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あらゆる天候を走り抜け!開発に7年、ダンロップタイヤ「シンクロウェザー」前人未到の全天候型タイヤ作り

2026.04.10

 今回紹介するのはダンロップタイヤ「シンクロウェザー」、水や温度で性質が変わるゴムから生まれた全天候型タイヤだ。全天候型のタイヤは、長く実現不可能とされてきた。

 氷上性能を高めるなら、タイヤの接地面積を増やしたい。しかし仮に溝を減らしたら、ウエットな路面を走る時に排水しにくくなり、教習所で習う〝ハイドロプレーニング現象〟でスリップしやすくなってしまう。

だがそれでも、開発者たちは可能性を見いだそうとした。材料開発本部材料第一部主査の大野秀一朗が話す。

「我々の会社には〝信念〟として『ゴム素材の可能性を誰よりも信じること。』という一文が明文化されているんです」

受け継がれていたイノベーションの魂

 それはダンロップの歴史を表す言葉でもあった。同社は2006年には世界初の特殊吸音スポンジ「サイレントコア」を実装したタイヤを、13年には100%石油外天然資源を利用したタイヤ『エナセーブ 100』を発売、いずれも世界初の快挙で、構想から完成まで10年以上を費やした労作だ。

 日本発のイノベーションが減ったと言われる中、同社は今も「ニッポンのモノづくり」の魂を宿しているのだろう。その後、技術陣はゴムの分子構造をナノレベル(10億分の1m)で解析する技術を開発、ゴムの分子結合(分子同士がつながる仕組み)の解析を可能にした。これにより、ゴムに『何らかの材料』を混ぜれば、分子同士の結びつきを変え、今までにない性質を持たせることができると予測された。

「低温でも柔らかいゴムができれば、タイヤの表面が氷の微細な凹凸をしっかりグリップするスリップしにくいタイヤができます。水にぬれると柔らかくなるなら、雨の日もスリップしにくいタイヤができますよね」

 17年、同社は基礎研究の段階で、この「環境に応じてゴムの機能を変化させる技術」を「アクティブトレッド」と名付け、その確立を目指し宣言した。大野が振り返る。

「これはプレッシャーでしたね(笑)。しかし発想の転換を成し遂げるきっかけになりました」

 では、ゴムに何を混ぜるのか? 大野は意識したことがあった。

「今までにないことを実現するためには、発想の幅を広げることが大切なんです。実際に私が試したのは、常識を基にしていたら絶対に見出せない材料でした」

ダンロップ

大野秀一朗(おおの・しゅういちろう/右)
常識を覆す材料開発を牽引。水と温度で自ら性質を変えるゴムの配合を追求し、全天候型タイヤの素材を開発した。

中野好祐(なかの・こうすけ/中央)
タイヤの構造設計を担当。豊富な知見を活かし相反する性能を極限まで高めるべくミリ単位の調整を繰り返した。

松村尚典(まつむら・なおのり/左)
革新的な製品の価値を正しく市場に伝えるため、認定店制度の推進など、前例のない独自の販売戦略を担当。

本来は邪魔なはずの水を味方につける逆転の発想です

大野秀一朗さん

路面環境に合わせて変化するゴム、誕生!

ダンロップタイヤ『シンクロウェザー』
ダンロップタイヤ『シンクロウェザー』

水に触れるとゴム分子の特殊な結合がほどけて柔らかくなり、濡れた路面に密着。乾くと再結合して元の剛性が復活する。

温度と水に反応!?常識の外に答えがあった

 様々な素材を探索する中、同社の材料開発チーム北海道大学・野々山貴行准教授の研究に着目した。准教授はタイヤの専門家でなく、ゲル(ゼリーのような物質)の研究者で、「温度が変わると硬さが変わるゲル」や「水を含むと性質が変わるゲル」の研究を行っていた。大野はこれをヒントに「ある材料」を見出し、ゴムの試作を始めたのだ。

 しかし、この作業が果てしなかった。そもそも、ゼリーのような物質に混ぜるべきものを、何tもの重量を支えつつ過酷な環境を何万㎞も走るタイヤのゴムにしなければならない。同社は野々山准教授のコンセプトを活かしつつ、類似の機能を発揮する材料の組み合わせを一から探ることにした。

「ゴムは数十種の素材でできています。これにある素材を混ぜるわけですが、数十種の素材のどれを増やし、どれを減らすか、どのタイミングで混ぜるか、何度で焼くかなどによって、結果は異なるんです。おそらく1000種類近くはつくったと思います」

 最初は数百ccのビーカーレベルから始め、「これが近いか?」と絞り込んだら、容量を数リットル、数十リットル規模へと上げていく。そして最終的には工場で生産するため数百リットル規模で作っていく。そんな中、柔らかさを求め、仲間を困らせたこともあった。

「素材を混ぜる工程で、柔らかすぎてミキサーにこびりつき、取り出せなくなってしまうものができてしまったんです」

 現場にすれば「なんてものを混ぜるんだ」と言いたくもなっただろうが、文句を言う仲間はいなかった。「誰も見たことがない未来をつくるため」。それを皆がわかっていたのだ。

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