるのではないかと考えたのがきっかけです」

【アドビ24時間広報室】

リンクを共有された記者は、好きなタイミングで「PDFスペース」にアクセスし、AIアシスタントに質問できる。「たとえば『Acrobatの主な進化は?』といった質問をすれば、格納されているリリース情報を元にAIアシスタントが回答してくれます」といった具合。広報部は問い合わせを減らすことができるし、記者もウェブサイトからプレスリリースを探してダウンロードし、見比べる手間が省ける。「AIはプレスリリースに書かれている内容から回答するため、間違ったことが伝わらない」という安心感もある。

「24時間広報室」の画面。回答のソースがどこか、資料に青枠で示されるのでわかりやすい。

「私たち自身が答えるのにも使えますし、『こちらを見てください』と案内することもできます。回答には出典元が表示されるので、情報のありかを確認しながら知りたい情報を得られるのが大きなメリット」と、兼森さん。外部向けとしてだけでなく、広報部でも「たとえば『今年のニュースハイライトを5つにまとめて年末の挨拶文を書いて』と指示すると、リリース情報を元に文章を作成してくれるので、文章を作成する業務の効率化に役立てられる」という。

今回はリンクを知っていれば誰でも利用できるようになっているが、「リンクを知っているすべての人か、招待されたユーザーだけか」といったアクセスコントロールも可能。「外部のユーザーはPDF スペース上でAIに質問や要約をしてもらうことはできても、ファイル自体を改変することはできない」設定になっているため、安心して情報を公開できるという。

「PDF スペース」は、「24時間広報室」以外にも様々な使い方ができると兼森さん。「長い文章を最後まで読み切るのが大変な時、まず読み込ませて要約を表示させ、全体の流れを大まかに理解した上で、しっかり読みたい部分にジャンプできます。また、昨年の契約書と今年の契約書でどういう差分があったか確認したいなど、『この文書の差分を教えて』と聞くと、具体的に違う部分をリストアップしてくれるので、複数の文書の差分チェックが簡単にできます」

広報業務でも「新しい製品の発表前にまだ公開できない機密情報をPDF スペースに落とし、広報チーム内でナレッジハブとして共有し、ディスカッションやコラボレーションに使えます。メディアからどういう質問が来そうか、過去の取材記事などを読み込ませてAI アシスタントと壁打ちをし、想定質問を用意しておくことができます」と兼森さん。ほかにも「タレント事務所などでは、所属タレントの過去のインタビューを全部読み込ませて、ブランディングを保つための確認に使うといったことも考えられます。官僚の方々が過去の膨大な資料から答弁を作るのにも役立つと思いますし、ぜひ使ってほしいです」と話す。

今後は「AI アシスタントを通じて引き出した情報を、プレゼンテーション資料に仕上げたり、ポッドキャストのような音声形式でアウトプットを出すところまで、Acrobatがあればドキュメントをベースに一気通貫でできるようになるのが、目指すところ」とのこと。今回は実証実験としての取り組みだったが、広報部でも「プレスリリースだけでなく、ニュースレターなど、これまでバラバラに保管されていたアーカイブ情報をまとめて管理する」といった構想があるという。

前述の通り、重要なファイルは最終的にPDF化して保存・保管されていることが多い。「24時間広報室」の取り組みは、そんな多くの会社のハードディスクに眠っているPDF資産を掘り起こし、活かす好例とも言える。兼森さんは「今後はメールでPDFを添付するのではなく、PDF スペースのリンクを共有する形に変わっていくと思います」と話していた。

取材・文/太田百合子 撮影/ANZ

ネット黎明期よりWebディレクションやネット情報誌の立ち上げに携わる。以降PC、スマートフォンからウェアラブル、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できるAI、サービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆。デジタルデバイドの解消に役立つ、わかりやすい記事を心がけている。

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